スーツの男@

はじめに…

オカルト系の話で、「さて、問題です」という、以下のような話があります。

--------------------------------------------------------------
終電が過ぎてしまって困っていた。
「あぁ、どうしよう」そんなことを何度も呟いていた。
ふと気づくと、目の前に黒いスーツを着た男が立っていた。

その男は俺と目が合うと驚いた表情をして俺にこう言った。
「お前さん、この前の…」
俺は考えた。見覚えがない人間にそんなこと言われても。
10秒間の沈黙があった。何故か俺はただならぬ危機感を感じていた。
「お前さん、この前の」
男が再びその言葉を口にしたとき、俺は気づいてしまった。

俺はその場を駆け出した。必死に走った。
もう大丈夫だろうと思って後ろを振り向くと男の姿はなかった。
俺は呟いた。
「あぁ、どうしよう」

数日後、俺がその男に殺されたのは言うまでもない。
--------------------------------------------------------------

見ての通り、ちょっと不可思議で、あちらこちらで様々な考察がされているものです。

今回は、これについての話になります…。

1/16
以前、姉貴にこんな質問をしたことがある。
「この問題の話、分かる?」と。

滅多に入らない姉貴の部屋で、そんな意味不明な質問を投げかけた俺。
何やら難しそうな本を読んでいた姉貴は、「大学の課題?」と、当たり前と言えば当たり前の答えを返してくる。
中学、高校の頃は、よく勉強を見てもらっていたからだろう。

俺「あぁ…いや、そうじゃなくて、これなんだけど」

俺はそう言って、PCでプリントアウトしてきた紙を見てもらう。
そこに書かれているのは、「さて、問題です」という話。

古乃羽と神尾さんに、「舞さんに聞いてみてほしい」とお願いされていたものだ。

2/16
舞「…何?これ」
短い話なので、すぐに読み終わった姉貴が聞いてくる。

俺「なぞなぞ…かな?これといった答えが出ていない話なんだ」
舞「…ちゃんと答えのあるなぞなぞ?」
俺「いやぁ…どうだろう」

答えが無い話だ、という説もあるので、どう言っていいやら。

俺「その道じゃ有名な話なんだけどさ…ネットとかでは」
舞「へぇ…」
俺「俺も答えが分からなくて、古乃羽たちもお手上げ。でも、姉貴なら分かるかな〜なんて」
舞「…」
小首を傾げながら、2度3度と読み返す姉貴。
どうやら、何か考えてくれているようだ。
お世辞が効いたかな?なんて思っていると――

舞「…誰が書いたのかは、分からないの?」
姉貴が聞いてくる。
俺「分からないねぇ」
書いた人に聞け、ってことか?
まぁ、確かにそれなら答えは得られるだろうけど…誰が書いたかなんて、それこそ、もう絶対に分からないだろう。

3/16
舞「有名な話なら…幾つかの説は出ている?」
俺「あぁ、色々とあるよ」

ネット上では様々な考察がされており、これが正解っぽいな、という説もある。
俺は姉貴に、そのうちの幾つかを説明する。

スーツの男とは夢の中で会っており、自分はもう逃げられない、ということを悟っているという説。
「お前さん、この前の」という台詞に意味があり、解読すると「逝け」という言葉になるという説。
それと、既に言ったが「答えが無い」という説や、話が永遠にループする説、などなど。

それを聞いた姉貴の反応は、というと…

舞「それだけ出ているなら、それで良いでしょ」
という、意外なものだった。

俺「そっかぁ…」
先ほどまでの反応といい、何だか…どうやら、姉貴は乗り気じゃないようだ。
さては、分からないからだな?なんて、思わず邪推をしてしまう。
…と。

舞「…何よ、その顔」
すぐに突っ込まれてしまう。

4/16
俺「いやいや。何か変な顔してた?」
舞「悪そうな顔していたわよ。どうせ分からないのだろ?って」
俺「ハハ…」
こんなときは笑ってごまかすに限る。

舞「別にそれでも良いけど…聞いて後悔しないなら、1つ、答えがあるわよ」
俺「…へ?」
後悔?何で?

