繋がり@

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古乃羽「――私達が呼ばれたのって…」

助手席で古乃羽が呟く。

俺は今、古乃羽を乗せて汐崎さんの家に向かっていた。
「そこに行って、真奈美って子を連れてきてほしい」
牧村さんから、電話でお願いされたことだ。
古乃羽も一緒に、という事になったのは、相手が女の子で、さすがに男の俺が1人で行くと怪しまれるから、という理由だ。

俺「んー?」
古乃羽「こーくん、牧村さんにも舞さんのこと、話しておいたのね」
俺「あぁ、まぁね」

姉貴からの電話の内容は、牧村さんにも伝えてある。
そのためだろうな、俺たちが指名されたのは。

姉貴の意向により、往来会のことに、北上と神尾さんを関わらせる訳にはいかなくなったから…。

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教えてもらった住所に着き、車を降りる。
時刻は16時前。予定通りの時間だ。

[汐崎]と表札が出ている家を見つけ、チャイムを押すと、すぐにインターフォンから声が聞こえてくる。
声「…はい?」
警戒するような声だ。
…まぁ、無理もないか。事情は牧村さんから聞いている。

俺「えっと――」
古乃羽「牧村さんに言われて来ました、鮎川です」
俺より先に、古乃羽が答える。
声「あ、はーい」
少し明るい声。次いで、パタパタと玄関まで駆けてくる音がする。

古乃羽「私が返事した方が良いかな、って」
俺「…そうだな」

声「お待ちしてましたぁ」
やがて元気な声と共にドアが開き、俺たちは汐崎真奈美と対面した。

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可愛らしい、元気な子。
それが汐崎真奈美――真奈美ちゃんと呼ぶことにした――の第一印象だった。
女子高生だと聞いていたから、なぜか制服姿を想像していたけど、彼女は動き易そうなジーパン姿で…どこかしら、神尾さんに似ている感じがした。

車の後部座席に古乃羽と2人で乗ってもらい、俺は車を出す。

道中、古乃羽と真奈美ちゃんは、最近の女子高生事情について話をしていた。
俺は…もちろん、話に入れない。何しろ、こちらは男子校出身だ。
女子高生という生き物とは、何一つ接点を持つことは無かった。
俺じゃ上手く会話もできそうになく、その点でも、古乃羽が一緒で本当に助かった。

真奈美ちゃんは人見知りもせず、よく話す子だった。
特に俺たちが付き合っているという事を知ると、恥ずかしくなる様な質問をどんどんしてくる。
そういった事に興味を持つ年頃なのだろう…なんて、ちょっとジジ臭いようなことを思ってしまう。

牧村さんの家に着くころには、俺たちは…まぁ、少なくとも後ろの2人は、すっかり打ち解けていた。

――ただここまで来る間、往来会や真奈美ちゃんのお父さんに関しての話は、一切しなかった。

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牧村さんの家に着くと、挨拶もそこそこに座敷に通される俺たち。
そこで卓袱台を囲み、真奈美ちゃん本人からこれまでの経緯を教えてもらう。

俺「…なるほどなぁ」
牧村さんから簡単に話は聞いていたが、これはどうやら…由々しき事態のようだ。
古乃羽「お父さん、心配ね…」
気遣うように声を掛ける古乃羽。
真奈美「はい…。でも、高城さんが守ってくれる、って」

高城さん。往来会の本部長さん。
話を聞く限りでは、どうやら「味方」みたいだけど…?
古乃羽「その高城さんって、どんな人?」
古乃羽も気になったようで、真奈美ちゃんに問い掛ける。

真奈美「高城さんは――すっごく、綺麗な人です」
古乃羽「へぇ…」

真奈美「大人の女性って感じで、足が長くて、スタイルも良くて…」
俺「…」
真奈美「私でも、色気みたいなの感じちゃいました。フェロモンが出てるって言うのかなぁー…」

何やら、嬉々として話してくる真奈美ちゃん。
外見じゃなくて、中身というか…人柄を聞きたかったのだけどな…なんて思っていると、牧村さんが口を開く。

牧村「信用できる人だと思うよ」

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真奈美「そうですよね?私も信用できる、って思いました」
牧村さんの賛同を得て、更に笑顔になる真奈美ちゃん。

俺「声を聞いた感じでは、って事ですか?」
牧村「そうだね。特別な感情もあるみたいだし」
俺「…特別って?」
俺だけじゃなく、古乃羽も真奈美ちゃんも、何のこと?という顔になる。

牧村「…まぁ、何でもないよ。それより、真奈美さん?」
真奈美「はい?」
真奈美ちゃんを、“さん”付けで呼ぶ牧村さん。

牧村「あれから、電話はしたのかい?」
真奈美「電話…?あ、高城さんにですか?まだ、してないです」
牧村「それじゃ、してみなさいな」
真奈美「今、ここで?」
牧村「そう」
真奈美「じゃあ…」

そう言って、ポケットから携帯を取り出す真奈美ちゃん。
そういえば、やけにポケットが多い上着を着ている。
後で聞いたところ、身に着けておく物が多いから、そんな服を着ているとの事だった。
何をそんなに、と思ったが、こういうのが最近のお洒落なのだろうか?…昨今の高校生の考えることは分からん。

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――
…不思議な感じ。
こんな状況なのに、何事も無く1日が過ぎていく。

三島「それでは、お疲れ様でした」
私「はい、お疲れさま」
1日の事務報告を終え、部屋を出て行く三島課長。
私は椅子に座ったまま、それを見送る。
変わったことは、何も無かった。
汐崎部長も、普段通り…見た目は普段通りの仕事をしていた。

真奈美ちゃんの存在があるため、彼は誰かに助けを求めるようなことはしない。
自分が今監禁されていて、外に出ることや、外部の人――上の人間の許可が降りない人との接触が一切禁止されているということを、誰に話すようなこともしない。
全て、副会長の思惑通りになっている。

――私には、それが気に入らない。

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汐崎は宿直室に寝泊りしている。

この宿直室がおかしい。

私は女性ということもあり、使う機会がなかったので気にも留めていなかったけど、改めて考えてみると異常なものを感じる。

1階の一番奥まった場所にある、小部屋。
正面の出入り口からは勿論、裏口からも遠く、長い廊下の行き止まりにあるこの部屋に足を運ぶ人は、滅多にいない。
それゆえに、会員の中にはこういった部屋があること自体、知らない人も多いと思う。

それだけでもどうかと思うけど、それ以上に気になるのが、この部屋には…窓がない、ということだった。

本部長になった頃、私は一度だけ宿直室を見に行ったことがある。
その時は、正直何とも思わなかった。
ただ眠るだけの部屋。仕事が遅くなって帰りそびれた人が、一晩眠るだけの仮眠室。
寝るだけなら、静かでいい環境かもね…と、そう思っていた。

「人を閉じ込めておくには最適な部屋」

そんな風には、考えもしなった。

繋がりAへ続く
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