扉(後)@

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牧村陸。
はじめて見る名前だけど、お父さんが「古い友人」って言っていた人だろう。
きっと、何とか…
そう思って急いで電話した私は、聞こえてきたアナウンスに唖然とする。

「お客様がおかけになった電話番号は、現在使われておりません――」

え…??

私は慌てて電話を切り、もう一度番号を確かめながら電話をする。
しかし…
「お客様がおかけになった電話番号は――」

うそ…

私は電話を切り、脱力してしまう。
何で…?お父さん…

扉を見ると、お札はほとんど剥がされていた。
そして見ているうちに、また一枚剥がれ、扉から落ちていく。

どうすれば良いの…?

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やっぱり、警察に?
それとも、誰か…ハナ?
…ダメ。きっと信じてくれるだろうけど、彼女まで巻き込めない。
他に誰か?親戚?学校?
携帯のメモリを見ても、誰一人、この事態を何とかできそうな人は居ない。

そうして悩んでいる間にも、扉からはお札が剥がれていく。
あと…5枚しかないよ!?
私も連れて行かれちゃうの?
連れて行かれて…どうなるの?

悪い事しか考えられない。
…窓から逃げる?でもここは2階で、飛び移れそうなところも無い。

電話。
もう一度、電話だ。本当に番号が違っていたのかも――
と思ったとき、持っていた電話が着信を告げる。

こんなときに、誰?
番号は…知らない番号だ。メモの番号とも違う。
いつもなら知らない番号には出ないけど――今はもう、誰でもいい!
私「はい、もしもし?」
私はそう思って電話に出る。
声「…もしもし?」
するとそこから聞こえてきたのは、少ししわがれた声だった。

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私「あの――」
声「今、陸に電話したね?」
私「え?」
陸…?…あ!
私「はい、しました!あの、私、今――」
声「…何だか、普通じゃない場所に居るね」
私「え?…あ、はい、でも、あの2人…あ!あと2枚!」

扉を見ると、残りのお札が残り2枚になっていた。

声「2枚?…あぁ、そういうこと…」
私「すみません、あの、もう、時間が…」
声「それじゃ、少し静かにしていてくれるかい?」
私「…静かに?」
声「そう。一言も喋らず、静かに。助かりたいなら、すぐに」
私「…はい」

なんだか知らないけど、私は言われるまま口を閉ざした。
今はもう、この電話の相手…声の感じからは、お婆さんだ。この人に頼るしかない――。

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――
一枚ずつ札を剥がし、残り2枚…といったところで、私は異変を感じる。

気のせいとも思ったけど、この感じは間違いない。
なぜここで、あれが?
あの…あの時の学生たちから見えたものと同じ、「耳」が?

私「…藤木」
横で何もせずに見ている藤木に、声を掛ける。

藤木「はい?全部剥がれました?」
私「…剥がれなくなったわ」
藤木「へ?」

私は扉から手を離し、少し下がる。
私「あなたでも分かるでしょう?中に、何か…出てきたわ」
藤木「中に…?」

そう言って、藤木が扉に視線を向ける。
私「何か、あの子以外の…別のものを感じるでしょう?」
藤木「んー…。あぁ、何か…なんだ?これ」
私「分かった?」
藤木「どこから沸いて出たんだ?これ…」

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私「さぁね…」
恐らく、電話だ。微かだったけど、それらしい着信音も聞こえた。

私「これじゃ、私には無理ね」
藤木「無理って…開けられないか?」
私「外ならまだしも、部屋の中に居られたら、無理よ」
藤木「うーん…そういうものか」
残念そうにする藤木。

藤木「ま、出直せば良いか…。ずっと閉じこもっている訳でもないだろ」
私「…」
出直す、か。
本当に、何も考えていない男…。

私「じゃあ…汐崎を車までお願い」
藤木「へいへい」
私「私は、少し調べてみるわ」
藤木「ん…?中の奴を?」
私「そう。気になるでしょ?」
藤木「確かになぁ…。それじゃ、開いたら頼むぜ?」
私「…分かったから、行きなさい」

了解、と言って階段を降りていく藤木。
私はそれを見送り、再び扉に近付いた。

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――
声「これで、よっぽどのことが無い限りは平気だよ」
私が黙ってから数秒後、電話の人が言う。

私「え…何かしたんですか?」
声「ちょっとね。説明は面倒だから、しないよ」

本当に?と思い、扉を見ると、お札は2枚のままだ。
しばらく見守ってみても、剥がれる気配は無い。
私「あの…ありがとうございます!平気みたいです!」
私は携帯を持ったまま、ペコリと頭を下げる。
声「はいはい、どういたしまして」
何だか変わったお婆さんだけど、助かった――
…って、まだ名前言ってないや。

私「あの、すみません、まだお名前を…私、汐崎真奈美っていいます」
声「汐崎…」
私「はい。真奈美です」
声「なるほどねぇ…。私はシズエだよ。牧村シズエ。あんたが電話した、陸の祖母さ」
私「へぇ…」

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牧村「陸が個人的に使っていた電話は、もう無くてね…」
私「はぁ…」
よく分からないけど、頷く。
何で使ってない番号に電話したのに、私に電話を返せたんだろ?
…ま、いっか。

牧村「陸はもう、2年前に亡くなっているけど…何か用があったのかい?」
私「え…そうなんですかぁ…」
お孫さんを先に亡くしちゃったんだ…可哀想なお婆ちゃん。
私「用事っていうか、父がここに――」

声「…真奈美ちゃん?」

牧村さんに父のことを話そうとしたとき、扉の向こうから、私を呼ぶ声が聞こえてくる。
…高城さんの声だ。

私「…何ですか?」
一瞬迷ったけど、もう平気だという安心感と、相手が高城さんだということで、私は返事をする。

高城「その…電話の相手は、誰?」

うわっ…バレてるの?

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私「…知りません」
私は通話中の携帯を机の上に置き、扉の方に向かう。

高城「そう…」
信じたのか信じてないのか、黙る高城さん。
この人とは、言い争いとかしたくないな…。

私「あの、お父さんは…?」
私は扉越しに、恐る恐る聞いてみる。
高城「本部の方に連れて行くわ」
私「どうしても…?」
高城「どうしても」
私「…」

頑として、引いてくれそうに無い。
でも、お父さんが連れて行かれるのはイヤ。絶対に…イヤ。
私は、連れて行かれる=死、と考えている。

私「私…お父さんしか居ないんです」
高城「…」
私「私、小さい頃にお母さんが亡くなって…それ以来、お父さんが1人で、私を育ててくれたんです」

扉(後)Aへ続く
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