求める理由@

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「――では、あちらでお待ちください」

往来会本部。
再びここを訪れた私は、待合いのスペースに行き、名前を呼ばれるのを待つ。

以前は北上と一緒だったけど、今日は1人。
汐崎さんと会ってから、どうしようかとしばらく悩んでいたけど…やっぱり、来てしまった。

「霊感が身に付く」

普通の人に言われたのなら怪しくて信じる気にもならなかったけど、汐崎さんの話なら信じられる。
舞さんの忠告を無視することになっちゃうけど、私には舞さんの知らない事情がある訳で…。

ただ…気掛かりなのは、古乃羽の事。
きっと、怒るだろうな。本気で怒られそう。
古乃羽は私の事情を知っているけど、それでも許してくれないかもしれない。

それが、今日まで悩んでいた理由。
古乃羽に心配を掛けるような事は、したくないとは思っている。

でも私は、自分の力で先に進みたい――

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受付「神尾様」
私「はい」

大学での午前の講義が終わってから来たので、時刻は13時過ぎ。
以前と違い、今日は他に待っている人は1人も居なかったので、私はすぐに名前を呼ばれる。
…まぁ、前回もすぐに呼ばれたけどね。

受付に行くと、そこにはスーツ姿の男の人が来ていた。
それを見て、あれ…?と思う。

汐崎さんじゃない。
一応、汐崎さんの名刺を出して、お話を伺いに来ました、って言ったのだけど…会えないのかな?

男「それでは、こちらに…」
私のそんな思いとは関係なしに、その男は名乗りもしないで、私を建物の奥へと案内してくれる。
まったく、無愛想な人。なんか…どこかで見たような暗い目をしているし、ちょっと不気味な感じ…。

男「どうぞ」
やがて男は応接室――前回と同じ部屋だ――の前で立ち止まり、そう言って扉を開けてくれる。

私「あ、どうも…」
何となく恐縮しながら中に入ると、そこには1人の初老の男性が待っていた。

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「夏目川と申します」

部屋で待っていたその人は、そう名乗った。
初老…と言ったけど、近くで見ると結構な年にも思える。
きっと、60代後半くらいかな…?

勧めてくれた椅子に座り、名刺を貰う。
これで往来会の人の名刺、3枚目だなぁ…なんて思いながら、それを見ると…

「往来会 副会長 夏目川吉次」

私「副会長…さん?」
夏目川「えぇ…まぁ、やらせて貰っています」

うわわ…?
なんかいきなり、お偉いさんが出てきた?

私「えっと、あの…」
夏目川「神尾さんには、以前にも来て頂いたそうで」
私「あ…はい。神尾美加です…はじめまして」
そう言いながら、私は座ったまま背筋を伸ばし、ペコリと頭を下げる。

夏目川「ハハハ…まぁ、そう固くならずに」
私「はぁ…」

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夏目川「あいにく、汐崎は外に出ていまして」
私「あ、そうなんですか…」

むー…やっぱり。
ここに来る前、携帯に電話をしたけど繋がらなかったのよね…。

夏目川「本会についてのお話を、ということでしたので…それなら私の方で、と」
私「…」

それでいきなり、副会長さん?
お偉いさんがこんなとこで出てくるなんて、他に誰か居ないの?
何か、変な気が…

…んー、でも、これはこれで良いかも?
往来会の話を詳しく聞くなら、こういった人も良い気が…

夏目川「…誰か、他の者を探して参りましょうか?」
私「え?…あぁ、いえ。お話を…お願いします」

せっかく来てもらったのに、お偉いさんじゃ嫌だから他の人で、ってのは失礼よね。
私はそう思い、副会長さんと話をすることにした。

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私「あの、以前お聞きしたのですけど、こちらには霊感の無い方もいらっしゃるとか」
唐突ながら、私はさっそく、聞きたかった霊感についての話を始める。
夏目川「何人か居ますね。特に、事務の方に」
私「それは――」

コンコン

…おっと。扉がノックされ、お茶を持った女性が入ってくる。
女性「失礼します」

入ってきたのは、この前とは別の人だ。
牧村さんの話では、確かその人が"目"を置いていったとか言っていたけど、今日はそういった事はしない、って事なのかな?

女性「失礼しました」
その人はお茶を置き、そそくさと出て行く。

夏目川「…で、何でしょう?」
私「あ、えっと…そういった人って、霊感を持つことを望まなかった人なのですか?」
夏目川「…と、仰いますと?」
お茶を一口飲み、にこやかに聞き返してくる副会長さん。
その仕草や喋り方は若々しく、見掛けとはかなりのギャップがある。

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私「こちらに入会してから霊感が身に付いた、という方も居るとお聞きしたので…」
夏目川「もちろん、居ますね」
私「でも、全員が持っていないということは、何か理由とか…条件とかあるのかな、って」
夏目川「…あぁ、なるほど」

もし何か、「こんな人は絶対に無理」って条件があるのなら、先に知りたい。
望んだ人全てに身に付くなら一番良いけど、そんなに簡単なものとは思っていないもの。

夏目川「条件は…当然、ありますね。誰でもという訳にはいきません」
私「…」
やっぱり…。
うーん、これはダメなパターン…?

夏目川「でもご安心を」
私「?」

夏目川「神尾さんは大丈夫。素質は十分にありますよ」

求める理由Aへ続く
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