黒くなる

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俺、田舎の一軒家に住んでいる普通の霊なんだけどさ。
まぁ自己紹介はどうでもいいや。
先日、また部屋に人が来たんだよ。
つい最近まではちょっとした理由で、人が来ると何か期待していたんだが、
もう忘れることにしたんだ。何を待っているんだ、俺。もっと大事な目的があるだろ?ってさ。よく覚えてないけど。
で、先日来た3人組の話だ。

部屋に近づいてくるとき、分かったんだよ。こいつら、ヤバイ、ってな。
霊能力者だかなんだか知らないが、間違いなく俺のこと消しに来たわけよ。
俺にとっては天敵ってやつだな。
まぁ確かに、何人か殺しているから安らかに成仏、なんて無理とは思っているさ。
あるとすれば地獄ってとこ逝くんだろうな。
でも、まだ、消える訳にはいかない。

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その3人組、家の周りとか部屋の前で色々やっているんだよね。
なんかいつになく本格的な、儀式というか、おまじないみたいなこと。
今までの奴らだと、これがバラバラなんだよね。内容が。
なんだか和洋折衷というか、色々ごっちゃにしているから、逆に笑えるくらい。でもこいつらは違った。
その道のプロ?なんてあるのか知らないが、筋が通っている。これはまいったね。

3人組、メンツは何といえばいいのかな。名前わからんから見た目で言うと、
ヒゲとメガネとハゲ。まぁ、みんなハゲてたんだけどね。1人特徴ないから、そのままハゲで。ヒゲが指示出していてリーダーっぽかったな。
で、部屋に入ってくる前に色々口上を述べていたよ。何言っているか、意味は分からなかったが。
なんであんな早口なんだろうね。えぃっ、やぁっ、とかは分かったけどさ。
まぁいきなり無言で入ってくるよりマシかな。礼儀って大切だよな。

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で、3人組が入ってきたので、ご対面した訳だ。
こっちはここに普通に住んでいるわけで、隠れる気もなかったからさ。
そしたら失礼なこと言いやがったよ。俺のこと、面と向かって悪霊、だとさ。
これはショックだったね。ズバリ言われたのは初めてだったよ。ちょっと凹んだ。
なんたら神王の名において、汝悪しきなんたらをなんたらかんたら〜って、
まぁつまり、我々がお前をこの世から消し去ってやる〜、って意味なのかな。

そして俺のこと、囲んだわけよ。3方向に立ってさ。
で、なんか数珠みたいなのかざして、ブツブツ唱え始めたんだ。
3人、シンクロしている感じ。トランス状態?一心不乱な訳よ。
俺、まいったね。ほんとやばかった。もうダメかと思ったよ。

笑いこらえるの、きつかった。
だって、こいつら本当に俺のこと消せる気で来ているんだぜ?

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そもそも、生きている普通の人間が、既に死んでいる者に対して何か出来るとでも思っているのかね。
単純に考えてみろよ。死ぬっていうのがどういうことなのか、
死んだらどうなるのか、何も知らないだろ?知らない相手に何が出来るっていうのやら。
今までこいつらが相手してきたのは、どうせ本当の意味で死を自覚していない霊だけなのだろうな。
普通、自覚したら消えるからさ。俺みたいに受け入れて、存在に固執していなければ…。

どうせこいつらには理解できないのだろう。
生きている者が干渉できるのは、同じ生きている者だけ。死んだ者に対して干渉できるのは、死んだ者だけだってさ。
それが分かっていて、生きているくせに死を知っていて、その力も持っているような人間がいたら、そいつは脅威だ。
そんな人間に、俺は会ったことはない。今はまだ会いたくない。
とても…怖いから。なぜか分からないけど、怖い。

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3人をしばらく眺めていたが、憐れにすら思えてきた。終わりにしてやろう。
生身を持たない俺に奴らは触れないが、こっちは向こうの中身、魂ってやつに触れるわけよ。
一方的で悪い気もするけどな。だって仕方ないだろ?
こちらの事、知らないのだからさ。知らないものに触れるわけがない。

魂をちょっと削ってやるだけで、それは身体、器って言うかな。それに合わなくなる。
抜けやすくなった魂の目は、人外のものを見るようになる。
普通の人からしたら、気が狂って幻覚を見ているって思われるだろうな。
バランスを崩した身体はやがて生気を失い衰弱し…そして死ぬ。
呪いのひとつのパターンなのだろうな。

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こちらに敵意を持って、俺を消そうとしてきた奴ら。許す気はない。
段々と自分の色が黒くなっていく感じがする。
これは…なにやら気分が良い。
手を伸ばして、リーダーに触れる。動きが止まる。
全身から汗が噴き出ている。怖がっているのか?面白いな。
他の2人が気付いて動揺している。
リーダーを少し削って戻す。泡を吹き、倒れるリーダー。
2人は信じられないような目をしている。とてもいい目だ。笑いがこみ上げる。

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すぐにメガネに触れる。何て色だ。汚いなこいつ。
俺は更に黒くなる。
ここでバラバラにしてやりたくなったが、ここで死なれると処理が面倒だ。
ハゲが逃げようとしている。捕まえておく。いい案が浮かんだ。
笑いが抑えきれない。俺は更に黒くなる。
メガネとハゲを削り、交互に入れ替える。気を失う2人。
これで間違いなく気が狂う。こいつらに理解できる訳がない。
3人を外に放り出す。そのうち目を覚まして、逃げていくだろう。
そしてそのまま…死ね。

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一段と黒くなった。こんなときは少し気分がいい…気がする。よく分からない。
黒くなっていくと、自分自身が見える。自分のしていることを見つめている。
ん?じゃあ、俺を見ている俺は、誰なのだろう?
…まぁいいか。難しいことは考えたくない。

先日、ここに来た3人を呪い殺した。よく覚えている…。
でも、段々分からないことが増えている気がする。頭がまわらない。
…でも気分は良い。最近はずっと気分が良い。
悪くなることなんて、何もない。…無かったはず。
ずっと…良い気分だ…。
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