鬼になる理由<美那>

796 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/12/12(金) 00:12:30 ID:vNpQddCw0

主人公が話の区切りで変わります。最初は美耶で。

鬼になる理由<美耶> 1/4

ハルさんから入ったお兄ちゃんヘの電話は、とても奇妙な内容だった。
ハルさんの会社の先輩に当たる人が、その日の明け方に家出をした、というもの。
少し前から言動がおかしかったこともあって、会社では『精神的な病理による一時的な失踪』と受け止められてしまったみたい。
でも、ハルさんは、もっと深刻に考えてる。
「オレ、急には会社を休めないから、その間だけでも笹川さん探しを頼めませんか?」
ハルさんの依頼に、お兄ちゃんは二つ返事で引き受けた。

で、今、私を迎えに来てる(汗)。

「なんで私も一緒なの?」
お兄ちゃんの車の助手席で、不満たらたらの私。
だって、馬鹿兄貴ときたら、
「鬼が出るらしいから、お前が必要」
とかって理不尽なこと言うんだもん。
鬼…ねえ…。そんなもの、現実にはいないと思うんだけどな。



797 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/12/12(金) 00:12:55 ID:vNpQddCw0

鬼になる理由<美耶> 2/4

お兄ちゃんは、以前から、たびたび、その失踪した笹川さんのことを聞いていたよう。
「I村ってわかる?そこが元凶みたいだから、いま向かってる」
って県境の村名を上げる。
場所はなんとなくわかるし、すごい田舎なのもわかる。行ったことないけど。
「私たちが行って探すっていっても、笹川さんの顔はわかるの?」
と聞くと、
「パジャマで飛び出したから、それを目印にする」
だって…。
アバウトな兄貴だ(溜息)。

それにしても、変な話。
笹川さんは、夜中に突然、
「子どもがいない。鬼が連れて行った」
って騒いで飛び出したらしいけど、赤ちゃんはちゃんとその部屋で寝てた。

以前、ハルさんがうちに遊びに来たときに、ハルさんの後方に禍々しい角の生えた『黒い影』を見たことがある。
追い払えそうだったから玄関の外に締め出したけど、あの日、ハルさんは笹川さんとI村に仕事しに行ったんだよね。
笹川さんは、あの『影』に憑かれちゃったのかな?
追い払えずに今まで来ちゃったのかな?



798 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/12/12(金) 00:13:45 ID:vNpQddCw0

鬼になる理由<美耶> 3/4

「幽霊なら、角なんか生えないよね?」
道すがら、助手席でただ座っているのもなんなので、いろいろ考えてみた。
教授にくっついて旅をしていたとき、私はいろんな幻覚を見た。その中には、ただの妄想とは思えないほど現実と合致しているモノもあった。
でも、鬼は見ていない。鬼っていうか…人間から大きく外れた生き物を見たことは…ない…。
『黒い影』には、捻くれた大きな角が2本、はっきりと頭にあった。アレを見たとき、私は、人間の怨霊ではなくて動物の霊かと思ったんだ。牛みたいな不恰好なシルエットだったし。

「牛鬼(ぎゅうき)って妖怪の伝承は実際にあるぞ」
お兄ちゃんは、煙草を口の端に乗せながら答えた。
「鬼の頭に牛の体を持っていたり、頭と体の形が逆だったり、他の動物が混ざったりと、よくわからない動物だけどな。キメラであることは間違いないらしい」
「キメラ?」
聞き覚えのない言葉に、私は首を捻る。
「キメラってのは、2種類以上の生物が合体している生き物のことだ。元はギリシャ神話だったかな。ライオンとヤギと蛇の一部分ずつを持つキマイラってのが出てくるんだ」
なんとなく記憶にある。ライオンの頭に尻尾が蛇のイラスト。
「じゃあ、鬼っていうのは、実際にいるの?」
と聞くと、お兄ちゃんは苦笑する。
「んなの、知らねーよ。全国に似たような妖怪話が残っていても、写真でも残ってなけりゃ、それが事実とは言えないだろ」
うん。『伝承』だけじゃ証拠にはならない、よね。



799 :オオ○キ教授 ◆.QTJk/NbmY :2008/12/12(金) 00:14:30 ID:vNpQddCw0

鬼になる理由<美耶> 4/4

「牛鬼ってのは、未知の海洋生物のことじゃないかな」
他に話題もなかったので、お兄ちゃんは続けた。
「『牛』なんて名前がついているわりには、伝承が残っているのは水辺ばかりなんだ。海や湖に生息していた大型魚類が、ごく稀に姿を現した現象がそれなんじゃないかと思う」
「その魚に角があったの?」
私が聞くと、お兄ちゃんは頭を掻きながら、
「あ、そっか。魚に角はおかしいよな」
と笑う。
でもすぐに異説を持ち出した。
「実在の『魚類』に角はなくても、後々、その魚を食べた人間が、寄生虫か何かから重病を発症すれば、それは『疫神』となるだろ。その後の口伝で『病気を撒き散らす鬼』と同一視されても無理はないと思わないか?」
…ありえる話には聞こえる。

「それじゃあ、『笹川さん』に幻覚を見せたのは、やっぱり、鬼じゃなくて動物霊か何かの仕業なのかなあ」
『鬼』なんてものがいないとなれば、ハルさんにくっついてきた『黒い影』は、そうとしか説明できない。
お兄ちゃんは、
「いーや」
と、ほんっっっとに楽しそうに、言った。
「俺は『妖怪』ってのはいると思うね。死んだ人間の思念や神仏なんかじゃなくて、『異形の生き物』が存在することを信じてる」
…一応、反論しといた。
「私が持衰(じさい=古代の神降ろしの能力を持った巫女)の生まれ変わりだったとしても、そんなモノを感知する力なんてないんだからね(汗)」

お兄ちゃんは、
「期待してるよ」
と無責任に言った。
…馬鹿。
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