夢鬼G

「〇〇!」

俺達は寺を出る。寺の前で待っていたのは、俺達の両親と先生達だった。

母は俺を見て、名前を叫び、抱きついた。
そして俺を思い切り叩く・・・母の目には涙が滲んでいた・・・


母「本当にあなたって子は!・・・自分が何をしたか分かっているの!
あれ程夢鬼とは怖いものと教えてきたのに・・・」

俺「ごめんなさい・・・ごめんなさいお母さん・・・でも俺・・・俺・・・
こんな事になるなんて思ってもいなかったんだ・・・」


そう、母に言い、俺は泣き喚いた・・・本当に知らなかったんだ・・・

そして本当に怖かったんだ・・・
久しぶりに母の顔を見たような気がした・・・

母の後ろには父が立っていた。父は俺から目を反らし、上を見ていた・・・
多分、俺に涙を見せたくなかったのだろう・・・

スーツ姿の父。仕事など後回しで来てくれたのだろう・・・

俺はこの時だけは、夢鬼の事について忘れていたかもしれない。
母と父を見たら、ものすごく安心したのをよく覚えている。

でもそんな事などすぐに消えた・・・

Eが居ない・・・

俺は周りを見渡す。居るのはE以外の親達。そして俺達と先生達、住職、男だけだった。

Eの親、Eはどこにも居なかった・・・

他の皆も、親達に抱きつかれ、泣いていた。
多分皆も俺と同じ気持ちだったのかもしれない。


俺「Eは?・・・Eはどこに行ったの?」

母「Eちゃんは・・・Eちゃんのお母さんが家に連れて帰ったよ・・・
とても・・・見てられなかった・・・Eちゃんは・・・もう起きることが出来ないの・・・

もうEちゃんは、お母さんの顔も・・・見ることが出来ないのよ・・・
そう思うとお母さん・・・とても悲しくて・・・」


母はそう言い、俺を強く抱きしめた。
その後、すぐに父も俺を抱きしめた。

しばらく何も言わず、3人で抱き合っていた・・・
そして俺は、何もかも忘れ、泣き喚いた・・・

だがその時、住職が口を開く。


住職「親御さん、気持ちは分かるが、もうその辺にしてもらえるかの。
この子達をわしは、連れて行かなければならん場所がある。

その後、こいつとわしで無事に家に帰す。だからそれまで、家で待っていてくれんかの・・・」


そう住職は言い、俺達の前に夢鬼をやった男を指差しながら話した。


父「住職、その人は誰ですか?私達がこの子達を待っている時、急いで寺に入っていきましたが・・・」

住職「こやつは・・・この子達の前に夢鬼を行った者じゃよ・・・
あの事件の当事者じゃ・・・」


!!!!!!!


それを聞いた瞬間、父の顔が険しくなり、その男に掴みかかった・・・


父「お前が・・・お前があの時の奴か!なんて事をしてくれたんだ!
お前が居なければ・・・この子達・・・Eちゃんはこんな事にはならなかったんだ・・・
お前のせいでこの子達は・・・」

先生「やめてください!たしかにこの人が悪いです。でも・・・お子さん達も悪いんです・・・
そして・・・この子達をちゃんと見てなかった私も・・・悪いんです!」


そう先生は父に言い、父をその男から離した。父は一言、「そんな事は分かっています。私も・・・悪いんだ・・・」
とポツリと言い、その場に崩れ落ちた・・・

あんな取り乱した父を見るのは初めてだった・・・


住職「親御さん・・・気持ちは凄く分かる・・・だが、こいつも今までずっと辛い思いをし、生きてきたんだ。
ずっと後悔して、反省して生きてきたんじゃ・・・
それだけは分かってはくれんかの・・・」

