謀略(後)@

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息苦しい…
酷く、息苦しい。

壁にあった扉から部屋に入った瞬間、激しい眩暈に襲われ、私と雨月君はその場に倒れてしまった。
辺りが突然真っ暗になり、入ってきた扉は消えていた。
ここは一体どこなの…?何かの呪い…?
集中していないと、呼吸が出来なくなりそう…。

急に心細くなり、不安に心が揺れだす。
傍に倒れている彼も、私と同じように息苦しそうだ。
声を出すこともできないので、何とか目で会話を試みる。
平気?一体、何が?…分からない。まだ…平気。

何だか怖いの…。
これは通じないかな、と思ったけど、彼は手を伸ばして、私を抱き寄せてくれた。
嬉しくて心が落ち着く。

…でも、事態は好転しない。もはや耐え続ける以外に何も出来そうに無い。
それもどれくらい持つか?
誰かが助けに来てくれるのを待つしかない…。

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部室の中に入ると、そのあまりの質素さに少し拍子抜けする。
これじゃ何かを調べるといっても、何も無いじゃないか。

いや、それより雨月達はどこだ?
…といっても、すぐに分かる。
どこにも居ない。
ここには隠れるような場所なんて、どこにもない。
消えてしまった?そんなバカな。
こんなとこで神隠しなんて、冗談じゃないぞ。

ただ立ち尽くしていてもどうにもならないので、俺は何か手掛かりが無いか探して見る。
まさか窓から出て行った…?なんてあり得ないことを思いついたが、窓はしっかりと閉まっている。
駄目だ、何も無い。どこにも居ない。
俺は途方に暮れて部屋を見渡す。

…おや?
奥の壁に扉がある…?

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何だこれ…こっち側って、外だよなぁ。
そう思いながら、扉の前に行く。
そこには小窓があり、汚れているが、顔を付けて覗き込むと中の様子が見える…

…!
雨月達がいる!
鮎川さんと2人で倒れている。
これは…なんだ?意味が分からないが、とにかく助けなければ!
扉の先はこちらと似ている部屋だが、どういう構造になっているのかなんて、さっぱり分からない。
ええい、ままよ。と思い、俺は扉を開け…

…ようとして、思いとどまる。

入って、どうするんだ?
俺には霊感なんて無い。きっと霊感のある人なら、今頃危険を察知しているのだろう。
だからこそ俺は、何も分からないからこそ、慎重にならないといけないんだ。
そうしないと…この前のトーテムポールの二の舞だ。

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雨月達でさえあの様子なのに、俺が何も考えずに突き進んでもどうにもならない。
…しかし、当然放っておけない。
どうする?俺に何ができる?
もうすぐきっと、神尾さんが来るだろう。それを待って、一緒に考えるか?

…駄目だ。2人の状態がわからない。ひょっとしたら一刻を争うかも知れない。

俺は携帯を取り出す。
くそ…!こんなことなら雨月の姉さんに番号を聞いておくのだった。
少し近寄り難く、聞くと下心があるように思われるのが嫌だったなんて、情け無い言い訳だ。

自分でどうにも出来そうに無いなら、誰かに頼るしかない。
男のプライドがどうのなんて言っていられない。
誰か頼れる人は?
こういったことに詳しくそうな人は?雨月や鮎川さん以外でそんな人いたか?
誰か、誰か…

…いた。
俺は急いで電話を掛ける。番号を登録しておいて良かった。
そしてその相手は、すぐに出てくれた。

「はい、牧村です」

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俺「婆さん、俺、この前銅像買って…えーっと…死に掛けた…学生で…」
シズエ「はいはい、覚えていますよ。珍しいお客さんだったからねぇ…」
俺「あぁ、えー、その、俺、北上って言うんだ」
シズエ「北上さんね。えっと、何か用事がありましたかね…?」

俺「突然すまないのだけど、今、すごくやば…危険な状態なんだ。それで、何とか誰かに助けを求めたいんだけど、誰も居なくて、いや本当は居るのだけど居なくて、でも居ることを思い出して…」
シズエ「はいはい、落ち着いて話してくれないと、分からないよ」
俺「あぁ、…そう、だな」
いかんいかん…落ち着け、俺。
状況を分かりやすく、的確に伝えるんだ。

シズエ「何があったんだい?」
俺「えーっと…」
俺は今の状況をできる限り正確に伝える。
とある部屋の中。そこにある扉。向こう側は外で、部屋がある訳が無いのに何故か部屋が見える。その部屋の中で倒れている友人2人。
なんだ。落ち着けば簡単に伝えられるじゃないか。

シズエ「なるほどねぇ…」
俺「お願いだ、婆さん。俺にはどうにもできない。何か、どうすれば良いか分からないか?俺には異常が起きている、ってことしか…」
シズエ「ふむふむ…」

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まだ一度しか店で買い物をしていないようなお客から、突然こんな、意味不明な相談をされるのは迷惑だろうとは思う。
だが、こちらはもう藁にもすがる思いだった。

シズエ「その扉の向こうは、本来なら確かに外なんだね?」
俺「あぁ。それは間違いない。ここは一番端の部屋だから」
シズエ「向こうの部屋の中は、どんなだい?」
俺は汚れている小窓越しに、再度覗いて見る
俺「テーブルやら椅子やら…ん、こっちの部屋に似ているな」
シズエ「似ている、ってどれくらい?」
俺「えーっと…」
角度を変えて、中をよく見てみる。
テーブルに椅子、棚がある。後は…何も無い。
…ん?これは…?

俺「そっくりだ。こっちの部屋とそっくりだよ」
シズエ「ふむふむ…」
俺「これ、どういう…」
シズエ「質問は後にしておくれ。後ろの壁はどうなっている?」
俺「あぁ、ごめん…。えっと、後ろ…って?」
シズエ「その扉と逆側の壁だね」

何だか分からないけど、俺は振り向いて東側の壁を見る。
俺「何も…。何もない、ただの壁だ。張り紙とかも、何もない」
シズエ「後1つ。そこに、お前さん以外、誰か居るかい?」
俺「?いや…居ない…と思うけど…」
一応見渡すが、もちろん誰も居ない。

謀略(後)Aへ続く
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