意味のある話A

10/18
舞「ところで、このメモだけど…」
俺「ん?」
舞「どんな紙に書かれていたと思う?」
俺「…メモ用紙とか?」
何でも良いような気がするが…?

舞「先に言っておくと、紙のことなんて関係ないのだけど…少し考えると、何となく分かるわよ」
俺「ほぉ…」

関係ないなら別に…と言いたいところだが、まぁいいか。

舞「このメモには、1日、2日、って書かれているわよね」
俺「そうだな」
舞「でも、さっきの成長の記録の話じゃないけど、もしそういったものなら、1日目、2日目、って書くわよね」
俺「カウントしていく感じなら、そうだろうな」

舞「でもそうは書いていなくて、この後にカレンダーの話も出ていることから、これは"日付"って考えられる」
俺「…うん」
特に異議は無い。俺も日付だと思っていた。

舞「でも日にちだけで、何月なのかは書いていない」
俺「無いね…」
舞「何でかしら?そもそも、普通日付を書くなら…例えば12月なら、こうして"12/1"って書かない?」
渡した紙にボールペンで"12/1"と書きながら、姉貴が言う。
俺「そう…かも」

確かに、普段メモ書きでとかで日付を書くときは、"1日"ではなく"12/1"と書くかな…。
それに、メモとしての実用性を考えるなら、何月であるかを分かるように書くのが普通だろう。

11/18
舞「それで考えてみたのだけど…この日付って、メモの紙に元から書いてあったものじゃないかしら」
俺「元から?」
何だか、少し飛躍した気がするが…?

舞「そう。だからこれ、システム手帳のリフィルじゃないかと思うの」
俺「リフィル…」
システム手帳に付け足す、あの紙のことか。

舞「曜日が書いてない、日付だけのリフィルってあるでしょ」
俺「あるね…」

確かにそう考えると、メモが7日までになっている説明が付く。
丁度1週間だ。1枚で1週間になっているリフィルは、もちろん存在する。
手帳としてオーソドックスなタイプとも言えるだろう。

――しかし、まてまて。
どこかおかしい所はないか…?と考えてみると、疑問が1つ浮かんだ。

俺「でも、この文章には「1日:右へ」って書かれているのだから…やっぱり、実際にそう書かれていたんじゃない?」
当たり前すぎるが、俺はそんな反論をしてみる。

12/18
舞「確かにそうね」
俺「あら…」
サラッと認める姉貴。

舞「でも、手帳の日付にあわせてメモ書きがされていた場合…それをネット上に文章として書くときには、「1日:○○」って書いてもおかしくないかな、って思ったの」
俺「…なるほど」

違和感は…無いな。
メモ書きが日付にあわせて書かれていたのなら、当然、日付も文書に入れるだろう。
その場合どうやって書くか、となると…「:(コロン)」を使って書くのもおかしくはない。

俺「そうかぁ…」
1つの可能性に過ぎないだろうけど、何か分かった気がする。
これはひょっとして、答えに近づいているのか?
…と思ったが、そんな俺の気持ちは一瞬で打ち砕かれる。

舞「もっとも、絶対にそうって訳ではないし、話の内容とは何の関係もないけどね」
俺「えー…」

…何だってんだ。
さっきから、何だかおかしいぞ?
1つの解に向かっている感じが、まったくしない。
何故だろう?分かったと言っていたのに…

13/18
俺「あのー…」
俺は思い切って聞いてみる。

俺「分かったんだよね?何だか今一つ…」
舞「もうすぐよ」
俺「そう…」

そう言うのなら、仕方ない。
何も分からないのは、俺の頭が固いだけかも知れない。
…うぅ、自虐。

舞「じゃあ、メモの内容」
俺「お…」

そうだ。メモの内容だ。
これが分かれば、一気に解ける気がする。
この謎めいた文章。これは暗号なのか、それとも…?

舞「これ、どう思う?」
…と、また質問される。
俺「…分からないよ」
最初に言ったと思うが、同じように答える。

舞「ずいぶん長いこと考えてみたけど分からなかった、よね?」
俺「…あぁ」
むう…バカにしているのか?泣くぞ?拗ねるぞ?
と、子供のようなことを思った俺に、姉貴はこう言った。

舞「つまり、そういうことよ。分かった?」

14/18
俺「…ほぇ?」

ナニイッテルノ?
毎度のことだが、頭にハテナが浮かぶ。
しかし、今日はいつも以上だ。まったく意味が分からない。

舞「ここまで、この話から読み取れる、色々なことを考えてみたけど…どれも、分からなかった。ハッキリと答えは出なかった」
俺「…うん」
舞「何年も前からある話で、今まで、誰も明確な答えを出せていない。誰にも理解できていない」
俺「そうなんだよね」

舞「でも、ここに1人、全てを理解した人がいるのよ」
俺「…え?」
俺?じゃない。姉貴…でもなさそうだ。
じゃあ他に…

あっ――

俺「この、弟さん?」
舞「そう。しかも時間まで書いてあるわ。3時間って」
俺「…」
随分長いこと考えた俺と違って、わずか3時間だ。
この弟は天才か?ものすごい発想力を持っているのか?