父「でも・・・でも住職・・・私には・・・この男を許すことは出来ません・・・」

男「・・・分かっています・・・本当にすみませんでした・・・
お子さん達をこんな事に巻き込んだのは私達に責任があります・・・

許してくれなんて思っていません・・・私達は取り返しのつかない事をしたんです。
あなたのお子さんのせいでも、あなたのせいでもありません・・・

全て私達のせいです・・・本当に・・・すみませんでした・・・」


そう男は言うと、俺達の前で深々と土下座した・・・

俺もこいつを許すことなんて出来ない・・・でも俺達も悪いんだ・・・

こいつを責める資格なんて俺にはない・・・
ただ俺は・・・そいつを見ていることしか出来なかった・・・


父「あたりまえだ!こんな事で許されると思うな!
・・・住職、私達はこの子達の帰りを家で待っています。
無事にこの子達を家に帰す事を約束してください。

そしてお前、俺はお前を絶対に許さない!もう二度と俺達の前に顔をだすな!
分かったな!」

男「分かっています・・・本当にすみませんでした・・・」

住職「無事に帰すことを約束する。
だからこの子達が家に帰った時、暖かく迎えてくれんかの・・・」

父「分かりました・・・〇〇、お父さんと、お母さんは家で待っているから・・・」


そう父達は言い、家に帰って行った・・・他の親達も・・・そして先生達も・・・

親達が帰ると住職が俺達を集め、話し始めた。


住職「お前達をこれから病院に連れて行く。そこに居るのはお前達の前に、夢鬼を行った犠牲者じゃ。少し辛い思いをするかもしれん。
だがわしには確かめなければならん事がある。そしてお前達もそれを知る義務がある」


そう住職は俺達に言い、俺達を男(以降Gとする)の車へ連れて行き、俺達を車へ乗せ、病院へ向かった。

車には運転席にG、助手席に住職、俺達6人は後部座席に乗った。
Gの車はワゴン車だった為、俺達全員乗ることが出来た。

これから俺達の前の犠牲者に会いに行く。
そう思うだけで怖かった・・・
なぜ会いに行くのか・・・その時はまだ分からなかった・・・

車は寺を出て、病院に向かった・・・


G「君達、これから話すことは、俺達が夢鬼をやってしまった時の話だ。
この事は、君達には知っておいて欲しいんだ・・・」


そうGは言うと、運転しながら俺達に話し始めた。


G「俺達が夢鬼をやったのは中学校3年生の時。
その頃はまだ夢鬼の噂などがあった。
そして夢鬼の真相が書かれた書物が、あの寺にある事も、噂で耳にしたんだ。

俺達はまだ中学生だ。中学高生活の最後の思い出として、皆で夢鬼をやることになったんだ。

やろうとしたのは俺を含めて10人、まず始めに俺と、もう一人で寺に忍び込み、書物を読み、やり方などをメモしたよ。

誰かが寺に帰ってくるかもしれない、そう思い、夢鬼のやり方、そしてすでに鬼がいて、そいつに触られると鬼になるという事しか読めなかった。

それを皆に見せ、皆にもそれをメモさせた。
夢鬼について話したら、一人がこんな事を言い出したんだ。

「これ、鬼ごっこみたいだよね」って・・・
今まで夢鬼を行ったのは大勢ではなく、一人づつだ・・・
でも俺達は10人でやろうとしている。

最初の鬼につかまるとそいつが次の鬼になる・・・
だから鬼ごっこ。そう思ったんだ・・・

俺達はただの肝試し感覚だった。だから、夢鬼を行い、最初に鬼になった奴は罰ゲームをする。

そう決めた。これは怖い鬼ごっこなんだと言ってな。

そして俺達は、俺達の中学校を夢鬼を行う場所にしたんだ。

そして、写真を撮り、皆に配った。
夢鬼をやったのは寺に侵入してから3日後。

各自、その日の夜に、夢鬼を決行したよ。

そして、本当に夢鬼が出来たんだ。最初は皆興奮していたよ。

皆同じ夢を見れたんだ。
でも出来なかった奴もいた。
それは後から住職の話を聞いて分かった事だが、そいつは経験者と強い血の繋がりがあったんだ。だから出来なかったらしい。

