夢鬼H

俺達はそれから病院に着くまで、無言だった。

そして、病院に着き、俺達の前の犠牲者の所へ向かった・・・

一つの、病室の前に立つ・・・

そこの病室に書かれていた名前・・・
それはDが図書館で手に入れた写真の裏に、書かれていた名前だった。

この扉の向こうに、俺達の最初の鬼がいる・・・

そこには2人の女性と、医者らしき人が居た。
一人の女性(以降Hとする)は、見るからに痩せこけていて・・・ベットで寝ていた。

窓から遠くの景色を見ている様だ・・

服装がその病院の患者が着る服を着ていた為、この人が俺達の前の犠牲者だと分かった。

いや・・・見るからに・・・この人だって分かったんだ・・・

そしてもう一人の女性(意向Iとする)は、歳からして、この人の母親なのだろうと思った。

それは当たっていた。そして、住職に向かって、Iが口を開いた。


I「住職さん!娘が目を覚ましたんですよ!だからあれ程、娘はいつか目を覚ますって言ったじゃないですか!

・・・そしてあんた(Gの事)ここにはもう来るなって言ったじゃない。
さっきも急に来て・・・
あんた達のせいでこの子はこんな風になってしまったのよ!」

住職、G「・・・・・」

医者「長年眠っていたせいで、今は話す事も、体を動かす事も出来ません・・・
急に目を覚まし、我々も驚いているのです・・・」

住職「そうじゃろうな・・・すまんが少しばかり、席を外してはくれんかの・・・
大事な話があるんじゃ・・・聞かれたくはないのじゃ・・・」

医者「分かりました。」


医者はそう言うと、病室から出て行った。


I「そういえば住職さん、この子供達は?」

住職「・・・この子達がまた、夢鬼をやったのじゃよ。
そのせいで、その子が目を覚ましたんじゃ・・・」

そう住職はIに言い、俺達をIとGの前に出した。

I「そうですか・・・」

そして、Iは俺達の前に立ち、俺達一人一人の頭を撫でる。

「君達が、この子を救ってくれたのね。本当にありがとう。」


!!!!!!


ありがとうだと・・・
ありがとうだと・・・

何故お礼が言える・・・俺達は夢鬼をし、Eを犠牲者にしてしまったんだ。
お礼なんか言われる立場じゃないんだ!