…いや、違う。
これは――

俺「弟だから分かった?」
舞「そうなるわね」

15/18
舞「何人もの人が長いこと考えても分からない、謎のメモ書き。でもこの弟さんは、少しの時間でその意味を理解したのよ」
俺「あぁ」

舞「これはどう考えても、"弟になら分かる内容たった"ってことじゃない?」
俺「そうか…」

何人もの人間が長い時間掛けても分からない。
でも、弟は3時間でそれを理解した。
それは、弟になら分かる内容だったから。他の人には分からない内容だったから。
確かに、実際に起きたこと…今、現に起きているこの状況を考えると、そういった結論も納得できる。

舞「そう考えると、最初に言った「脱いだ服からメモが落ちる」って状況も、説明が付くの」
俺「む?」

舞「メモに書いてあるのは、弟になら意味の分かる内容。しかも、彼にとって血の気が引くような内容」
俺「うん」
舞「久々に実家に帰ってきた姉の脱いだ服から、普通の人にはわからないけど、弟には意味の分かるメモが落ちてきた――これは、偶然?」

16/18
脱いだ服からメモが落ちることは稀だ。
しかしそれが実際に起きて、そこには、それを見た弟にしか分からないような内容が書いてあった。
他の人がメモを拾っても、意味なんて分からない。
しかし弟には分かる。その弟がメモを拾った。これは――

俺「姉がわざと落とした?弟に、メモを見せるために」

それがシックリくる。
偶然が重なったと考えるより、自然だ。
それに…

俺「そうすると、姉が久々に実家に帰ってきた理由は…」
舞「そこまでは書いてないから何とも言えないけど、目的はそれかもね」

確かに、ハッキリとそうだとは言えないが、そこはこう考えても良いんじゃないか?
この姉は、弟にどうしても伝えたいことがあった。
何か深い理由があるのか、言葉ではなく、わざわざこんな形で。
それは、弟にだけ分かる内容。
そう、弟にだけ…

…ん?

俺「弟だけ…とは限らないのかな?意味が分かるのって…」
他にも分かる人がいる可能性は、十分に考えられるだろう。そんな断定はできない。
例えば…家族の人とか。

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舞「そうね。意味を理解できる人は、他にも居るはずよ」
おや…言い切ったぞ。

俺「何で、居るはずって?」
舞「最初に確認したでしょ?"この話には意味がある"って」
俺「したけど…」

舞「弟さんが、自分にだけ理解できる話を書いても、意味が無いのよ。
自分の他に、メモの内容と"12月20日"という日付を見て、同じように理解ができる人がいるからこそ、この話には意味があるの」
俺「あぁ…」

あの確認は、そういうことだったのか。

つまり…
俺「この話は、誰か、意味の分かる特定の人に向けられたもの?」
舞「…というのが、私の説ね」
俺「なるほどねぇ…」

自分には分からないが、どこかにこの話を読んで、弟さんと同じように血の気が引いた人が居るのかも知れない。

…いや、きっと居るだろう。
そうでなければ、意味がない。
どういった理由、事情があるかは分からないが、誰にも絶対に理解できない話なら、弟さんがこれを書く意味がないからだ。

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舞「そういうことで、良いかしら?」
俺「ん…あぁ、ありがと」

1つの解が得られたぞ。明日にでも、古乃羽達に教えてあげよう。
上手く伝えるには難しい気もするが…まぁ、なんとかなるだろう。

舞「あの件、忘れないでね」
俺「ん?…あぁ、甘いものね」

そんな要求をされたことも、古乃羽達に教えてしまおう。
フッフッフ。それで姉貴の株が下がることはないだろうが――

舞「楽しみに待っているからね。ロールケーキ」
俺「はいはい…。って!?」

な、なぜロールケーキと分かった?口に出して言ったっけ?
心を読まれた?そんな…まさか、読心術…?

俺「な、なんで…?」
舞「それくらい分かるわよ。――ほら、姉弟だもの」

そう言って、ニコリと笑う姉貴。
…俺は、少しだけ血の気が引いた。
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