計画

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全てが思い通りに動いている――。

神尾美加との対談を終えた私は、応接室で1人、最終的な計画の確認をする。
何か抜かりはないか?問題はないか?不安要素は?

長いこと考え、出た結論は――

全て、問題なし。

先ほど、神尾美加と明日の夕方に会う約束をした。
それで最後の準備が整った訳だ。

時刻は19時過ぎ。
私は部屋の内線で、待機しているように言っておいた藤木を呼ぶ。

…これから、一気にカタをつける。

たった今から明日の夜――いや、明後日の朝までに、全てを排除する。
私にとって邪魔なもの、不要になったものを全て。
そして、望むものを手に入れる。

2/10
藤木「神尾の美加ちゃんは、帰ったのですねぇ」

部屋に来た藤木が、椅子に腰掛けながら残念そうに言う。
私「今日のところはな。明日、また会うことになる」
藤木「また、ここに?」
そう言って足元を指す藤木。

私「いや。外で会って、私の別荘に連れて行くつもりだ」
藤木「へぇ…」
ニヤニヤしながら藤木が言う。
何を考えたのか、すぐに分かる。

私「そこで、彼女には霊感を身に付けてもらう」
藤木「あぁ…そういえば、何か知らないけどそんな事が可能でしたっけね」

…藤木は壷のことは知らない。
まぁ、当たり前だ。コイツに話す馬鹿は居ない。

私「それで、君には今からやってもらいたいことがある」
藤木「…今から?」
私「そう。全てを終わらせるための計画だ。心して聞いてくれ」

そう言って私は、彼に話を始めた。

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私「まずは…今から、汐崎を私の別荘に移してもらう」
藤木「別荘に?」
私「あぁ。ここからだと2時間は掛かるが、まぁ、眠らせて連れて行けばいいだろう」
藤木「…了解です」
なぜ?という顔をしながら了解する藤木。
余計なことを言わなくなった点、少しは成長したようだ。

私「汐崎には、そこで死んでもらう」
藤木「お…。じゃあ、自分の出番ですね?」
心なしか、嬉しそうに言う藤木。仕方のない奴だ。

私「いや、汐崎は明日…夜になってから、こちらで始末する」
藤木「そうですか…って、明日は神尾がそこに行くのでは?」
私「あぁ、そうだな」
藤木「2人を会わせるので?」
…やはり、首を突っ込んできた。

私「いや、会うことはない。汐崎は地下に閉じ込めておくからな」
物置となっている地下室。彼はそこに放り込んでおくつもりだ。

私「汐崎は、神尾ではなく、別の人間に会うことになる」
藤木「…誰です?」

良い質問だ。私はほくそ笑み、それに答える。

私「桐谷隆二だよ」

4/10
藤木「おぉ?あの男を捕まえたので?」
驚いて聞いてくる藤木。

私「いや。まだ泳がせている…というところだな」
藤木「…はぁ」
私「アレは用心深いからな。そう簡単には捕まえられん」
藤木「ふむ…」

私「だから、別荘に招待してやる。こちらの土俵に」
藤木「…どうやって?」
話の流れから、少し頭を使えば分かると思うのだが…相槌だけで、コイツは何も考えないな。

私「桐谷は今、神尾をマークしている」
藤木「神尾を…」
私「だから、簡単な話だ。その神尾を連れて行けば、自然と奴も釣れる」
藤木「あ、なるほど…」

そう、簡単な話だ。
桐谷は壷を狙っている。私が持っている、あの壷を。
あれは今厳重に保管しているため、奴が手を出せる機会は限られている。
その機会の1つが…私が壷を使うときだ。
奴は神尾を張って、彼女に壷を見せるときを狙ってくるだろう。

…ならば、こちらでその時を作ってやる。
来ると分かっている人間を捕まえることは、容易いことだ。

5/10
藤木「そこで捕まえて、汐崎とご対面、って訳ですね」
汐崎「そう。そして、そうなってから汐崎を始末する」
藤木「そうなってから…あ!分かりましたよ」
流石にピンと来たようだ。

藤木「桐谷が汐崎を殺したようにみせるって訳ですね」
私「あぁ、そうだ」
藤木「なるほどなるほど…」

当然、その時には桐谷にも死んでもらう。
…見掛け上は、自殺として。

それで、1つの構図が出来上がる。
兄の死に疑いを持った弟が、兄の上司を"犯人"として、殺害する。
死人に口なし――汐崎が死ねば、彼を犯人に仕立て上げるのは簡単だ。
その後、仇討ちとはいえ、殺人を犯したその弟は、罪の意識に悩まされ…自殺。