でもこの人はありがとうと言った。
この子を救ってくれてと・・・

そしてこの子はいつか目を覚ますと言っていた・・・

まるで、前から目を覚ますことを知っていたかのように・・・

まさか・・・


住職「奥さん、あなたに聞きたい事がある。これの事についてじゃ・・・」


そう住職は言い、Dが図書館で手に入れた、写真と紙をIの目の前に出した。


住職「奥さん、この写真はこの子(H)のじゃ。
奥さんは、娘が最後に残した物だからだと言い、この写真を持っていったな・・・

でもこの写真はこの子達が手に入れ、そして今ここにある。

そしてこの紙。ここには夢鬼について書かれている。
どういうことじゃ!言うんじゃ!奥さん!」


I「・・・・・・」


Iはしばらく黙った後、Hの所に行き、Hの頭を撫でながら話始めた・・・・


I「私は・・・この子をどうしても目覚めさせたかった。

まだ中学生だったのに・・・これから死ぬまで目を覚まさないなんて・・・
思いたくなかった・・・
でももう誰もこの子を救ってはくれない・・・

誰も夢鬼をしてはくれない。私にも出来ない・・・

なら・・・誰かに夢鬼をやってもらうしかない・・・
そう思い、私は、この写真と紙を図書館の本に挟んだ。

この子の日記に、夢鬼について書かれていたものが、この紙よ。

夢鬼について知っている、大人たちはやってはくれない、だから子供が読むような本に・・・

でも上手くはいかなかった・・・
あまり人気のある本では、図書館の職員に見つかってしまうかもしれない・・・

だから、あまり、人気のない本、誰も読みそうにない本に挟んだわ。

これが、子供が手にする前に見つかったら、もうこんな事は出来ないから・・・

何度も何度も図書館に行き、確認したわ・・・
でも写真と紙はまだ本の間に挟まったまま・・・

だから私は何度も別の本に挟み、誰か手に入れるのを待った。

そして、ついに本が無くなっていたの。

もし、上手くいけば、この子が目を覚ます。
そう思ってたわ。
そしてこの子が目を覚ました。

住職さん、私は悪い事をしたのかもしれない。
でもこの子達がやったのが悪いのよ。

私は本に写真と、紙を挟んだだけだもの。
夢鬼をやってとは頼んでないわ。

この子達が自ら夢鬼をやったのよ・・・

おかげで、この子が目を覚ましたわ。

あなた達、本当にありがとうね・・・」


住職「あんた・・・自分が何をしたか分かっているのか!
あんたのせいで、こんな小さい子達が巻き込まれたのじゃぞ!」


I「そんなの関係ない!私はこの子を救いたかっただけ・・

それに、元はと言えば、あなたの奥さんのせいじゃない!

