声A

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俺「あのさ。もう少し電話、平気か?」
舞「…多分、あと少し」

あと少しか。どうする…?
…って、悩むまでも無いか。聞いておかないといけない事がある。

俺「あの、古乃羽の事なんだけどさ…」
舞「…」
俺「えーっと、どう説明すればいいかな…」
名刺を貰った所から話をするかな…と思っていると、姉貴が先に言ってくる。

舞「古乃羽ちゃんが霊視したのは…桐谷さんの名刺?」
俺「…え?」
舞「違う?」
俺「いや、そう…その通りです」
驚いて、思わず敬語になってしまう。流石と言うか…知っているのか?

舞「彼女から、話は聞いているのね」
俺「あぁ。…あ、何か言っちゃダメみたいなことだったらしいけど…」
ここは古乃羽をフォローしておかねば。

舞「ちょっとの間、ね。私がここに着くまで、探して欲しくなかったから」
俺「あぁ、そう…」
"ここ"がどこだか分からないが、ずっと言わないでおいて、という訳じゃなかったのかな?
もっとも、古乃羽の性格を考えての、姉貴なりの気遣いかもしれないが。

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俺「古乃羽、瞼を少し切ったくらいで済んだけど…。あれって、何が…?」
舞「…光一の考えは?」
俺「俺の?」

俺の…というか、俺たちの考えでは――

俺「桐谷って人、殺されているじゃない?だから、その犯人がやったのかな…って」
舞「…正解よ。大体のとこは」
俺「大体のとこって?」

「…ぁ…」

…ん?何だ…?

舞「あれは、罠よ。犯人側が仕掛けた罠」
俺「え?あぁ…罠?」
舞「桐谷さんのことを、霊視とかそういった形で探ろうとする人に対する、罠」
俺「なんでそんな…」
そんな探られ方を予想している、ってのも変わった話だ。

「…ぁー……」

また…何だ?
誰かの声?電波が悪いのかな…?

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俺「それじゃ、名刺を渡してきたのは犯人じゃないってことか?」

名刺を渡してきた人間が犯人だと思っていたが、どうも違うようだ。
そんな罠を仕掛けるくらいなら、わざわざ渡すのはおかしい。

舞「犯人じゃないわね。…でも、渡した人は罠があると知っていたわ。それでも渡したかった。それが危険なものだと分かっていても」
俺「何で?…って、姉貴、渡した奴のこと知っているの?」

「…ぁー…ぉぉ…」

まただ。変な声…呻き声?それが徐々に鮮明に、大きくなってきている。

舞「えぇ…知っているわ。本当は止めて欲しいのだけど…止めないわね」
俺「一体、誰が?」

「…ぉぁぁ…ぁぁ…」

何だよ、これ…

舞「名刺を渡したのは、桐谷さんよ」
俺「…桐谷?いや、だって――」

「おおぉぉおおぉおおああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ」

俺「うわっ!?」

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俺は反射的に、携帯を耳から遠ざける。

ビックリした…。
何だ?今の…。
何か、すごく嫌な…

そう思いながらも、俺は恐る恐る携帯に耳を近付ける。
舞「…光一?どうしたの?」

姉貴が俺を呼んでいる声がする。
あの声は…聞こえない。

俺「あぁ、いや…。何か、電話の混線かな?変な声がさ…」
舞「――えっ!?」
俺がそう言うと、姉貴は珍しく驚いた声を出す。

俺「どうかした?もう、聞こえなく…」

「…ぁ……」

俺「あれ、また…」
また変な声が聞こえる。
何だろう?どこから聞こえてきているのか…?

