探索(前)@

1/14
「うん。そう…××市って言っていたよ。うん。それしか…」

電話の相手は古乃羽。
俺は姉に頼まれて、白谷さんのことを聞いて回っている。
…と言っても神尾さんと古乃羽の2人相手に、だけど。

白谷さんの一番の"友人"であったはずの彼女達。
しかし予想以上に…いや、予想通り、情報は少なかった。

彼女はいつからかそこに居て、知らずに仲良くなっていたという。
ひとつハッキリしているのは、彼女と知り合ったのは寺坂家に行ったとき以降だ、ということ。
それ以前は…?というと、古乃羽曰く「白谷佳澄なんていう人は、どこにも居なかった」らしい。今思えば、の話だが。

友人が多い神尾さんも色々な人に聞いてくれたが、白谷さんについては誰もが"美加と古乃羽の友人"という認識しかないようだった。
住所や電話番号、年齢や出身についても誰も知らず、大学のどの学科の名簿にも彼女の名前は無かった。

そうして散々聞きまわって分かったのは唯一つ、神尾さんが聞いた「××市に住んでいる」ということだけだった。

2/14
古乃羽「ごめんね、力になれなくて…」
俺「いや、仕方ないよ。彼女については俺も何も知らなかったし」
古乃羽「うん…。なぜか分からないけど、佳澄には何も聞いていなかったの」
俺「んー…あれかな。何かカモフラージュしていたとか何とかのせいで」
古乃羽「かなぁ。佳澄に対しては何かこう、話を聞こう、って気にならなかったのよね。住所のことだって、美加が聞いたことだし」
俺「ふーん…」
神尾さんか。前々から思っていたが、神尾さんて実は凄い人なのかもしれない。どういうところが、って具体的には言えないけど。

俺「まぁ、住んでいる場所が絞れただけでも良かったよ。姉貴に教えておくよ。それじゃ――」
古乃羽「あ、待って」
俺「ん?」
古乃羽「あの…お姉さん、佳澄を探して、会いに行くのかな」
俺「…だと思うよ」
古乃羽「だよね…」
俺「心配か?」
古乃羽「うん…。あのね、こーくんにお願いがあるの」
最近になって「雨月くん」から呼び名が変わったわけだが、そんな風に呼ばれるのは初めてで、どうもくすぐったい。
俺「何?」
古乃羽「あのね、私が言うのもおかしいけど…、お姉さんのこと、見ていて欲しいの」

3/14
俺「見てるって…?」
古乃羽「私もそういうところあるのだけど…お姉さん、1人で背負い込んじゃうタイプかな、って」
俺「あぁ…」
異議なし。まさしくその通りだ。
古乃羽「そんなことはよく知っていると思うのだけど、どうしても…。それって、こーくんにしかできないことだし」
俺「大丈夫、分かってるよ。ああ見えて結構、世話を焼かせるところもあるんだぜ?」
古乃羽「ふふ、そうなんだ。私にも焼いてね?それじゃ…気を付けてね」
俺「お?あぁ…。それじゃ、また」

電話を切る。

うーん、古乃羽が姉貴の心配をするとは。
古乃羽なりに、何か嫌な予感でもしているのかもしれない。

姉貴のことはいつも気に掛けている。病気のため、具合の良し悪しをいつも気にしていたからだ。
そのため世話を焼くのは俺の中で義務のようになっているが、今回の件ではいつも以上に注意しておこうかな。

よし、取り敢えず古乃羽から聞いた話を教えに行こう。まずはそこからだ。

4/14
――ここか。

目的地に着き、車を降りた俺は、改めて看板を確かめる。
「神乃木産婦人科病院」
まさに廃墟と言える、古びた建物。
こんなところに…本当に居るのだろうか?

