出会い@

1/12
時刻は11:00、目覚ましの音で目が覚める。
今日の講義は3限と4限だ。今から準備して、大学行って、お昼食べて…うん、バッチリだ。
古乃羽でも捕まえてお昼を一緒に食べようと思い、携帯を取り出すが、止めておく。
そうだ、今はきっと「大事な時期」ね。
古乃羽はなんと、雨月君と付き合い出した。
デートをした、なんて話は聞かないけど、電話とメールでよく連絡を取っているらしい。
古乃羽を取られたようでなんだか寂しい気もするが、仕方ない。
ここは一歩引いて、付き合い始めのこの時期を大切に過ごしてもらおう、という私。
なんて健気なんだろう。今度古乃羽に言って、何か奢らせよう。
雨月君、これで彼女を振ろうものなら許さないんだから…。

結局家でお昼を済ませて、大学へ向かうことにした。

2/12
キャンパス内を歩いていると、何人かが挨拶をしてくる。
まだ2年だが、我ながら知り合いが多い。
初対面でも普通に話しかけてしまうので、たまに引かれることもあるが、
大抵の人は打ち解けて、親しくしてくれる。
挨拶しつつ歩いていると、普段ここでは見慣れない人がそこにいた。
子供だ。
小さな女の子が道の脇に立っている。なんでこんなところに…?

周りを歩いている人も、なんだろう?と首を傾げるが、そのまま通り過ぎて行ってしまう。
まったく…。明らかに場違いで、困っているかも知れないのに。
周りの目は無視して、話し掛けてみることにした。

私「ねぇ、どうしたの?誰か探しているの?」
女の子は自分の胸くらいの背の高さ。
中腰になって話し掛けると、女の子が顔を上げ、目が合った。

3/12
その瞬間、ハッとした。この子…すごく綺麗だ。
ただ可愛いだけじゃなく、美人だ。軽くだがお化粧もしているみたいで、魅力的な顔をしている。

女の子「…」
女の子は何も答えず、少し首を傾げ、大きな目でじっとこちらを見つめてくる。
白い肌に真っ白なワンピース。どことなく良い香りもする。
この子は将来、どんな女性になるだろう。末恐ろしいというかなんというか…。
今のままでも、そこら辺の男だったらイチコロかもしれない。変な趣味が無くても。

私「私、美加、って言うの。あなたは何ていうお名前?」
しゃがみ込んで女の子より目線を下にする。
女の子は答えてくれた。

女の子「わたし、優理」
私「ゆうりちゃん、ね。可愛いお名前ね」
優理「ありがとう」
ニッコリ微笑んでお礼を言ってくる。
なんて可愛いのだろう。思わず抱きしめたくなる。

4/12
私「誰かを探しているのかな?それとも、誰かを待っているの?」
優理「……」
答えず、ただじっとこちらを見つめてくる。
困ったな…あ、そうだ。
私「ゆうりちゃん、上のお名前は何ていうの?」
優理「……源川」

みなかわ、か。知り合いには居ない。後で事務にでも行って探してもらおうかな。
本来なら講義の始まる時間だが、今日はパスだ。今はこの子を一人にしておけない。
私「ゆうりちゃん、ここで誰か待っているんじゃなければ、お姉ちゃんとお茶飲みに行かない?」

言ってから気付いた。お茶って…。この子くらいの年齢ならジュースで誘うべきだ。
それに何かこれって…誘拐とか思われそう。
優理「うん!行くー」

こちらの思いとは関係なく、いい返事が返ってきた。
ラウンジに行こう、と私が手を伸ばすと、彼女は軽く握り返してくれた。
なぜか冷たいイメージがあったが、普通の暖かい、小さな手だった。

5/12
構内のラウンジに着き、オレンジジュースを2つ買って席に座った。
少女は向かい合って座って、嬉しそうにジュースを飲んでおり、
カバンに常備しているスナック菓子を出したら喜んで食べてくれた。
名前はどんな字を書くのか聞いてみると、「源川 優理」と綺麗な字で私の手帳に書いてくれ、年齢を聞くと、9歳だと教えてくれた。
私もフルネームを教える。
「神尾美加」。上から読んでも下から読んでも、カミオミカ、というと、面白そうに笑ってくれた。

どこかの教授の子供かと思い、聞いてみる。
私「優理ちゃん、パパかママと一緒に来たの?」
優理「…優理ね、パパもママもいないの」
うわ、しまった。いきなり失敗だ。
私「あぁ…ごめんね。変なこと聞いちゃった」
優理「ううん。平気だよ」

じゃあ、ここには何で来たのだろう?兄か姉でもいるのかな?と思ったが、
これ以上肉親関係で質問するのはどうも気まずい。
優理「お姉ちゃん、あのね…」
私「なぁに?おかわり?」
優理「んーん、だいじょうぶ。ありがとう。あのね、優理のお友達になってくれる?」
うーん、なんて可愛いいのだろう。礼儀正しいし、育ちが良いのだろうか。
私「もちろん。私も優理ちゃんのお友達になりたいな」
と言うと、優理ちゃんの顔がパッと明るくなり、最高の笑顔を見せてくれた。

6/12
優理「嬉しい!よろしくね、お姉ちゃん」
私「こちらこそ、優理ちゃん」
こちらまで笑顔になる。いいなぁ、この子。

優理「お姉ちゃんに、私の一番のお友達、紹介するね」
優理ちゃんはそう言うと、手に持っていた熊のヌイグルミを見せてくれ…あれ?
手に…持っていたっけ?さっきまで手ぶらだったような…?

優理「この子ね、ラットって言うの。男の子よ。挨拶しなさい、ラット」
優理ちゃんはヌイグルミの頭をペコリと下げる。
ラット、って確かネズミだったような気もするけど、まぁいいか。
それと、ラットと聞いて頭に浮かんだフレーズは、何故か「解剖」だった。ヤダヤダ…。

私「よろしくね、ラット君。優理ちゃん、可愛いお友達がいるのね」
優理「うん。この子ね、ママがくれたの」
今は亡き母親の、形見のヌイグルミ…なんだかウルッときた。
私「そうなんだー。すごく可愛いね」
よく見てみると、確かに可愛い。全長30センチくらいの熊のヌイグルミ。
洋服はお手製だろうか?毛並みもきちんとお手入れがされているようだ。

出会いAへ続く
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