謀略(後)A

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シズエ「思う…まぁ、分からないか。ちょっと静かにしてくれるかい」
俺「あぁ、了解」
俺は口を閉ざす。
……


シズエ「誰も居ないみたいだね」
俺「…分かるの?」
シズエ「多分ね。取り敢えず仕組みは分かったよ。何とまぁ恐ろしいことを」
俺「本当に?俺はどうすれば良い?」
シズエ「まず、そこの椅子を持ち上げて」
椅子…?まぁ、いい。
俺は言われた通り椅子を持ち上げる。軽い椅子なので片手で持ち上がる。
シズエ「持ち上げたら、それを、後ろの壁に思いっきり投げるんだよ」
俺「…へ?」
シズエ「急ぐんだろ?早く投げるんだよ。危ないから、少し下がってね」

もはや言われた通りにする以外ない。
俺は持ち上げた椅子を、思いっきり壁に投げつける。
椅子が壁に当たるとどうなるか、なんて分かりきっている。
鈍い音がして、壁が傷つくだろう。
しかし、ここでまったく俺の予想外のことがおきた。

ガラスが割れるような音が響き、壁が砕け散ったのだ。

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俺「うおぉっ!」
思わず驚きの声をあげてしまう。
壁が砕けた…?
あ、いや違う。変わらずそこに壁はある…。では何が…?
シズエ「やったみたいだね。2人は居るかい?」
俺「…え?」
2人は居るか?って…
…あぁ!
いつの間にか俺の横に2人が倒れている…!

俺「雨月!鮎川さん!平気か?しっかりしろ!」
俺は慌てて声を掛け、雨月を揺さぶる。
雨月「…ぐ・・はっ…」
すると雨月は大きく息を吐き出し、反応する。
俺「どこに居たんだ?どこか痛むか?」
雨月「う…あぁ、北上…?」
やっと気が付いた。
雨月「助かったのか…?古乃羽…!」
雨月は鮎川さんに声を掛ける。…と、どうやら彼女も気が付いたようだ。

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2人が無事そうなのを確認して、俺は電話に戻る。
俺「ありがとう!婆さん。助かったよ!2人とも無事だ!」
シズエ「あぁ、よかったねぇ…それじゃ、これで」
俺「ちょっと待って!一体何だったのか、教えてくれ…くださいませんか?」
シズエ「普通に話しなよ、気持ち悪いね」
自分でもそう思った。
シズエ「鏡だよ。合わせ鏡みたいなものだね」
俺「合わせ鏡…?じゃあ、俺が砕いたのは、鏡?」
シズエ「そうだね」

俺「いや、でも…俺とか映ってなかったけど…?他のも何も。それに砕けた鏡なんてどこにも…」
シズエ「霊感が無いのに、何でも見えているつもりかい?」
おおぅ…ストレートに言われた。しかしそうだった。いや、でも…

俺「俺はそうだけど、2人は違うんだよ。特に鮎…1人は良い目を持っているとか持っていないとかで…」
シズエ「良い目ね…。でも、それでも見ることができなかったから、罠に掛かったのだろうね」
俺「罠…?」
シズエ「誰かに対する罠以外で、そんなことする意味がないよ」

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シズエ「合わせ鏡の中に扉を作り上げておく、ってさ。恐ろしいねぇ」
俺「…それは、見抜けない?」
シズエ「見抜けなかったのだろ?上手く作られているのだろうねぇ。だから、強行策に出るしかなかったよ」
強行策。確かにそうだ。椅子を投げつけるなんてスマートじゃない。

俺「しかし、こんな方法でも何とかなるんだな…」
シズエ「いや、普通は無理だね」
俺「無理…?」
シズエ「中に人が引き込まれた状態で鏡を割るなんて、危険極まりないよ」
俺「え…じゃ、じゃあ…」
シズエ「いや、まぁ問題は無いと思ったよ。罠を仕掛けた本人はそこに居ないようだったからね」
俺「本人が居たらアウトだった…?」
シズエ「どうにもならなかっただろうねぇ。呪いそのものを何とかしないと」
そのもの、か…。俺には無理だっただろうな。