居たのは俺を含め9人。そして夢鬼が始まった。

でも鬼が全然姿を現さなかったんだ。俺達は怖いと言うよりも、鬼を早く見たい。

そう思い、鬼を探したんだ。鬼ごっこのはずなのにな・・・

そしてしばらくし、鬼を見つけた・・・
君達も見たあの黒い奴だったよ・・・
でも鬼は俺達を追うどころか、逃げていったんだ。
いくら追いかけても、鬼は逃げてしまった・・・」

俺達「・・・・・・」


その時住職の顔をふと見ると、住職は遠くの景色をただ眺めていた・・・

でも目には涙を浮かべていた・・・

G「しばらくし、やっと鬼に追いついた。でも鬼は一向に俺達を捕まえようとはしなかったよ。

そして一人が無理やり鬼に自分を触れさせたんだ。
このままじゃ、面白くないと言って。

そいつは鬼に触れられたあと、すぐにあの黒い奴になった・・・

自分では黒い奴になった事は分かってはない様だったが・・・

そうしたら、最初の鬼が消えた・・・俺達は怖くなり、逃げたよ・・・

鬼に触れられたら、鬼になるという事は知っていたが、まさか黒い奴になってしまうなんて、思ってもみなかったからな・・・

そしてまた一人、また一人と、鬼になり、今、会いにいく奴が最後の鬼になった。

俺は4番目に鬼になった・・・目を覚ましたのは、夢鬼をやってから2日後だ・・・

2日も経っていたなんて思わなかった・・・ずっと辺りは暗かったから・・・
時間の感覚がなかったんだ。

そして目を覚ました俺達は、親達に連れられ、さっきの寺に連れて行かれた・・・

そこで君達と同じように、夢鬼の真相を住職から聞かされたよ・・・
その後、最初の鬼である、住職の奥さんの所に連れて行かされた・・・

住職の奥さんは30年近くも眠っていたんだ・・・
体は痩せこけ、見るに耐えなかった・・・

俺達はそこで、この人の今までの努力を、全て水の泡にしてしまったんだと理解したよ・・・

終わるはずだったこの悲劇を、また起こしてしまったんだと・・・

だから俺達は・・・俺達は・・・もう償っても・・・償っても・・・償いきれないんだ・・・」


そうGは言い終えると・・・泣いていた。

住職も・・・泣いていた・・・そして・・・住職が口を開く・・・

住職「妻は話すことは出来なかったが、この者達が病院に来た時、涙を流していたよ・・・

わしには、自分がこの子達を巻き込んでしまった・・・
また若い子達を犠牲にしてしまった・・・

本当に悔しくて・・・悲しい・・・

とわしに謝っているように見えた・・・
そんな妻を見ている事が、わしには・・・本当に辛かったのじゃ・・・」


住職の奥さんはこの夢鬼を終わらせる為、自ら最後の犠牲者になることを選んだ・・・

でも・・・それは出来なかった・・・

また・・・犠牲者を出してしまったんだ・・・
住職の奥さんは最後まで、終わらせようとしたのだろう・・・

たとえ、数人の若い命を、巻き込む事になったとしても・・・

だからずっと・・・逃げていたのだろう・・・
でも・・・鬼にしてしまった・・・
そして・・・犠牲者は一人になった・・・

住職の奥さんは逃げている間、どんな気持ちだったのだろう・・・

終わるはずだった、夢鬼を、若い者達がやってしまい、自分の元に現れた・・・

終わらせる為には数人の若い者も犠牲にしなければならない・・・
それしか方法がない・・・

さぞ、無念だっただろう・・・

そして結果、犠牲者は一人になった。

今思うと・・・犠牲者が一人だけになった事は、少なからず、よかったのかもしれない・・・

そして俺達が・・・Eを・・・また一人・・・犠牲者にしてしまった・・・

その事だけは・・・何も変わらない・・・

夢鬼Hへ続く
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