鬼になる理由<美耶7>

<1>

中空の鬼が、怒りの形相を、私に向けてる。
空気の中に威嚇の呼吸音が混じる。
…怖い。

でも。
ごめんね。『彼』はあなたのこと、怖がってない。
だから、脅かしても止まらないよ。

どんなふうに解決するつもりなんだろう、『彼』。
私には想像もつかない。
けれど、笹川さんは死んじゃうんだろうな、って思う。
だって、『彼』の頭の中は、鬼をできるだけ穏やかな気持ちにさせて葬ることしか考えてない。
母親に憑依された笹川さんが一緒に逝ってあげたほうが、鬼は喜ぶはずだもん…。

<2>

廃墟のすぐ側まで来たとき、玄関のドアが中から開いた。
笹川さんを担いだお兄ちゃんが、…心なしかホッとした顔で(笑)…、
「車に乗ってくれ。帰るぞ」
って言った。

待ち構えていた鬼が。

口を目一杯開けて、お兄ちゃんごと笹川さんを飲み込もうとした。

<3>

ねえ!

私は『彼』に感情を叩きつけた。

鬼に贄を与えたら、それが解決になるの?!
この子を鬼にした人たちに責任を取らせないの?!

あなたは、そんな理不尽な殺され方をした自分の生き方に、納得してるの?!

嵐や雷や水害や…。
そんな自然現象を『悪』に見立てて、逃れるために無益な犠牲を払って…。
それ、みんな、人間の思い込みのせいでしょ?
必要以上に恐れたりしなければ、災害は、贄なんか立てなくても、自然に去っていってくれたのに。

思い込みで殺されたのなら、思い込みをした人間に報復の目を向けさせるべきだよ!!

<4>

鬼の頭の鉈から、真っ白な稲妻が落ちてきた。
認識できたのはそこまでで、その後は、轟音と、吹き飛ばされそうな突風に、身を縮めて、耐えた。

私に被害がなかったのは…わかる…。

他は…。
見るのが怖い…。

鼓膜がおかしくなっちゃったのか、ぼうっと熱を持つ聴覚の奥で、『彼』が、苛立った声を上げていた。
「贄の多くは、未知への恐怖から奉納されたわけではない。人間の中にある嗜虐欲を満足させるために行った儀礼だったのだ」

……………。
そっか……。
人間は、人間を不幸にしたい生き物だもんね…。
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