悪戯好きの神様

827 :本当にあった怖い名無し:2010/12/29(水) 22:19:20 ID:lSN58yUS0
地味な話で、どこに書いていいのか迷ったので、ここに書かせて下さい。
長文です。

かなり前のことですが、私は当時高校生で、母と犬とで車で近場に買い物に出掛けていました。
帰り道、犬が鳴き始めたので、少し散歩させようと車を止めました。
ふと横を見ると、いかにも村のお社といった雰囲気の神社がありました。
周りはごく普通の住宅街で、母はその辺りを犬を連れて歩いてくると言うので、
私は神社を見てくることにしました。



神社はこざっぱりとしていて、雰囲気も静かであたたかく、きれいに掃除もされていました
社務所は無く、参拝客は私以外はいませんでした。
二十段もないような石段を登ると、石段の一番上に小さな紙が落ちていました。
なんだろうと思って拾ってみると、そこには印刷で短い祝詞が書かれていました。
シンプルな短い祝詞で、覚えやすくて気に入ってしまい、私はその紙がとてもほしくなりました。
落ちていたものだしいいかな…とも思ったのですが、持って帰るのは盗みのような気がして、
紙はしばらく眺めて祝詞を覚えた後に、賽銭箱の近くに置いておきました。


828 :本当にあった怖い名無し:2010/12/29(水) 22:20:09 ID:lSN58yUS0
お参りを済ませ、私は神社の建物が見たくなり、社殿の横に回りました。
拝殿と本殿の間は渡り廊下でつながれおり、その渡り廊下の横に行くと、本殿がよく見えました。
人もおらずゆっくりと見ることが出来て、わあ、こんな風になってるのか、と私は喜んで眺めていました。
そしてふと渡り廊下の向こう側を見た時、なぜか、その渡り廊下を横切って
向こう側に行かねばならないような気がしたのです。
自分でも意味が解らなかったのですが、ともかくこの渡り廊下の手すりをよじ登って越えて、
渡り廊下を横切らねばならない、なんとしてもそうしなければならない、という思いに駆られたのです。

しかし渡り廊下は神様の通り道のはず、横切るなんてまずいんじゃないのか。
そんなことを考えながらも、私はいつの間にか手すりに手を掛けていました。
妙に頭がぼーっとし、周りの音が聞こえなくなりました。
ほら、ここには誰もいない、周りは杜だから外からも見えない、
この渡りの手すりをよじ登れば真正面から本殿が見られる、
なかなか見られるものじゃない、神様と同じ視点だぞ…と、
何故か心の中で強く思いながら、私は手すりに足を掛けてよじ登り、渡り廊下に立っていました。



830 :本当にあった怖い名無し:2010/12/29(水) 22:21:58 ID:lSN58yUS0
と、その時。母が神社の外から呼ぶ声がしたのです。
私ははっと我に帰りました。
見れば、神社の渡り廊下に突っ立っている自分。
外からは母が、姿の見えない私を心配して何度も呼んでいます。
私は急に怖くなりました。
母にちょっと待ってと返事をし、ちらりと本殿の方を見てから、
私は入ったのとは反対側の手すりを乗り越え、渡り廊下を横切りました。
こうなったらいっそちゃんと横切ってやる、と負けん気が起きたものですから。

神社の裏側から出くると、母が入口で心配そうに待っていました。
犬は母とは対照的にのんびりと座って待っていました。
気になって振り返ると、賽銭箱の側にきちんと置いたはずの祝詞の書かれた紙は、
何故か最初の石段の所に戻っていました。


831 :本当にあった怖い名無し:2010/12/29(水) 22:23:05 ID:lSN58yUS0
なにがなんだかよくわからないまま、一ヶ月ほど後のことです。
再びその神社の前を通ると、ちょうどお祭りをやっていました。
この間のこともあったし少し気になって、私は神社に寄りました。
たき火をしていたので、参拝の後にあたらせてもらっていたら、
横にいたお爺さん達が話しかけて来たので、おしゃべりしていました。

お爺さんは地元に長く住んでいる人だというので、叱られるかもしれないんですけど、と
前置きして謝ってから、お爺さんにこの間の渡り廊下のことを話したのです。

するとお爺さんは、久しぶりにそういう話を聞いた、と言い出しました。
なんでもそこの神様は悪戯好きで、昔は時々人引っ張り込んではご神木に登らせたり、
神楽の舞台に上がらせたりしたりしていたのだそうです。

あんた真面目そうだし、神様にからかわれたんだなあ、と、お爺さんは笑いました。
帰る前に、前に覚えた祝詞を唱え、お爺さん達からお餅を貰って帰りました。

長文、失礼しました。
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