繋がりA

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プルルルル…

そんな事を思い悩んでいると、携帯が鳴る。
番号は…知らない番号。
でも、きっとこれは…?と思い、電話に出る。

私「はい――」
声「あのぉ…高城さん?真奈美です」
予想通り、真奈美ちゃんだ。
良かった…。

私「真奈美ちゃん、大丈夫だった?あれから変わったことは無い?」
真奈美「はい、お陰さまで…。あ、でも、えっとぉ…」

様子が少し…?と思い、軽く耳を澄ませると、彼女のそばに誰かいる気配がする。
これは、もしかしたら――

私「あの耳の…電話の人とは、会えたの?」
真奈美「はい。で、実は今ここにぃ…」
私「その人が居るのね?」
真奈美「そう、そうなんですー」
やっぱり。これは良い傾向だ。

私「力になってくれそう?お願いした?」
真奈美「あ、まだ…話を聞いてもらって、そしたら、高城さんに電話してみたら?って」

なるほど。じゃあ――

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私「あの…ごめんね、真奈美ちゃん。お父さんの話の前に、その方と代わってくれる?」
真奈美「はーい。ちょっと待って下さいね」

真奈美ちゃんの声が遠ざかる。
…きっと代わってくれるはず。向こうもそれが目的だろうから。

声「――はい、代わりましたよ」

やがて聞こえてきたのは、少ししわがれた老人の…お婆さんの声。
これだ。間違いなく、この人だ。あのときの耳の人だ。

私「はじめまして。私、往来会の高城沙織と申します」
声「これはどうもご丁寧に…。牧村シズエと申しますよ」

私「あの、事情は真奈美ちゃんからお聞きしていると思いますが――」
牧村「あー、あの、ちょっといいかい?」
私「…はい?」
牧村「その堅苦しいの、苦手でね…普通に話してくれるかい?」
私「はぁ…」

何だか、変わった人…。
でも、悪い感じはしない。

牧村「まぁ、あれだよ。話を聞いて、大体の事情は分かったから」
私「あ、では…」

牧村「相談には乗るよ。私のできる範囲でね」

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――話が早い。

私「ありがとうございます。私からも、そうお願いしようかと…」
牧村「…あんたも、大変な立場だねぇ」

どうやら、全て分かっているようだ。
まぁ、扉越しのあの会話を聞いていたのなら、それもそうかな。

私「真奈美ちゃんのこと、よろしくお願いします」
牧村「はいな。それじゃ、代わるよ」
そう言って、すぐに真奈美ちゃんに代わる。

真奈美「もしもし?」
私「真奈美ちゃん、牧村さん、相談に乗ってくれる、って」
真奈美「そうみたいです!高城さん、本当にありがとうございます」
私「困ったことがあったらすぐに相談して、ちゃんと言う事を聞くのよ?」
真奈美「はーい。…あのぉ、高城さん?」
私「なぁに?」
真奈美「んー…」

早速困ったこと…?

真奈美「ん、何でも無いですー」
私「…もう、本当に?」
真奈美「エヘヘ…今度、教えてあげます」

…?

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真奈美「で、あの…高城さん。お父さんの様子はどうですか…?」
少しトーンを落とし、真奈美ちゃんが真面目な声で聞いてくる。

私「大丈夫よ。今日一日、いつも通り普通に仕事をしていたわ」
真奈美「食事、大丈夫ですか?ちゃんと食べていました?」
私「食堂で食べていたみたいだけど…?」
真奈美「なら、平気かなぁ…」
食事が気になるなんて…奥さんみたいね、と思う。

私「じゃあ、ちゃんと食べるように伝えておくわね。これからちょっと様子を…会いに行ってみるから」
真奈美「はい。お願いしますー」
私「それじゃ、また――」
真奈美「あ、あの」
電話を切ろうとした所で、止められる。

私「なに?」
真奈美「あの…高城さんは、大丈夫ですか?」
私「…私?」
真奈美「お父さんも心配だけど、何だか高城さんも心配で…」

私が…?

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私「私は平気よ」
真奈美「…本当ですか?」
私「これでも本部長よ?私のことは、安心して」
真奈美「…はぁい」

私「ありがとうね、真奈美ちゃん」
真奈美「いえ、それはだって…心配ですよぉ」
私「ふふ…それだけじゃなくてね」
真奈美「?」
私「…それじゃ、またね」
真奈美「あ、はい。またー」

私はゆっくりと携帯を切り、椅子にもたれ掛かる。

…嬉しかった。

電話をしてくれたのが、嬉しかった。
真奈美ちゃんは私を信じてくれて、頼りにもしてくれた。
色々と大変な事態になっているけれど…これだけで十分よ。

私は椅子から立ち上がり、汐崎の所に向かった。
彼と同じものを守ろうとしている…そんな事を考えると、少し胸が熱くなった。

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――
仕事を終えて、部屋に戻る。
…本部の、最奥の部屋に。

廊下を歩く足取りは、当然重い。
真奈美の待つ家に帰るのとでは、大違いだ。

恐ろしく事務的な仕事内容。
誰との打ち合わせも必要とせず、ただ1人で黙々と行う単純作業。
誰にでもできる、部長の私がやるには、余りに――

…まぁ、もう、どうでも良い。
もはや何の興味も持てない。
この会がどうなろうと、私にはもう、関係ない…。

そんな事を考えながら、廊下の角に差し掛かる。
この角を曲がってすぐのところには会議室があるが、普段、人が来るのはここまでだ。
ここから更に奥に向かって、長い廊下が続く。
そこを歩いていった先、その行き止まりに、私が寝泊りを命じられた部屋があるのだ。

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角を曲がり、私は少し驚く。
そこには、廊下に沿って長い机が5,6台、ズラリと並べられていた。
今朝は何も無かったが…どうやら、会議室の机を全て出したようだ。
清掃でもするのか?それとも…?
一度疑いの目を向けてしまうと、どんなことでも怪しく思えてしまう。

確かに、うちの仕事には意味の分からないものも多々あった。
今までは何とも思わずに従ってきたが…もう、そうはいかない。

私はポケットに手を入れ、そこにあるものを確認する。
ペーパーナイフ。
先の尖った、一本のペーパーナイフ。

私は暴力によって、ここに連れてこられた。
信じていた人間に裏切られ、脅され…。
しかも、私だけならまだしも、娘の真奈美にも被害が及ぼうとしている。

…この手で、守らなければ。
心の中に、黒いものが渦巻く。
私はもう、どうなっても構わない。
堕ちてしまってもいい。
私達に危害を加えようとする人間は、誰であろうと許さない…。
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