究明(前)A

8/14
真奈美「凄いなぁ…。そんな良い物があるなんて」
高城「…霊感があるのが良い、って言うのなら、良い物かもね」
真奈美「良い物ですよぉ」

良い物。
あれが良い物と言うのか。

…やはり思ったとおりだ。
彼女は知らない。
高城沙織は、真実を知らない。

俺「あれは、元々うちの――桐谷の家に伝わるものでね」
俺は話を戻す。

俺「ずっと昔に…30年以上も前に、うちから盗まれたものなんだ」
高城「盗まれた…」
俺「そ。だから、俺はあれを取り戻したいのさ」
真奈美「盗まれたなら盗難届けでも出して、ちゃんと返して貰えば…」
俺「物が物なんでね。あれの存在を世には出したくない」
真奈美「…」

高城「盗んだのは、副会長?」
高城が聞いてくる。
真っ先に副会長を疑うあたり、よっぽど彼が嫌いと見える。

9/14
俺「いや。盗人さんは往来会とは関係の無い人間さ。どうやら金目の物と思ったみたいで…とっくの昔に死んでいる」
高城「…」
俺「それから色々な人の手を渡って、今の副会長の元にある、ってだけさ」
高城「そう…」

副会長の手に渡ったのが、どういった経緯によるものか。
…俺はそれも知っている。
なぜなら――ある人に、教えてもらったからだ。

しかし、そこまで話すつもりはない。この2人にそこまでは話せない。
それが…約束だから。

真奈美「あの、名刺については…?」
真奈美嬢が聞いてくる。
…そうだ。その話もあった。

俺「あれは、壷を出させるためでね」
真奈美「?」

俺「副会長のジイさん、兄貴のことがあってから警戒心が強くなってね…。今や、壷は金庫の中さ」

10/14
当然俺には、金庫破りなんて芸当はできない。
だから壷とご対面するには、副会長本人に金庫を開けて貰うしかなくなってしまった。

では、どうすれば彼は金庫を開けるか?
どういった時、彼は金庫を開けてくれるか?

…答えは簡単。
壷を使うときだ。

だとすれば、こちらでその機会を与えてやれば良い。
霊感は無いが、素質のありそうな人間。そういったものに興味を持っていそうな人間を、往来会に紹介する。
…そう考えたとき、丁度良い人物がそこに居た。
それが、神尾美加だった。

俺は2人に、そう伝える。

…そうとだけ、伝える。
どうして彼女に思い当たったか。
どうやって彼女のことを知り得たか。
それは――それも、言うことはできない。
この2人に、説明することはできない。

11/14
真奈美「神尾って確か、お父さんが会ったっていう…?」
そう言って、高城に確認する真奈美嬢。
どうやら、名前は聞いたことがあるようだった。

高城「そうね。私も一目だけ見たけど…確かに好奇心旺盛、って感じだったわね」
真奈美「ふーん」
高城「桐谷さん…随分と良い子に巡り合えたものね」
こちらに向き直り、高城が言ってくる。
何かしらの含みは感じるが…まぁ、スルーしておこう。

真奈美「あの、じゃあ、私も…?」
俺「ん?」
真奈美「霊感無いし、興味も…ちょびっとはあるし」
俺「あぁ。まぁ、それもあるけど…」

その通り。それだけの理由です。
…と言ってしまえば話は簡単かもしれないが、ここは正直に言っておこう。
高城の手前もあり、隠し事ばかりはできない。
下手に嘘がバレてしまうと、こちらの立場は更に悪化する。

俺「君の場合は、少し事情があってね」

12/14
怪しげな名刺を渡せば、神尾美加は往来会を訪ねるだろう。それは容易に想像できた。
しかし入会するというところまでは、どう考えたってあり得ない。
ただ単に、「何か変なところ」という認識だけで終わってしまうだろう。

そこで更に、もう一手打つ必要があった。

往来会を訪ねた神尾は、汐崎祐一と会うだろう。
あの名刺があれば、必ずそうなる。
ならば…次は、汐崎祐一に動いてもらう。
彼から神尾に、アクションを起こしてもらう。
そのために――

真奈美「…私に名刺を?」

俺「君に名刺を渡せば、君のお父さんは間違いなく動く。でも往来会は、お父さんに事件の真相なんて、絶対に話さない」
高城「…」
目を伏せる高城。
往来会…ではなく、彼女にとって、汐崎に事件の話をしない理由は1つではなかっただろう。
殺人が行われた事を知られたくない、ということだけでなく…彼を巻き込みたくない、という気持ちもあった筈だ。

13/14
俺「それで、彼は自分で調べるしかなくなる…そうなったら、神尾に話を持ちかけるのは目に見えている。往来会に関係しない、外部の、唯一の関係者だからね」

真奈美「それで、その神尾さんが、更に興味を持って…と?」
俺「そういうこと」

少しいい加減な、大雑把な計画だと思われるかも知れないが、神尾美加には霊感を求める理由がある。
それは、彼女の過去を調べて分かったことだ。
彼女はきっと求める。
必ず、それを望むはずだ。

高城「…勝手ね」
高城がポツリと言う。

まぁ、そう言われても仕方ない。
俺は完全に、俺だけの都合で動いた。それは分かっている。

俺「弁解の余地はありませんね…。兄貴が殺された時点で、こちらも手段は選ばないと決めたので」
高城「復讐のため?それで正しいと思っているの?」

随分と攻撃的だ。
彼女の近況からして…なんとなく、八つ当たりされている気がしないでもない。

14/14
俺「正しくは無いでしょうねぇ…。少なくとも、真奈美さんにとって、俺は間違いなく悪者だ」
そう言って、その相手を見る。
…と、真奈美嬢は何か考え込んでいる。

高城「確信犯って、タチが悪いわね」
…よくもまぁ、目の前で堂々と言えるものだ。
腹を立てるでもなく、少し感心してしまう。

真奈美「あの…」
俺「はい」
真奈美嬢が口を開く。

真奈美「そうまでする理由が、分かりません…。桐谷さんとお兄さんは、何でそこまで?」
俺「…」
真奈美「往来会も、そんな…乱暴すぎると思うんです」
高城「それは、私も思ったわ。いくら、会にとって不利益なことだからってね…」
高城も同調する。

…どうやら、これも話さないといけないようだ。
まぁ、間違った認識を持ったままでいるよりは、マシか。

俺「もちろん、理由はありますよ」
そう言って俺は、更に踏み込んだ話をすることにした。
怖いサイト.com
ベストヒットナビ
感想・雑談はコチラ
もっと探す@AB
[戻る]
- mono space -