ある事件の話

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あるところに男がいた。
男の名前は神乃木聡。彼は神乃木産婦人科病院の院長―神乃木勲の1人息子である。
彼は…歪んだ人間であった。特に女性に対しては、人を人とも思わぬ扱いをしていた。

ある日のある夜、彼は1人の女性を襲う。
この事が全てを狂わせる原因となる。

被害者となった女性の名前は牧村夏美。この時18歳。
彼女の両親は早くに亡くなっており、祖父母と兄の4人暮らしをしていた。

被害にあったことを、夏美は隠していた。
自分の身に起きたことを家族に知らせ、心配を掛けさせたくなかったから。
それと、自分をとても大切にしてくれる祖父が、この事を知ったら何をするか分からない…そう考えたからだった。

しかしその約1ヶ月後。
彼女は、事を隠し通せない可能性を知る。

夏美は妊娠していた。

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普段の素行では気付かれない自信はあったが、身体のことではそうはいかない。
病院で妊娠を通告された夏美は悩む。どうすべきか…どうすればいいのか。

そんな夏美に声を掛けたのは、なんと加害者の聡であった。
夏美が検査を行った病院…そここそが、神乃木病院であった。
彼女は自宅から遠く離れた病院に行くことを選び、それが恐ろしい偶然を呼び起こしたのだった。

聡は1つの提案をする。
未成年である彼女に、保護者の同意や書類等は無しで、秘密裏に堕胎手術を行ってやろう、と。
その代わり事件のことは誰にも言わないこと、そして…今後自分と関係を続けること。それを条件とした。

夏美にとっては苦しい選択となったが、聡に何を言っても条件は変わらない。

彼女は悩んだ末、決断する。

家族には隠さなければならない。条件をのんで手術を受ける、と。

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数日後、彼女は神乃木病院で手術を受ける。
執刀したのは聡の父、勲。勲にとって、息子のためのこういった手術は1度や2度の事ではなかった。

神乃木では、院内で水子供養を行っていた。
術後、彼女は供養として、小さい頃から大切にしていた1体の人形を病院へと持っていく。
"子供"というものに対する、彼女なりの決別であった。

しかし…

その人形を持ち出したことが、祖父に知られてしまう。

元々霊能力者の家系であり、優れた力を持っていた祖父は、霊視を行い、人形が産婦人科病院へと持っていかれたことを知る。
彼は夏美に、何が起きたのか問い詰める。

それを知られては、もはや隠し通すことはできない。
夏美は、自分の身に起きたことを告白するのだった。

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話を聞いた祖父は、激怒する。

彼は、妻のシズエと孫の陸に命令する。
事件に関する夏美の記憶を削り取り、消し去るように、と。
自分は全身全霊を掛けて、神乃木を呪う、と。
その罪は全て自分が被る、と…。

記憶を消すことには賛成したシズエと陸であったが、呪いを掛けることには猛反対をした。
それが何になるのかと。1人で責任を取って…どうするつもりかと。夏美がそれで喜ぶのかと。

しかし祖父は耳を貸さなかった。
何より大切にしていた夏美を、これ以上なく傷付けた神乃木を許すことは、彼にはできなかった。

彼は、文字通り全てを掛けて神乃木を呪う。

そして…呪いは成就する。

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神乃木親子は発狂。
突如として院内で暴れまわり、最後にお互いの身体をメッタ刺しにし、死亡する。
元々大きな病院ではない神乃木病院には悪い噂が立ち、瞬く間に経営破綻。跡を継ぐ者も居らず、病院は閉鎖された。

夏美の祖父はそれを確認した後、人を呪い殺した代償として、自らの命を絶つ。
これを受けて、シズエと陸は除霊の仕事を始める。
人を救うことで罪の償いを、と考えてのことだった。

夏美は記憶を消され不安定な状態であったが、やがて回復。
彼女が無事に回復したことが、シズエと陸にとって唯一の救いであった。

こうして、この事件は幕を閉じた――

…かに見えた。

牧村家に、白谷佳澄が現れるまでは。
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