究明(前)@

1/14
高城「はじめまして、桐谷さん」

向かいの席に着いた高城が、にこやかに挨拶してくる。
これまでは遠目に見るだけだったが、彼女はやはり美人だ。
身体のラインがくっきり出るような真っ白いセーターを着ており、その美しい曲線に目を奪われそうになる。

…が、そんなことは問題じゃなかった。
極端な話、彼女が下着姿で現れようと、それに見惚れない自信はあった。
彼女の普段の容姿から、そういった覚悟はしていたからだ。

しかし――ここに汐崎真奈美を連れてくるとは、思わなかった。
これはまったくの計算外だ。

いつの間に、2人に繋がりができたのか…?
顔を合わせたのは汐崎が連れ去られた時だろうが、汐崎真奈美にとって、高城は父親を連れ去った憎むべき相手のはずだ。

高城が上手く言い包めた、という可能性も考えられるが、ここにこうして連れてきたことからして、それは無さそうだ。

2/14
高城が完全に往来会側の人間であるなら、会の人間を連れてきたはずだ。
また、ただ単純に「汐崎を解放したい」と思っている場合も、そうなるだろう。

しかし彼女は、この子を連れてきた。
それは、つまり――

俺「…はじめまして、高城さん」
ずっと黙っている訳にもいかず、挨拶を返す。

俺「それと…」
高城の隣に座った汐崎真奈美に視線を移す…と、彼女と目が合う。
その目は――こちらをジッと見ているその目は、明らかに非難の眼差しだ。

俺「真奈美さんには、本当に申し訳ないことをしました」
俺はテーブルに両手をつき、深々と頭を下げる。
この子には、本当に悪いことをした。
まったく関係が無いのに、巻き込んでしまったのだ。
俺の…目的のために。

真奈美「…」
恨み言の1つや2つ言われるか――もしかしたら引っ叩かれるかとも思ったが、彼女は何も言わなかった。

3/14
高城「桐谷さん、事情を説明してくださる?」

頭を下げたままの俺に、高城が言ってくる。
やはり、こうなったか…。

この構図。被害者と加害者。
いとも簡単に、主導権を握られてしまった。
誰が来ようとこちらのペースで話を進めるつもりが、こちらは何も聞き出せない可能性すら出てきてしまった。

俺「そうですね…」
そう言いながら頭を上げ、高城の顔を見る。
どうせ勝ち誇った顔をしているのだろう…と思ったが、彼女は恐ろしく真剣な眼差しを向けてくる。

俺はその視線を真っ直ぐ見つめ返す。

…どうやら、本気のようだ。
決意に燃える、その目。
彼女は本気でこの件を…自分の手で解決しようとしている。

それなら良い。それなら…

俺はそう思い、話を始めた。

4/14
――あれは、3年前のある日のこと。

久しぶりに掛かってきた、兄貴からの電話。そこで兄貴はこう言った。

「探しているものが見つかった。往来会に入る」

長年の探し物がついに見つかったと言って、俺達は大いに喜んだ。
それは、2人の念願だったからだ。

兄貴は勤めていた会社を辞め、すぐに往来会に入会。
俺も必要なら入るつもりだったが、1人は外部に居たほうが良いだろう、ということで入会はしなかった。

俺と同じく元々霊感のあった兄貴は、広報部に配属された。
兄貴はそこで慎重に行動しながら"それ"の情報を集め、往来会の内情と共に、俺に教えてくれた。
今は力無く、隠居生活を送っている会長のこと。
実権を握っている副会長のこと。
それと、会長の懐刀とも言える本部長…高城沙織のことと、兄貴の上司である、汐崎祐一のこと。

それらの情報をまとめ、"目当てのものは副会長が持っている"と分かったのは、今から半年ほど前の事だった。
俺はそこから更に、慎重に事を進めていこうと言ったが…

「副会長が持っているなら、置き場所の検討はついている」
そう言って兄貴は出掛けていき…それ以来、連絡が来ることは無かった。

5/14
高城「…探し物が何であるか、言わないの?」

話が切れたところで、高城が口を挟んでくる。
まぁ、当然の疑問だろう。

俺「一応、ね…」
汐崎真奈美をチラと見て、俺は答える。
俺「本部長ともなれば知っているだろうけど、往来会の最高機密になるのじゃないか?それを知ったら――」
高城「別に構わないわ」
俺「…」

構わない。
構わない…?
俺が心配してやったのには、それなりに理由があるのだが…

俺「言っても良い、と?」
目の前に座っている高城をジッと見つめ、聞いてみる。
高城「ええ。今更あんなもの、ね」
俺「…」

あんなもの、か。

…なるほど。

6/14
俺「じゃあ、言おう。良いね?真奈美さん」
真奈美「え?…あ、はい」
何をそんなに?と戸惑った表情をしている。

俺「壷だよ。壷。大きさは…人の頭くらいかな」

そう言って俺は、両手で大体の大きさを形作る。

真奈美「壷…ですか」
俺「そう。高城さんもご存知でしょう?」
高城「えぇ。見たことはないけど」

見たことがないか。
まぁ、だから、だろうな…。

真奈美「それが何か…大事なものなんですか?」
ハテナ?という顔をして尋ねてくる。中々可愛らしい表情だ。
俺「あぁ。とてもね」
真奈美「凄く高価なものとか?」
俺「うーん、それはどうかなぁ…」

俺も実家にあった写真でしか見たことがない訳だが、見た目はそれ程良くなかった。
素人目に見て、骨董品としての価値は無いような気がする。

7/14
高城「特別なものだ、って話よ」
真奈美「特別?って、どんな?」
高城「それは――」

高城が俺を見る。説明して、という顔だ。
まったく…完全に彼女のペースだ。
それなのに嫌な思いにならないのは…彼女の人柄の成せる技だろうな。

俺「その壷は、呪われていてね」

ここは話しておくか。
許された範囲で…。

真奈美「呪い…」
俺「ズバリ言うとね、ある種の人が真上から覗き込むと…霊感が身に付くのさ」
真奈美「え…」
俺「ある種ってのは、霊感が無くて、素質のある人ね」
真奈美「えー…?」
驚いた声を出す真奈美嬢。

真奈美「そんなの、あるんですかぁ?」
高城「…あるのよ。往来会がここまで大きくなれたのは、その壷のお陰でしょうね。優秀な会員を増やすことができたから…」

究明(前)Aへ続く
怖いサイト.com
ベストヒットナビ
感想・雑談はコチラ
もっと探す@AB
[戻る]
- mono space -