夢鬼@

「ねー、夢鬼って知ってる?」


この一言から全てが始まった。


その当時、俺はまだ小学5年生。元気のいい、普通の男の子だった。

いつものように、放課後の教室で仲の良い友達としゃべっていた。
友達を仮にA、B、C、D、E、Fとする。

男はA、B、Cと俺の4人。
女はD、E、Fの3人。
いつもこの7人で遊んでいた。

他愛のない話を皆でしていると、急にDが口を挟んだ。


「ねー、夢鬼って知ってる?」


その瞬間、皆の顔から笑顔が消える・・・


「夢鬼って・・・あの怖い話のやつだろ」


「皆、知ってるよ。よく小さい時に悪いことをしたらお母さんに、夢鬼さんが来るぞって怒られたもん。」


「うんうん、俺の家もそうだった。」


夢鬼・・・夢鬼というのは俺の地域に伝わる怖い話。だが実態は何も分からない。

ただ夢の中に、怖い鬼が出てくるという事だけしか聞かされていなかった。
それだけでも小さい時は、恐怖を感じていた。


「その夢鬼がどうしたの?」


EがDに質問をする。
いや、Eが言わなくても俺が言っていただろう。
何故ならば、夢鬼というのは俺達子供にとって恐怖でしかない。

怖い話をする時でもまず、夢鬼という言葉は出てこない。

夢鬼という言葉を言うだけで親にひどく怒られる。
子供が口にしてはいけない事のようだった。

だから何故急にDが夢鬼と口にしたのかが気になった。


「夢鬼が何なのかが分かったんだ。」


Dはそう言うと得意げに、一枚の紙と一枚の写真を皆の前に出した。

その紙と写真はひどく汚れていて、最近の物じゃないことがすぐに分かった。


「その紙は何だ?」


当然のようにAがDに聞く。


「これは夢鬼について書かれている紙。前に図書館に行ったときに、本の間に挟まってたんだ。この写真と一緒にね」


Dはその紙と写真を図書館で見つけたらしい。
俺たちの地域は大きく分けて3つに分かれている。

そしてその3つの地域の中心にこの図書館はある。
図書館はこの一つしかない。
なので、対外の本はそこで皆借りている。

Dは読書好きだったからよくその図書館に通っていた。

そしてその紙を指差しながら、Dは説明を始めた。


「まず夢鬼っていうのは夢の中で鬼ごっこをする事なんだって。
鬼は最初から夢の中に居て、その鬼に捕まらないように皆で逃げる。
そして捕まった人が次の鬼になる。
それを最後の一人になるまで続けるんだって。」


皆が思わず吹き出す。


「夢の中で皆で鬼ごっこ?」


「そんなの普通に考えて無理だろ。」


「夢は一人でしか見れないんだし。」


予想していたものよりもあまりに違ったため、皆しばらく笑いが止まらなかった。

夢鬼の正体ってただの鬼ごっこなのかよ。
なんでそんなものに今まで恐怖を感じてたんだ・・・
なんだか馬鹿馬鹿しくなってきたな。


「そんな事言うなら実際やってみようよ。」


Dは少し怒った口調で言った。


「やるって言ったってさ。どうやるんだよ。皆で同じ夢なんて見れないだろ。」


Bが口を挟んだが、そんなことは関係ないと言わんばかりに、Dが説明を続けた。


「ちゃんと最後まで話を聞いて。ちゃんとした手順を行えば出来るんだよ。
ほら、この紙に書いてあるでしょ?」


そう言って紙に書いてある手順を読み始めた・・・


1、 鬼ごっこをする場所を決める。


2、 決めた場所を特定できるものを用意する。(住所が書かれている物や、写真などでも構わない。様は特定できれば良い)


3、 その特定できる物を参加者全員に配る。


4、 その裏に自分の名前を書く。(簡単に消えないような物で書く。絶対に自分の名前は自分で書かなければならない)


5、 深夜12時にそれを枕の下に敷き、

「夢鬼さん、夢鬼さん、私と鬼ごっこをしてください。」
と唱えて目を閉じる。



書かれていたのはこれだけだった。


「へー以外に簡単なんだな。もっと難しい事をするんだと思ってた。」


Cが興味を持った様に口を挟んだ。


「でしょ、簡単でしょ?これなら私たちにも出来そうじゃない。面白そうだからやってみようよ。」


Dが笑顔で言う。


「でもさ、皆でやるんだろ?途中で怖くなってやらない奴とかいるんじゃね?
寝る時なんて皆自分の家に居るんだし。やるからには皆でやらないと面白くないじゃん。」


Aが俺は怖くないぜと言わんばかりの口調で話した。


「だから私に考えがあるの。」


と、Dが答える。


「来週学校でお泊り会の行事があるじゃない。その日に皆でやろうよ。それなら卑怯な事はできないよ。皆居るんだし。それなら文句はないでしょ?」


そう、俺たちの小学校には小学校5年生になるとお泊り会という行事がある。

それは皆でご飯を作ったり、レクレーションをしたり、夜にはグランドでキャンプファイヤーなどもやる。

5年生になってからの一番楽しみな行事の一つだ。


「それなら文句はないな。よし、やってみようぜ。面白そうだ。」


初めて皆で一緒に過す夜。その夜にあの夢鬼をやる。それだけで俺は楽しみで仕方なかった。


「じゃあ決まりだね。場所はこの学校でいいよね。この写真に写っているのも学校だし。
私が写真を撮って皆に焼きまわしするね。」


Dは笑顔で準備係りを買って出た。

その時今まで口を出さなかったFが口を出した。


「この写真に写ってる学校って隣町の中学校だよね?私見たことあるから。」


そうだ、確かに隣町の中学校だった。俺もその中学校は何度か見たことがあるから間違いない。そしてその写真の裏を見たら・・・


「あ、名前が書いてある。」


その写真の裏にはちゃんと名前が書かれていた。

という事はこの紙と写真の持ち主は、以前に夢鬼をやったという事か。


「これは本当に楽しみだな。当日ちゃんと皆来いよ。あとD、写真は親にバレないようにしろよ。」


AがニヤニヤしながらDに言う。


「分かってるよ。もしかしたら親は夢鬼の正体を知っているかも知れないしね。
大丈夫、ちゃんと見つからないようにするから。」


Dは自信満々に答えた。

それから俺達は、早くお泊り会の日が来ないかと待ちわびていた。

そしてついにお泊り会の日がやってきた。

皆同じクラスだったため、寝る所は皆一緒だった。
男と女が一緒に寝るのはどうかと思うが、まだ小学生だ。変なことはまず起こらないだろう。

そして寝る時間になり、12時前に俺たちは皆を起こさないように、静かにDの布団に集まった。


「これから夢鬼をやります。はい、まず写真。ちゃんと裏に自分の名前を書いてね。」


俺たち7人はDに言われた通り、自分の名前を油性マジックで写真の裏に書いた。

そしてそれを自分の枕の下に敷く。

そして12時に。

この時俺はこれから起こる本当の恐怖などまだ知らなかった。
ただの好奇心だけだった。

皆一斉にあの言葉を唱える。




「夢鬼さん、夢鬼さん、私と鬼ごっこをしてください。」




そう唱え皆、目を閉じた。



ついにあの夢鬼が始まった。

夢鬼Aへ続く
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