あなたがすぐに殺さなかったからじゃない!
そしてあんた(G)達のせいよ。
この子は何も悪くない。

だから、犠牲になるのは間違っている!
だから私がした事は当然のことよ!」


住職はしばらく黙り、悲しそうな顔をして、Iに口を開いた。


住職「・・・・・そうじゃのう・・・誰も・・・悪くないかもしれんの・・・

わしが・・・全て悪いのかもしれんの・・・
奥さん・・・もうここには二度と来んよ。」


I「はい、もう来ないで下さい!」


そう言い残し、俺達は病室を後にした・・・

この時の俺達は何が何だかわからず、ただ黙って住職に言われるがままに、病室を出るしかなかった・・・

俺達がした事は間違いなく、悪い事だ。
そのせいで、Eという大切な友達が犠牲になった。
それは間違いない事。

でも・・・でもありがとうと言われた・・・

こんなに悪い事をしたのに・・・感謝する人間がいる・・・

それが凄く・・・怖かったんだ・・・

Iにとって俺達がした行動は、いい事なのかもしれない・・・

でも・・・でも俺にはいい事をしたなんては絶対に思えない・・・

ただ俺達は・・・一人の犠牲者を救い、そしてまた犠牲者を出したんだ・・・

ただ・・・それだけの事なのかもしれない・・・

そして俺達はGの車で、家に帰された・・・
Gは送る途中に

「Hのお母さん(I)は去年、旦那さんを亡くしたんだ・・・
原因は分からないが、多分、自殺だと思う・・・

自分の子供が目を覚まさない・・・親にとってそれは本当に辛い事なのだろう・・・

それからだ・・・あの人は住職に「この子は目を覚ます」と言っていたのは・・・

俺達は、面会を断られていたから、住職に、Hの状況を聞くしかなかったんだ。

まさかIがこんな事をしているなんて思わなかった・・・
ただ、精神を、おかしくしてしまったものだと思っていた・・・

旦那さんも亡くなり、寝ている娘しか、居なくなった訳だから・・・

Hがこんな事になるまでは、本当にいい人だったんだ・・・

自分が一人になり、耐えられなくて、今回の事を起こしたのだろう・・・
そうさせたのは、俺達だ・・・君達は何も悪くない・・・

君達はこれからとても辛い思いをするだろう・・・
俺もそうだった・・・

でもどんなに辛くても絶対に逃げてはダメだ。
住職の様に、最後まで、背負い、生きるんだ・・・

俺達の中には、その辛さに耐えられず、自殺した奴も居たんだ・・・

だから辛くても、絶対に死ぬな!生きることが、唯一出来る、償いなんだ。

これは、住職が俺達に、かけてくれた言葉だ・・・

そして・・・本当にすまなかった・・・」

そう言っていた・・・
住職は最後まで、口を開くことはなかった・・・

Iの行動を予想できなかった自分を、悔やんでいるのかもしれない・・・

そして、また犠牲者を出してしまった事に・・・

自分の奥さんのせいにされた事に、傷付いていたのかもしれない・・・

そして、この時はまだ、この言葉の本当の意味など、分からなかった・・・


そして俺達は家に帰宅した。
俺の家では、玄関で、父と母が俺の事を待っていた・・・
そしてまた、抱きしめる・・・

家の中に入り、俺は先ほどの事を、全部話す・・・
すると母からは、意外な一言が返ってきた・・・


母「こんなことを言うのは、間違っていると思う・・・
でも・・・お母さんはね、あなたが犠牲にならなくて本当に良かったと思っているの・・・

Eちゃんには申し訳ないけど、〇〇の方が、大事なのよ・・・
そして、Eちゃんの前の犠牲者のお母さんの気持ち・・・
凄く分かる・・・

お母さんも・・・もしその人の立場だったら・・・
同じ事をしていたかもしれないわ・・・

〇〇、親と言うものはね・・・自分の事よりも、子供の事の方が大事なの・・・
〇〇も親になれば、その時分かるわ・・・」


そう俺に母は言い、泣いてまた、俺を抱きしめた・・・


そうなのだろうか・・・子供の為だったらどんな事をしてもいいのだろうか・・・

じゃあ、Eのお母さんも・・・この様な事をしてしまうのか・・・

結局終わらないじゃないか・・・
俺はその時は、そう思っていた・・・

それからは俺達にとって辛い日々が待っていた・・・

Eの事が頭から離れない・・・
毎晩あの夢を見てしまう・・・
Eが最後、俺に怯えて、震えているあの顔が頭から離れない・・・

その度に、後悔し、涙が出てくる・・・
もう取り返しの出来ない事をしてしまったと・・・毎日後悔する・・・

俺はこの事を、ずっと耐えながら、生きていくしかないのか・・・

そう思うと、とても怖かった・・・そして・・・辛かった・・・

学校も休みがちになり、先生はよく、家に様子を見に来てくれた。

「〇〇君、辛いのはよく分かる・・・でもね、一番辛いのはEちゃんなの・・・
だから〇〇君は、前を向かなくちゃダメなのよ・・・
Eちゃんの分も、生きなきゃダメなの・・・」

そう言い、俺を慰めてくれた・・・この時だけは、少し、心が癒された気がする・・・

俺は、辛くて、辛くて、何度もこの現実から逃げようとした。
でもその時、Gのあの言葉が頭を過ぎる・・・

生きることが唯一出来る償い・・・

そうだ、Eの方が俺達の何倍も辛いんだ・・・俺達なんてまだ良い方じゃないか・・・

Eはあの暗闇の中、ずっと一人なんだ・・・それに比べ、俺達は・・・
そう思い、俺は辛くても、生き続けた・・・

Eへの面会は、Eの誕生日だけ許されていた・・・
自分の子供をこんな事に巻き込んだ奴の顔など、出来れば見たくはないだろう・・・

でもEの母親は、誕生日だけは、会う事を、許してくれた・・・
誕生日くらい、大勢で、祝ってあげたいと言って・・・

Eは将来、教師になりたかったらしい・・・
自分も先生(俺達の担任)みたいな、優しい先生になるんだと・・・

でも・・・その夢も、俺達が壊してしまった・・・

この事は、一生、変わらないんだ・・・

Eは幼くして、父親を亡くしている。

それからずっと、母親と二人暮らしだった・・・
その母親を、一人ぼっちにさせてしまったのも俺達だ・・・
その事も、一生変わらない・・・

俺達はこの家族を不幸にしてしまった事も・・・



そして、俺は20歳を迎えた・・・

Eはまだ、目覚めていない・・・

そしてEが、もう少しで、20歳の誕生日を迎えようとしていた時だ・・・

事件が起こった・・・

夢鬼Iへ続く
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