舞「じゃ、行きましょ」
俺「あぁ」
姉に促され、俺たちはその病院に足を踏み入れた。

――××市。
俺は姉貴にそう教えただけだが、それからこの場所を割り出すのは早かった。
「普通の人の目には映らない場所。マンションやアパートではない。まさか野宿をしているとも思えない」
「車を止める場所があり、運んできたもの…人間を、誰の目にもつかないように運び入れることができる場所。大きな建物、又は広い敷地」

姉貴と俺は××市の市立図書館に行き、地域の地図を広げ、条件にあう場所を探し出した。
もちろんそういった場所はたくさんあったが、その中で、最後に決定的な条件を当てはめる。

5/14
「廃墟」

これは姉貴の予想したものだった。
神尾さんには失礼だが、白谷さんの住んでいる「家」は「神尾さんの部屋より散らかっている」ということだった。

白谷さんの性格を考えたとき、そんなことが有り得るだろうか?
プライドが高いという彼女が、散らかった部屋なんかで暮らすだろうか?
…まず考えられない。
だから彼女は「家」と言った。きっと「部屋」は綺麗なのだ。

部屋以外のところ…家中が散らかっている。
それも、もしただ汚れているだけなら、掃除くらいするだろう。いや、掃除をさせるだろう。
それが容易ではない場所。掃除をして何とかなるようなレベルじゃない…単純に汚れているのではなく、「壊れている」場所。建て直しが必要なレベル。

「廃墟」だ。

流石にそういった場所は少なく、新旧の地図と地域の歴史本から簡単に見つけることができた。
それが、この病院だ。
約8年前に経営者が死亡。営業停止。…にも関わらず、建物はまだ存在している。

6/14
家を朝一に出たので、ここに着いたのは昼過ぎだった。
できるだけそうしようと心掛けている訳だが、こういう場所に来るのは、やはり昼間に限る。廃病院なんて尚更だ。いくら姉貴と一緒だからってね。

俺は「車で待機」と言われたが、一緒に行くと言い張ると、姉も分かってくれた。

建物の中は、なるほど確かに廃墟だった。
一言で言って、ボロボロ。掃除してどうにか、というものではない。
一体、なんでこんなところに住んでいるのだろう?
もっと綺麗な所も探せばあるだろうに。
俺のそんな疑問も余所に、姉は奥へと進んでいく。
俺もそれについて歩き、何が飛び出してくるかと身構えつつも、姉に質問してみる。
俺「白谷さん、居るのかな…?」
舞「…分からないわ」

分からない。ちょっと意外な返答だった。姉ならそれくらい分かるものと思っていた。

舞「居るようでもあるし、居ないようでもあるし…」
俺「ふむ…」
舞「…佳澄さんについては、上手く掴めないの」
ちょっと不安なことを言う姉。
それを聞いて俺は、少し嫌なことを考えてしまう。
もしかして白谷さんは、姉より…"強い"のか?もしそうだったら俺たちは…。

7/14
舞「不安そうね」
俺「あ、いや…まぁ、ちょっとね」
簡単に見抜かれる。
舞「得体が知れないの。何とも言えないわ」
俺「そか…なるほど」
これは、考えている以上に大変なことになるかも知れない。

舞「心配しなくても、光一くらい守ってあげるわよ?そうしないと古乃羽ちゃんに申し訳が立たないわ」
俺「え?いやいや…」
それだと俺が古乃羽に顔向けできない。最低でも足手まといになることは避けなければ。

それにしても…
ここは一体、どういう場所なのだろう。
不気味な場所。何か、凄く嫌なものが渦巻いている場所。
何かがあった場所?昔、何かが……何が?

っと。
不意に姉が止まる。
俺「ど、どうしたの?」
まさか、現れた…?
舞「あれ、何かしらね」
姉が前方の壁を指差す。

その壁にはシミ…いや、あれは手形だ。手形が付いていた。

探索(前)Aへ続く
怖いサイト.com
ベストヒットナビ
感想・雑談はコチラ
もっと探す@AB
[戻る]
- mono space -