廃校A

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がらんとした部屋。何も置いてないので、部屋の壁が防音壁になっていなければ
ここが何の部屋か分からないだろうと思う。
しかしここには別の特長があった。

床。床を照らしてみて気付いた。足跡がたくさんある。
大きさからして子供のものだろう。
どうやらここが、子供達の遊び場になっているようだ。
確かに他の教室より少し広いし、何も置いてないので遊び場にはいいかも知れない。
しかしこんなところで何をして遊ぶのだろう、とも思ったが、子供には子供の遊びがあるのだろう。

部屋を出て西の階段に向かう。
いくつかの教室を通り過ぎ、西の階段まで来る。そして階段を下りて再び2階へ。
先ほどと同じように、東に向かう。一度通った場所なので、何となく気が楽だ。
しかしそれは逆だったと思い知る。一度通ったからこその恐怖があった。

中央階段を過ぎ、2-3の教室前に差し掛かって気付いた。

教室の扉が、閉まっていた。

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みんな言葉を失う。恐らく同じことを考えているのだろう。
さっきは開いていた?本当に開いていた?さっきも実は閉まっていたんじゃないのか?
でもほんの10分くらい前の事。忘れる訳もない。
しかも以前通り過ぎたとき、俺は開いた扉から風が吹いてきたのを感じている。

鮎川さんが沈黙を破る。
鮎川「ねぇ…ここ通るの、止めない?」
神尾「そう、そうよね。中央の階段下りて、出よっか」
誰も閉まっている扉のことには触れない。触れずに回避しようとしている。
当然、俺と北上も同意する。
北上「よし、そうだな。そこの階段下りて、外に出よう」

2-3の方に背中を向けるのも怖い気がしたが、踵を返し、中央階段に向かおうとした。その時だった。

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何か聞こえた。すぐに子供の声だと分かった。それも複数人の笑っている声。
上から聞こえる。位置的には…音楽室からか?
4人で顔を見合わせる。いけない。何か破綻しそうな空気だ。
声が移動している。いくつかの足音がする。3階を移動して…中央階段に向かっている?

神尾「…何?何よ?何なの?誰か居るの?」
北上「おっ落ち着いて!早く、早く出よう、下りよう!」
俺「でっでも、あっちから来ているんじゃないのか?」
笑い声は中央階段の方に向かっていった。これで俺たちもそちらに向かったら…
冗談じゃない。あの声の集団とは、絶対に会ってはいけない気がする。
鮎川「じゃあ、やっぱり、そこ通って行くしかないの?」
2-3の前を通る。迷っている暇もないか?階段の方から聞こえる声は鮮明になってきている。

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再び2-3の方へ振り向き、全員、息を呑む。

…扉が開いている。

頭が混乱してきた。しかし行くしかない。声が、階段を下りているのを感じる。
北上「走ろう!雨月、鮎川さんを!」
北上が神尾さんの手を取って走り出す。俺も鮎川さんの手を取る。
俺「鮎川さん、足元、気を付けて!」
4人で駆け出す。

教室の前方の扉を通り過ぎたとき、俺は中から、射るような視線を感じた。
物凄く熱を帯びた、熱い視線。恐らく全員が感じたと思う。
熱い視線だが、冷水を浴びたような感覚。体温がサーっと一気に下がる。
出来るだけ教室の方は見ないようにするが、教室には廊下側に窓が並んでおり、
前を向いて走っていると、どうしても視界の隅にこれが映る。

そこで俺は見てしまった。その窓に浮かぶ、無数の顔を。
感情を感じない、無表情な顔。
廊下の一番端、教室側を走っていた俺にははっきり見えてしまった。
こちらが通り過ぎると、それを追うように視線も追ってくる。

そして後方の扉の前へ差し掛かる。通りたくないが仕方ない。
扉は開いている。何か、何かが出てくるに決まっている。
俺は泣きたい気分になったがどうしようもない。駆け抜けるしかない。
そしてそれはきた。

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手だ。いくつもの手が教室内から俺に伸びてきた。
扉の前を駆け抜ける瞬間、俺は腕や脚を掴まれた。
俺「〜〜〜!!」
俺は声にならない声を出す。引きずり込まれる?ダメだ!と思った瞬間、
掴んでいた手が弾かれたように離れた。

そして…俺たちはそのまま走って階段へ。
慌てて階段を駆け下り、1階も走りぬけ、出口から外へ出る。
1階の中央階段辺りも怖かったが、笑い声は既に消えていた。

外へ出た俺たちは、そのまま車の元へと走った。
そこで俺は一度振り向いた。どうしても気になったからだ。
あの教室の辺りを見てみる。窓にはたくさんの顔が見えた。こちらを睨んでいる。
…と、それはすぐに消えた。もう一度目を凝らして見ても、何も見えなかった。

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車に乗り、エンジンを掛け、帰路につく。
この頃にはだいぶ落ち着いていた。
車内では当然、今体験したことの話。
扉が開いていたとか閉まっていたとか、笑い声が聞こえたとか…。
4人が体験したことなので、これは間違いなく起こったこと。
しかし、教室内の顔、そして手が伸びてきたことに関しては、他の3人は知らないと言う。
どうやら俺だけが見たものらしい。

北上に「実は霊感あったんじゃないか?」
と言われたが、どうも実感がない。きっと気のせいだな、と言っておいた。
混乱していたし、幻覚でも見たのだろう、と。
他の事象についても、怪しいものだ。
心霊現象だったのか?と言われると、断言できない。
そもそも最初に鮎川さんが見た通り、校舎内に誰かがいた可能性があるからだ。
幽霊の正体なんて、大抵そういうものだろう…と思いたい。

そして北上の車で女の子2人を先に送り、俺も家まで送ってもらった。

家に着いたのは1時過ぎだった。

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家に入り、洗面所で顔を洗っていると、姉貴がやってきた。
姉「おかえり、光一」
俺「あぁ、ただいま。まだ起きていたんだ」
姉「ちょっと心配でね。平気だった?」
心配してくれていた。自他共に認めるシスコンな俺には嬉しい。

俺「うーん、まぁ平気平気。なかなか貴重な体験だったよ。あぁ、これ返す」
俺は行きがけに姉から受け取ったお守りをポケットから取り出した。
俺「…あれ?」
そのお守りを見て驚く。お守りの袋には、何かの石と紙切れが入っていると言っていたが、
袋の外から触ってみて、明らかに中の石が砕けていた。

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姉「よかった…」
俺「…え?あぁ、ごめん、壊しちゃったかな」
姉「いいのよ、そういうものだから」
姉貴はお守りを受け取ると、中を見て何か確かめている。

母「あら、こんな時間にまだ起きているの?」
お袋が起きてきた。
俺「今帰ってきたとこ。風呂入って寝るよ。なんか疲れたし」
母「そう。舞も早く寝なさいね。また具合でも悪くなったら…」
姉「大丈夫よ、お母さん…」

心配なのも無理はない。
過去に大病を患っていた姉。しかし、奇跡的に一命を取りとめた姉…。

姉「もう寝るね。おやすみなさい」
彼女はそう言って少し微笑むと、部屋へと戻っていった。
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