シズエ「早くそこから出た方が良いと思うよ。無理やり鏡を割って、仕掛けを壊しただけだからさ」
俺「あ、あぁ…そうする。本当にありがとう。今度、お土産でも持って行くよ」
シズエ「はいはい、どういたしまして。それじゃ、気をつけなさいね」
俺は電話を切り、何とか立てるようになった雨月と鮎川さんを連れて、その部屋を出た。

まったく、散々な目にあった。無事に済んでなによりだ。
これも、あの寺坂なんとかとかいう奴の仕業だったのだろうか?

そういえば…神尾さん、来なかったな。
白谷さん、会えなかったのかな…?

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「佳澄、いいの見つかった?」

あれこれと物色している佳澄に声を掛ける。
私の方は何だか全然買い物に集中できないので、今日は諦めた。
佳澄「うーん、中々…」
私「これなんて、似合うんじゃない?」
私は佳澄の服に会いそうな靴を選んであげる。
私「ほら、これ…」
と、佳澄の方を見る。

すると、佳澄はその場に立ち尽くし、どこか遠くを見るような目をしている。
私「…どうしたの?」
改めて声を掛けると、こちらに向き直って佳澄が言う。
佳澄「…ごめんね、美加。私ちょっと…大事な用事思い出しちゃった」
私「あらら…」
佳澄「ほんとにごめんね。私から誘っておいて…」
私「ううん、いいのいいの」
佳澄「ありがとう。私もう行かないと。また、ね」
私「うん、また来ようね」

そういうと、佳澄は店を出て、1人で帰っていった。
1人残された私は…買い物をする気にもならなかったので、大人しく帰ることにした。
後で古乃羽にでも電話して、雨月君との進捗でも聞いてみよっと。

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用事を思い出したことにして店を出て、私は歩きながら考える。

…失敗した。

古乃羽の目を誤魔化すためとはいえ、少し仕掛けに懲りすぎたせいだろう。
逆に脆くなって、壊されてしまったようだ。
私もあの場に居れば、鏡が割れても問題は無かっただろうけど…
美加はどうしても足止めしておく必要があった。

彼女は霊感こそないが、鋭い直感力を持っている。
そういった人間には注意しなければならない。
それに、あの女を呼ばれる可能性もあった。
まだ会ったことも無いが、要注意人物であることは確かだ。

暁彦が私に治療を受けるために来ていた、あの部屋。
治療と言っても体の崩壊を止めるだけの延命処置だが、そこに再び古乃羽が来ることは、彼女の性格上、分かっていた。
そして古乃羽が美加には声を掛けないことも、予想通りだった。
それは言うなれば、暁彦のあの生意気な妹、優理のお陰だろう。
あの子は私の思い通りにはならなかったものの、こういった形で役に立ってくれた訳だ。

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そこまでは完璧にいっていたのに…何故か、仕掛けが見抜かれてしまった。
あの後、部屋に入ったのは北上明雄だけのはず。
彼のことは完全に無視していた。何もできる訳はない、と。
あの女の連絡先も知らないようだったし、仮に知っている様子をみせていたら、連絡する前にあの場で直接手を下すつもりだった。

しかし、そうやって甘く見た結果がこれだ。
誰か他にも、邪魔になりそうな人が居る可能性が出てきた。
直接害になることはなさそうだけど、気に留めておこう。

でも今は取り敢えず…

伝言をしなかったことについて、美加たちへの言い訳を考えておかないとな。
あの女に対抗するために、まだ彼女達の近くに居る必要がある。
まぁ、つい忘れちゃった、とか言っておけば平気かな。私、そういう天然ぽいキャラになっているから。

歩くのも面倒になったので、携帯を取り出し、迎えを呼ぶことにした。
呼ぶとすぐに来てくれる、便利な人形たち。
そこに古乃羽や美加も加えたい。
駒として使うと、楽しいことがたくさんできるだろうな。
使えなかったら…捨てればいいだけだ。
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