ありふれた話だ。
こんなものは、簡単に作り上げることができる。

6/10
藤木「桐谷と汐崎はそうするとして…あの子はどうします?父親がそうやって死んだとなると…」

そうなれば当然、汐崎真奈美が問題になり、放っておけば厄介な事になるだろう。
…それは、「父親が監禁され、その後に不審な死を遂げた」という事についてではない。
厄介になる理由――それは、彼女が壷のことを知っているからだ。
高城と共に、桐谷から話を聞いてしまったからだ。

私は高城からの報告の後、すぐに桐谷を見つけ、マークしていた。
故に、桐谷が高城を訪ねたこと、その後、汐崎真奈美も加えて話をしていたことを知っている。
所詮奴らは、私の掌の上にあった訳だ。
全て見通されているとも知らずに、馬鹿な奴らだ…。

私「汐崎真奈美も排除する」
藤木「…やりますか」
私「勿論だ。明日の夕方、彼女を本部に連れてくる」
藤木「どうやって…って、簡単ですね。汐崎に会わせると言えば、来るでしょうねぇ」
私「あぁ」
その際、彼女が連絡を――高城沙織に確認の連絡をしないように、手を回しておく必要はある。

私「連れてきて、あの宿直室に放り込んでおく」
藤木「…便利ですねぇ、あの部屋。俺も今度使おうかなぁ」
私「…」
藤木「あ、すみません…」
軽口を叩くな、と睨むと、小さくなる藤木。

…残念だ。
コイツが、もう少し頭を使える奴なら、な。

7/10
私「汐崎の娘を連れてきた後、高城もその部屋に連れて行く」
藤木「…やっぱり、本部長も?」
私「当然だろう」
藤木「惜しいなぁ…」
高城に執着していた藤木にとって、彼女が始末されるのは、やはり惜しいようだ。

藤木「なんか、こう…できないですかねぇ?」
私「…何?」
藤木「こっちで面倒見ますから、本部長は任せてくれませんか…?」
私「…」
やはり、呆れる愚か者だな。

私「…高城は、お前が扱える相手か?」
藤木「いや、まぁ…」
私「お前の頭で、何とかなる女か?結果は目に見えている」
藤木「そうかも知れませんが…力で捻じ伏せて、とか…」
ごねる藤木。

…残念だ。
コイツは、聞き分けも悪い…。

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私「藤木…」

私は椅子から身を乗り出し、藤木を見つめながら言う。

藤木「…はい?」
私「高城の正体を教えてやる」
藤木「へ?」
私「…高城だけじゃない、汐崎真奈美の正体も」
藤木「…」
何のことか?という顔をしながら、身を乗り出してくる藤木。
その藤木に、私は言う。

私「あの2人は、魔女だ」
藤木「…」
何を言い出すのか…と思っているだろうが、私は低い声で続ける。
これは、必要なことだから。

私「分かるか?奴らは、魔性の女だ。人間を――男を、取って喰う」
藤木「副会長…?」
只ならぬ雰囲気に、やや怯えた声を出す藤木。

軽いな。
コイツは簡単に、心に隙を見せる…。

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私「魔女はどうするべきだ?」
藤木をジッと見つめたまま、私は言う。

藤木「いや、何を仰って…」
私「魔女は、火炙りだ。…違うか?」
藤木「その…」
私「違うのか?」
藤木「…」
私「違うのか?藤木」
私は彼の目を――その奥までを見つめ、力を込めて聞く。

藤木「その…通りです…」
力なく答える藤木。
私「ならば、やるべきことは分かったな?」
藤木「…はい」
私「では、行け」
藤木「…はい!」
そう言って椅子から立ち上がる藤木。

藤木「失礼します!」
そして、意気揚々と部屋を出て行った。

10/10
私「フン…」

藤木が出て行った後、私もゆっくりと部屋を出て、外へと向かう。

残念だが、藤木は優秀な部下にはなれない。
…が、優秀な兵隊にはなれる。
今夜、ジックリと仕上げてやろう。
奴には、大仕事をして貰わなければならない。

本部から外に出たところで、私は一度振り返る。

随分と大きくなったものだ…。
建物を眺め、そんな事を考える。

路上で易者をしていた頃には、想像も出来なかったものを、私は手に入れた。
約20年の歳月をかけて、ここまで成長させたもの。
誰が何と言おうと、私のもの…。

それをどうしようと、全て私の勝手だ。
これは私だけのものであるべきだ。

――捨てることができて、初めて自分のものと言える。

私は、そう考えている…。
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