舞「情報が少なすぎるのよ。想像で補うとすると、いくらでも話が広がってしまいそうで」
俺「うーん…まぁ、そうだろうね」
ほんの数行の文章だ。
ここから完璧な答えを出せと言われれば、想像力で…又は推理力で、それを補わなければならないだろう。
それは、当然のことだ。
でも、何でそれが後悔するなんて話に…?

ちょっと意味が分からなかったが、俺は姉貴に話を聞くことにする。
そして…後で少し嫌な気分になり、ちょっとだけ後悔をした。

5/16
舞「まず…これって、おかしな話よね」
俺「そう?…って、まぁ、変な話か」
舞「だって、話の中の"俺"――仮にAさんとして、Aさんは死んでいるのよ」
俺「そうだな」
舞「なのに、どうやってこれを書いたの?」
俺「あぁ…それか」
それは確かにおかしな点だ。でも――

俺「オカルト系の話じゃ、よくある事だよ。自分が殺された、ってのは」
舞「幽霊が書いた話、ってこと?」
俺「いや、それは無いと思うけど…。そうじゃなくて…ほら、なぞなぞだし、こういうのもアリでしょ」
舞「それを許すと、答えが出せないわ」
俺「…ん?」

舞「あり得ない事が書かれているのなら、答えは出せない、ってこと」
俺「…」
空想を元に作られた、創作的な謎掛けには答えは出せない…ってことか?
死んでいても文章が書けるような人が出した謎なんて、解けない、と。
でも、そこは柔軟に考えて…と思うが、何となく言い方が気になる。

俺「じゃあ、あり得るなら答えは出る?これが、実際にあり得る話なら」
舞「そうね」

6/16
これはまた奇怪なことを言う。
…が、そう言えば前に聞いた「一人多いわけ」についても、それを実際に起きた事件と考えて話をしていたか。

じゃあ、今回のこれも?
でも、そう考えると――

俺「じゃあこれ、最後に自分…Aさんが殺された、ってのは嘘ってこと?」
ってことになる。
幽霊が書いた話だなんて認めるのは、それこそ非現実的だ。
…が。

舞「Aさんが死んだ、ということが嘘だとすると…答えを出す意味なんて、何もなくなるわね」
俺「まぁ…そうか」
なぞなぞの問題に嘘が含まれていたら、どうしようもない。
「問題のこの部分は嘘なんです」なんて言われたら、やってられない。

しかしこれが本当の話だとすると、このAさんは既に死んでいる訳で…でも話が成り立っている…ということは?
俺「分かった。これ、Aさんが死ぬ前に書いたものだな?」

それしかない。それ以外には考えられない――

舞「そんな訳ないでしょ」
俺「う…」
一言で切って捨てられる。
まぁ当然か。どうみても遺書には見えないし、それだと話の意味が通らなくなる。

7/16
俺「うーん…」

俺は頭を悩ませる。
昔、散々考えたことのあるこの問題を、今またこうして考えてみて答えが出るとも思えないが。

舞「Aさんが亡くなっていても、これを書ける人がいるでしょ?」
そんな俺を見かねてか、姉貴が言う。
これは…ヒントか?
Aさん以外にこれを書ける人?えーっと、他に誰が…
……

…え?

1人思い当たり、ドキリとする。
いや、しかしそれだと、この話は――

舞「そもそもこれって、Aさんがどこに居るときの話だと思う?」
突然話題を変えて、姉貴が聞いてくる。

俺「あぁ…っと、えーっと…駅のホームじゃない?」
舞「なんで?」
俺「なんで?って…終電が過ぎたから、ってあるし」
舞「終電が過ぎた後のホームで、何をしているの?」

スーツの男Aへ続く
怖いサイト.com
ベストヒットナビ
感想・雑談はコチラ
もっと探す@AB
[戻る]
- mono space -