お悩み相談A

7/12
牧村「それは危なかったねぇ」
神尾「はい…。今、入院しています」
牧村「で…、相談事ってあれかい?その原因とか?」
神尾「はい。牧村さんなら何か分かるかな、と」
俺「ほら、俺たち霊感とかまったく無いからさ…。お願いできないかな」
牧村「それは別に構わないけど…原因ねぇ…」
名刺を手に持ち、しげしげと眺める婆さん。

俺「何かおかしな点とか無いかな」
牧村「この名刺が、ねぇ…」
俺「呪われた名刺なんじゃないかなー…と。持ち主の怨念が、みたいな」
牧村「うーん…」
婆さんはそう唸ると、首を傾げてこう言った。

牧村「残念だけど、何も無いね」
俺「何も無い…?」
牧村「あぁ。これはただの、普通の名刺だよ。呪われているとかも無さそうだ」
神尾「普通の名刺…」

8/12
俺「じゃあ、何で…?やっぱり、あれか?何か危ないものを見たのかな」
名刺自体に異常がないのなら、それしかない。

牧村「そうなるね。本人に聞くのが一番じゃないのかい?」
俺「そうなんだけど、それが…」
神尾「古乃羽、何を見たのか覚えていないのです」
牧村「あら…」
俺「そうなんだよな」
牧村「それはまた、困ったねぇ」

婆さんと話をしているといつも思うことだが、この人はとことんマイペースだ。
人によってはイライラする事もあるかも知れないが、俺はこののんびりした感じが嫌いではない。
この件では少しナイーブになっている神尾さんはどう思うかな?、と心配だったが、彼女も気にしている様子はなかった。

牧村「私も霊視できれば良いのだけど、ねぇ…」
仏壇を見ながら婆さんが言う。
牧村「うちの人は得意だったのだけど、私はどうも苦手でねぇ」
俺「そうなんだ…」
牧村「耳の方なら良いのだけどね」
耳?…あぁ、なるほど。
以前、大学の怪しい部室から電話したときのことを思い出す。

9/12
牧村「ところで…」
俺「ん?」
牧村「この話、舞には相談したのかい?」
当然とも思える事を聞いてくる。しかし、聞かれたということは…
俺「婆さんも、舞さんのこと知らないか…」
牧村「ん?」
俺は、舞さんに連絡が取れないことを伝える。

牧村「舞が…」
俺「そうなんだ。まぁ、3日くらい出掛ける、って言っていたらしいけど」
牧村「…」
心配そうに、何事か考え込む婆さん。俺も心配と言えばそうだが、あのお姉さんなら、よっぽどの事がない限り平気そうな気もする。

牧村「神尾さんは、舞の事、どう思うかね?」
神尾「…はい?」
突然、神尾さんに話を振る婆さん。
神尾「どう、ですか…」
牧村「そ。あなた、勘が良さそうだから」
神尾「うーん…」
"勘が良い"と言う点を特に否定しないのは、彼女も自認しているからだろうか。

神尾「心配です。何かに巻き込まれているんじゃないか、って…」
牧村「…そう」
俺「何か気になる事がある?」
牧村「いや、何も。よく分からないしねぇ」
そう言ってかぶりを振る。ここで婆さんに分からないのなら、俺たちにも到底分かる事ではないだろうな。

10/12
――結局、婆さんに相談したものの何の進展も得られず、俺たちは牧村宅を後にした。
俺「まいったなぁ。何も分からず、か」
名刺から何か…?と思ったが、何のことはない。ただの名刺でした、というオチだ。

俺「舞さんが戻るの待つしかないかね、これは」
神尾「…」
俺「何かありそう?」
黙り込んでしまった神尾さんに問い掛けてみる。
神尾「あのさ…舞さんが戻ってきたとして、何か変わる事ってある?」
…どういう意味だ?

俺「そりゃ…相談できるじゃない」
神尾「相談しただけで、どうにかなる問題とは思えないのよね」
まぁ、それはそうか。
俺「じゃ、あれだ。霊視してもらえるかも」
神尾「…それさ、北上は頼める?」
俺「ん…」

神尾「私、無理。古乃羽があんな事になったのに、頼めないよ」
俺「あぁ…」
俺も、婆さんが霊視するって言ったら止めただろう。
でも、あの姉さんなら上手くやってくれるんじゃないか、なんて期待していたりする。
…しかし、それを察したように神尾さんが言ってくる。

神尾「舞さんなら、怪我せずに上手くやってくれるかも知れないけどさ。…やっぱり頼めないな」
上手くできるにせよ、危ない事は頼めない。そう言いたいのだろう。
それはそうだ。俺も同意する。

11/12
俺「…となると、だ。打つ手が無くなったかな」
これ以上、俺たちにできそうなことが無い。八方塞がりだ。

神尾「んー。あと、一手かな」
俺「お…?何かある?」
神尾「ほら…ここ」
そう言って神尾さんは名刺を取り出し、それを指差す。
俺「…どこ?」
神尾「ここだってば。ほら、書いてあるでしょ?」
俺「書いてあるって…」
まさか…

神尾「往来会の住所と電話番号、書いてあるじゃない。…本部って書いてあるから、支部もあるみたいね」
俺「…いやいや!」
また何という事を言い出すのだろう。

俺「それは流石にヤバイって…」
神尾「ヤバイって、何が?行ったら最後、取って喰われると思う?」
俺「…その可能性も無きにしも非ず」
神尾「チラシを大々的に配っているような団体よ?普通に相談者も居るみたいだし」
俺「でも、裏で何やっているか分からないだろ?その広報の人が死んでいるし、鮎川さんだって怪我しているし…」
神尾「別に、裏まで探ろう、って訳じゃないわよ。どんな所か知っておきたいだけ」
…これは絶対、ウソだ。

12/12
神尾「それに、ほら。何の関係もない、善良な団体かもしれないじゃない」
俺「…そうは思ってないだろ?」
神尾「アハハ…やっぱ、分かる?」
バレバレだ。彼女は往来会を疑っている。

神尾「確認したい事があるのよ。意味無いかも知れないけどさ…」
俺「うーん…」
これはどうやら、止めるのは無理そうだ。

俺「それなら…、俺も一緒に行くけど、良いよな?」
無理に行かせまいとすると、1人で行きそうな気がする。…まさか、そうさせる訳にもいかない。
神尾「ん?もちろん、そのつもり」
俺「あ…そう…」
頼りにされている、と考えていいのかな…?ちょっと嬉しいぞ。

神尾「じゃあ、作戦会議ね。ちょっと考えていることがあるの」
俺「ほほぅ…。実は俺もな、思い付いたことがあるんだ」
神尾「へぇ…何?」
さっき、ふと考え付いたことだ。

お互いに確実性には欠けるものだったが、霊感ゼロ組として無い知恵を絞り、作戦を立てる。
そしてこのまま、往来会に向かう事にした。

思い立ったら、なんとやらだ。
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