俺「姉貴、これ――」
舞「ごめんなさい、光一。時間がないわ」
俺「ん…時間?」

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舞「光一、よく聞いて」
俺「…何?」
姉貴の口調が変わる。少し焦っているようだ。

舞「名刺を渡してきたのは、桐谷さんの弟」
俺「弟…」
舞「彼は、あなた達に危害を加えることは無いはずよ」
俺「…いや、でも古乃羽が――」
舞「古乃羽ちゃん、霊視する前に気付かなかったのかしら…?危険だ、って」

あ…そうか。
俺「いや、気付いたんだった。そうだよ。でも、その…」
そうだ。気付いておきながら、危険と分かっていながら霊視したのだった。
理由は…ちょっと言いにくいな。神尾さんのせいにもしたくない。

舞「気付いたのね?でも、その上でそうしたのなら…それは、古乃羽ちゃんには悪いけど、自業自得な部分もあるわ」
俺「ふむ…」
厳しい気もするけど、確かにそう言えなくもない。

「…ぁぁ……」

また、声が徐々に大きくなってくる。…何だか気味が悪い。

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舞「光一、それともう1つ」
俺「何?」

舞「往来会には、関わらないで」

…何となく予想していた事を言われる。

俺「…分かった。危険なんだな?」
舞「そう、危険よ。…特に、美加さんと北上君はダメ」
俺「あの2人…?」

「…ぉぉ…あぁぁ……」

クソ、うるさいな…!
あの2人がダメ、って何だ?
…というか、既にあの2人は一度往来会に行っているけど…それを姉貴に伝えた方がいいのかな?

俺「あのさ、その…」

「…あ…おぁ……ぁぁ…」

呻き声みたいな…何なんだよ、これ!?

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舞「いいわね?桐谷さんのことで、巻き込まれるかも知れないけど――」
姉貴は話を続ける。徐々に早口になっている。
俺「桐谷のことで…?」
舞「そう。それでもし巻き込まれて、関わるようになってしまったら…」

「…おお…お…ぉぉぉぉ……」

声…声が、こっちに迫って来る…?
不意に、そんなイメージが頭に浮かぶ。
さっきまでのように、ただ大きくなるだけじゃない。声が直線的に、こちらに向かってくる感じがする。

俺「姉貴、声が…」
舞「壷に気をつけて。いい?壷よ。人の頭くらいの大きさの――」

「…おぉぉ…おぉぉぉいいいいぃぃぃぃ……」

俺「声が、こっちに…」
舞「っ!」
何だ?何か…何か、いけない…!

舞「光一ありがとう。分かってくれて、嬉しかった――」

「いいいいいいいいいいぃぃあああああぁあぁぁぁ」

俺「姉貴!これ――」

言い終わる前に、携帯が切れる。
それと共に、俺に迫ってきていた声もプツリと途切れた。

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――
切れた携帯を持ちながら、俺はしばらく動けなかった。

色々な事が分かった気がするが、どうも頭の整理がつかない。
それもこれも、あの声のせいだ。

こちらに迫ってきていたあの声。携帯を切ると同時に途切れた、あの声。
まだ耳に残っているあれは…、姉貴の居る場所から聞こえてきていた…?

…きっとそうだ。
だとしたら、姉貴は平気なのか?そんな場所に、ずっと居るつもりなのか?

……

俺「まったく…」
口癖、決定だ。そう思いながら、俺はベッドに横になる。

姉貴が平気だと言うなら、信じるしかない。
不安で心配で仕方ないけど、無事を祈るしかない。

でも、とりあえず…。
姉貴が連絡してこない理由は分かった。
あんな声が聞こえてくるんじゃ、誰にも電話なんかできやしない。
お袋に、なんてとんでも無いことだ。
あれは絶対に"イイモノ"じゃないだろう…。

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さて…、と。
これから、どうするかな?

まずはお袋に、姉貴から無事を伝える電話があったことを伝えないといけない。
それから、その他の事を古乃羽達に話さないとな。

名刺を渡してきた人の正体が分かった。
それと、往来会は危険だ、ってことも。
…なぜか知らないが、神尾さんと北上にとっては、特に。

そのことを皆に…。
っと。
あと、壷か。

これもよく分からなかったな。
壷に気を付けるって、何をどうすれば良いのかサッパリだ。
割れ物だから、取り扱いに注意?…って訳じゃないだろうなぁ…。

俺はゴロリと寝返りをうつ。
まぁ、何はともあれ、明日、集まろうかな。
また神尾さん宅にでもお邪魔させて貰おう――

俺はその旨を古乃羽にメールすると、眠るべく、布団に包まった。

…しかしその晩は、あの声が耳から離れず、中々眠る事ができなかった。
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