対峙(後)@

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神尾さんの部屋の前。
俺「ここだよ」
俺はチャイムを鳴らす。

ピンポーン
……

俺「あら?」

ピンポーン
……

応答なし。

俺「出ないな」
舞「…」
もう一度と、とチャイムを押そうとしたとき、姉がドアノブを掴む。
舞「開いているわ」
俺「え…」
そのままドアを開く姉。
俺「あら、本当だ」

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俺「無用心だなぁ。姉貴が来るからって開けておいたのかな」
舞「出て行った人が閉めなかったから、開いているだけよ」
俺「ほぇ?」
それでも中にいる人が閉めるんじゃ?と思ったが、まぁどうでもいいか。

玄関を見ると、見覚えのある靴が置いてある。古乃羽のものだ。
部屋の中は静かだけど、居るのかな?
俺「こんばんはー」
声を掛ける…が、返事はない。それはそうだ。チャイムを鳴らしても無反応だったし、誰も居ないのか…

…って!?
俺はここにきて、やっと嫌な予感というものを感じる。何と言う鈍感さだ…!
なぜ古乃羽から返事が来ないのか?
なぜドアが開けたままになっているのか?
靴はあるのに、こちらが呼びかけても何の返答もないのは?
そして姉の言った「何かあったら」って…何があるんだ?
俺「古乃羽…!」

俺は慌てて神尾さんの部屋に駆け込む。
見覚えのある神尾さんの部屋。

そこに2人が倒れている。まさか、死――

いや…バカな!

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俺「古乃羽!」
すぐに古乃羽の元に行く。
一体何があった?メールは何だ?玄関が開いているのは?
古乃羽を介抱しながら、軽くパニックになる。

すると姉がやってきて古乃羽の元に屈みこみ、熱を測るように額に手を当てた。
俺「何が?何があったんだ?2人は…」
舞「大丈夫。気を失っているだけ…」
そう言うと姉はゆっくり立ち上がり、今度は神尾さんの元に行く。

俺「だけっ、て…」
古乃羽を抱きかかえながら姉に言う。
舞「美加さんも無事ね」
俺「無事?これで無事?一体――」
舞「2人をベッドに運んであげましょ」
俺「あ…あぁ…」
確かに床に寝転がしておくのも何なので、2人をベッドに運ぶ。

舞「怪我も無いみたいね。よかった…」
ベッドに寝かせた2人の髪や服を整えながら、姉が言う。
俺「あぁ、そうだね…」
舞「…怒っている?」
俺「いや、何が何だか…」
舞「ごめんね。2人の気が付いたら、話すから…」

弱弱しく言う姉。そんな風に言われると、何も言えなくなる。
俺は大人しく、2人の意識が戻るのを待った。

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どこをどうしたのか知らないが、姉が「触った」ためか、2人はすぐに目を覚ました。
気が付いた2人は俺たちが居ることに驚いた様子だったが、そんな2人を姉が落ち着かせ、尋ねる。
舞「2人とも、何があったのか覚えている?」
神尾「古乃羽、覚えてる…?」
古乃羽「…うん。美加は?」
神尾「私も覚えている。佳澄が――」
2人がここで起きたことを話してくれる。

白谷さんのことは俺も知っていた。2人の友人、ってレベルだけど。
その白谷さんに古乃羽が異常なものを感じ、更にそれを察した神尾さんがとっさに姉に電話をした、ということだった。
古乃羽「佳澄、今まで何ともなかったのに…突然、すごく嫌なものが見えたの」
舞「見つからないように隠していたのね。でも…」
姉が棚の方を見て、言う。
舞「あの子がそれを解いてくれたみたいね」
棚の上には、俺も見覚えのあるヌイグルミが置いてあった。

神尾「ラット君…」
ラット君。そうだ、あの少女はそう呼んでいた。
神尾さんがベッドから立ち上がり、ヌイグルミのところに行く。
神尾「守ってくれたんだ。ありがとう…」
手に取り、ギュッと抱きしめてキスをする。一瞬、ラット君が照れたように見えたのは、まぁ気のせいだろう。

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俺「それで、電話でおかしいことに気付いて、姉貴はここに来ようって言ったのか」
神尾「気付いてくれて良かった…舞さん、ありがとう」
古乃羽「ありがとう。雨月君も、ありがとうね」
神尾さんと古乃羽がお礼を言う。
そう、気付いてよかった。助かってよかった…

でも――

神尾「舞さんが来るって分かったから、佳澄は逃げて行ったみたいね」
古乃羽「佳澄、舞さんのこと知っていたのかなぁ」
それも疑問だ。
しかし俺が不可解に思ったのはそこだけじゃない。

舞「佳澄さんと少し話をしたのよ」
姉が言う。
古乃羽「あ、じゃあそれで分かった…のかな」
神尾「舞さんには敵わないと思った、ってこと…ね」

それなら余計おかしい。
敵わないと思って、なぜ2人を放っていく?利用しようとしないものか?報復が怖いとか、そういうことか?

考えすぎかも知れないけど、何となく古乃羽と神尾さんの言い方も不自然だ。
おかしいことに気付いていて、触れないように、誤魔化しているように思えてしまう。

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舞「…光一」
俺「うん…?」
黙ってる俺に、姉が声を掛けてくる。

舞「気になることがあったら、言っていいのよ?」
俺「ん…」
古乃羽と神尾さんが何か訴えるような目でこちらを見ている。
腑に落ちない点があるのは確かなようで、なんだか色々と託された感じだ。

俺「じゃあ…。えっと、電話でさ、どんなこと話したの?」
軽いことから聞いてみる。
舞「簡単な挨拶。私のこと、名前は知っていたみたいね。ハッキリと嫌いって言われたな。それと、2人のことで軽く脅されたわ」

脅された。2人がどうなってもいいのか、と脅されたのだろう。
そうだろうな。姉のことを知っていたなら、そうするのも分かる。
それで…?

俺「それでなんで…2人に何もしないで去って行ったのかな」
舞「…」
俺「それと、なんで姉貴は…急がなかったの?」
一番聞きたかったことを聞く。この事態に、なぜあんなにゆっくりと来たのか?
話を聞いてれば、俺はもっと…死ぬほど急いで駆けつけただろう。取り返しのつかないことになる前に。

対峙(後)Aへ続く
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