小人B

状況を話す。
お客様からの相談であること。
ベッドの下にいる小人のこと。
最近になって二匹出てきたこと。
他の人には小人でないものに見えたこと。
僕には見えないこと。

「え? マサシくんはその子の部屋に行ったの?」

「うん。昨日」

「しちゃった?」

「いやいやいやいや。何もしてないよ、ホントに」

「あ・や・し・いなあ。まあ彼女いないから、おイタしてもいいんじゃないの」

「おお、そういやいなかったな」

「アンタ付き合い長いのに何でそーゆー大事なこと知らないのよ」

「男はそういうことペラペラ喋らないんだよ。なあ?」

「そうですね。男同士だと恋愛の話はしませんね」

「うっわ、男って超つまんねー」

「もっと楽しいことあんだよ、世の中には」

「先輩は何人くらいなんですか?」

「俺? 少ないぞ。五人」

「コイツ、顔だけは良いからホント心配なんだよね」

「うるせーなー。俺にベタ惚れなくせに」

「うっさいわね! ソーロー!」

「お前そういうリアルなこと後輩の前で言うなよ。で、お前は?」

「僕は高校生のときに一人だけですね」

「「えええ゛っ!?」」

先輩とYちゃんは酷く驚いた表情で叫んだ。
心外な。
僕だって付き合ったことくらいある。

「お前? マジかよ? あんな水商売やってんのに一人とか!」

「やぁん。マサシくん、超カワイイィ。おねえちゃんが相手してあげよっか?」

先輩が驚いた顔を見るのは初めてかもしれない。
だけど、そもそも先輩があのアルバイトに僕を投げ込んだんじゃないか。
どういうイメージを僕に持っているんだ、一体。
一人の女を想い続ける考えは古いのかよ。

その後、二人は僕を散々馬鹿にし、それが飽きたころにやっと本題に入った。

「ああ面白かったぁ。なんだっけ小人? もう何聞いても驚かないよ」

「二匹出てるって言ってたな?」

「そうです。「他の人」が言うには、六匹らしいんですけどね」

「うーん。まあ一つだけ分かったことがあるね」

Yちゃんが含み笑いを堪え、続ける。

「その「他の人」はやっちゃたね。間違いないよっ!」

Yちゃんはうふふ、と笑う。
先輩と僕もつられて笑う。
だが内心はYちゃんの感の良さを恐れた。
先輩もそう思っているはずだ。

先輩は五人か。
こう言っては何だが意外だ。
百人から先は数えてない、という答えを予想していたのに。
まあ案外本当にモテる人はそれくらいなのかもな。
五人……待てよ。
リカさんは先輩と寝た後、ベッドから出てきた。
先輩が彼女である人間と肉体関係を結んだのは何人だ?
仮に全員として、五人。
それにリカさんを足す。
そうするとタタリガミの六匹という数にも合う。
そしてリカさん。
デリヘル嬢だが肉体関係といっても最後まではいかないのが普通の店だ。
彼氏と先輩を合わせて二人?
いや、流石にそれはないだろう。
ああいう店のルールは結構守られないのがむしろ普通だ。
大体、僕やYちゃんの説明がつかない。
そしてこの現象の意味が分からない。
肉体関係が分かる現象って何だよ。



次の週の夜。
僕はリカさんの家にいた。
意外にも先輩はこの現象の解明に真剣に取り組んでいるようだ。
いつもの幽霊なんていないという風に構えていない。
もう一度調べて来い、そう言ってビデオカメラを僕に預けた。

「二人が知り合いだったなんて知らなかったよー」

ベッドの横にカメラをセットしている僕にリカさんは言う。
若干恥ずかしそうだが、それは僕も同じだ。
ベッドの下から周りのフローリングを見渡せるように、引き気味にカメラをセットする。
何かが出たとしても、これで大体は写るだろう。

何度かの心霊体験と呼ぶべきことを経験してきた僕は学んだことがある。
オカルトは法則性がない。
いつも彼らのタイミングで出て、消えて、困らせる。
だからこちらから解決しようとすると長丁場になる。
よって、ソファでくつろぐのはしょうがない。
テレビを見ながら暇つぶしするのもしょうがない。
その隣に家主がいるのもしょうがない。
構って欲しそうな家主がわき腹をつつくのもしょうがない。
シャワーを浴びることは一日の汚れを落とすためしょうがない。

「でた!!」

ナンナノ?
ワザト?
小人サン?

例によって僕にはさっぱり見えない。
二匹だ! そっちに一匹行った、ほら何してんの!
霊感があるとかないとか、そういうことが関係あるのだろうか。
解決も何もリカさんが一人で騒いでいるようにしか見えない。
そして当の本人も大して恐怖を感じていないようだ。
ネコが嫌いな人が部屋に迷い込んだネコを追い出そうとしている。
その程度の迷惑さのようだ。

僕が何もしないで呆れて見ていると、突然玄関のドアが開いた。

「いるかー?」

その男の声に一番反応したのはリカさんだ。

「ダメ!! 今日は帰って!!」

しまった。
彼氏いるとか言ってたな。
どうしよどうしよ。
僕はバトル向きのキャラじゃないぞ。

リカさんの呼びかけを無視して、リビングに声の主が入ってくる。

「リョウ! おい! どういうことだ!? リカ、お前浮気してやがったのか?!」

その声の主はナンバー5さんだった。
胸倉を掴まれた時、ああまたしばらくバイト休みかあ、と思った。



「ま、見てみようじゃないの」

僕と先輩とYちゃんが画面を睨む。

また邪魔されて会話し辛いのはコリゴリだ、と先輩。
僕のマンションで二人だけで視聴しようということになった。

だが、間の悪いことにテレビに接続している最中にYちゃんからの電話が。
こういうときの女の感は神がかっていると思う。
Yちゃんは先輩をも凌駕する喋くりの達人だ。
断ることなど出来ない。
結局、彼女も僕の部屋で一緒に見ることになった。

「お、何かいい雰囲気ですなあマサシくん」

画面には映っていないが、声は聞こえる。

「この辺は何にも無いから、飛ばしますよ」

「シャワー浴びるとか言ってるぞ。お前、ビデオの存在忘れてんじゃないのか?」

「これから何すんのー? もしかしてそういうビデオ?」

二人とも口ではそう言うが興味津々、期待満面の顔だ。
そんな行為をしているなら、何がしかの理由をつけてデータを抹消している。

「お、リカ、タオル一枚じゃん。これはそそる」

そう言う先輩が蹴られる。
カメラは寝室兼リビングを映しているためリカさんの体がちらほらと映る。
リカさんはあまりカメラを意識していないようだ。
忘れているのだろうか。
下着に着替えているシーンが映る。
Yちゃんに見ることをたしなめられる。
だが、このシーンの後に叫ぶから、と言い訳をした。
先輩も、それならしょうがない、と許してくれた。
日本は民主主義国家、多数決ならしょうがない。
Yちゃんは不服そうだ。

小人Cへ続く
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