鬼になる理由<崇志5>

<1>

そこにいたのは、鬼、じゃなかった。
…いや。
やっぱり、鬼というんだろうか…。
肩や胸筋が不自然に盛り上がり、長く太い髪を振り乱している。
でも、頭から生えているのは角じゃない。

鉈だ。
2本の鉈が頭蓋を割ってる。

恐怖よりも同情を感じた。
『それ』の目からは、血交じりの涙が流れていた。

「痛くないか?」
突き刺さっている凶器を指差して、聞いてみる。
『それ』は頷いた。
取ってやりたい。が…。
近づくと、裂けた口から牙をむき出す。
思わず独鈷を構えたけど、簡単に噛み千切られた。

<2>

外で落雷の音が鳴り響いた。
落ちたっ…と身を縮める。
幸い、場所はこの家じゃないらしい。

『それ』を見ると、なぜか、俺と同じように震えている。
…雷を怖がってるのか?

理由はわからないが、チャンスだと思った。
俺は『それ』に飛びついて、頭の異物を引き抜いた。
女の嬌声のような声が響く。
強烈さに、耳を押さえ、目を閉じた。

鼓膜が正常な音を拾い始めた頃。
目を開けると、足元に笹川氏が倒れていた。
足が妙な方向に捻れているのは、美耶が言っていたように、感覚を失っているからだろう。

俺は、意識のない笹川氏を背中に担ぎ上げて、出口に向かった。
これで帰れる。

加藤の爺さん、俺たちは、この村から無事に帰るよ。
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