お勝手さん@

はじめに…

[お勝手さん]には、[往来会編]の後日談(ネタバレ)も多少入っています。

ご注意下さい…。


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「真奈美、ちょっと相談があるんだけど…」

ある土曜の朝、そう言って友人のハナに呼び出された私。
またダイエットの話かな、と思ったけど、何やらハナの様子がいつもと違う。
近くの公園で会った彼女は、かつて無い程に深刻な顔をしており、ただ事じゃない雰囲気だ。

私「どうしたの…?」
2人でベンチに座り、恐る恐る聞いてみる。
するとハナは、こう答えた。

ハナ「出たのよ…。お勝手さんが、出たの…」
私「えっ…!?」

お勝手さんが出た?
そんな…それって――…

私「――なにそれ」
初耳だ。

私の肩透かし的な返事に、ガクッとするハナ。
さすが、良いリアクションをしてくれる。

2/15
ハナ「ん、もう…。知らないのぉ?」
不満気に口を尖らせるハナ。

私「知らないわよぉ…誰のこと?」
ハナ「誰って訳じゃなくて…しょうがないなぁ」
やれやれといった様子で説明をしてくれる。

ハナ「あのね…夜中寝ていて、ふと目が覚めると、真っ暗な部屋の中に誰か居るような…って、そんなことってない?」
私「んー…」
ハナ「近くに誰かが居るような気配とかさぁ」
私「むぅー…」
ハナ「…無さそうね」
私「うん」
ハナ「…」
ハァ、とため息をつかれる。
なによ。無いんだから仕方ないじゃない。

ハナ「んまぁ、とにかく、そういうのがあるのよ」
私「へぇ…」
ハナ「そーゆーのをね、お勝手さんが居る、って言うの」
私「へへぇ…」
うん、初耳だ。
きっと、ハナが…又はその知り合いの誰かが、勝手につけたものだろう。

"お勝手さん"だけに…

ムフフ。

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ハナ「もう、聞いてるの?」
私「はい、聞いております」
ハナ「嘘。さっきからニヤニヤしちゃって…」
私「アハハ…。それで、その勝手な人がハナのとこに来たのね?」
ハナ「ううん」
私「あら?」
何食わぬ顔で、首を横に振るハナ。
今度は私がガクッとしてしまう。

ハナ「出たのは、従姉妹のおねーさんのとこよ。都内で1人暮らししているOLさんなんだけど」
私「へぇ…」
話の流れ的に、自分のとこに出たのだろうなと思っていたけど、どうやら違うようだ。
まったく、紛らわしいなぁ。

ハナ「それでね、真奈美にお願いがあるの」
私「私に?」

ハナ「うん。あのね――…」

4/15
――
バスに揺られること約1時間。
とあるバス停で降り、私は1人歩いていく。
行き先は、牧村さんの家だ。

ハナからのお願いとは、「除霊をして欲しい」とのことだった。
その…"お勝手さん"とやらの。

ハナの従姉妹は、よくある1Kの間取りの部屋に住んでおり、一昨日の夜にお勝手さんが出たというのだ。

深夜、寝苦しくて目覚めた従姉妹さんは、水を飲もうと思い台所に向かった。
台所は玄関を入ってすぐの場所にあり、そこで水を飲んでいた彼女は、ある異変に気付く。

――玄関に、見知らぬ靴が置いてあったのだ。

錯覚かと思い何度も見直したけど、やはりそこにある。
まったく知らない靴。ボロボロの男物の靴。
彼氏のものでもない。
それが、そこにある。

彼女はパニックに陥りそうになるが、なんとか踏み止まる。
ハナ曰く、踏み止まれたのは彼氏さんとの愛の力だとか何とか言っていたけど、何のことやら。

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彼女は落ち着いて、玄関の鍵を確認する。
…鍵は掛かっている。しかもチェーンまで掛かっている。
これはおかしい。明らかに異常だ。
この靴の主は、どうやって部屋の中に?まさか…人じゃない?

そんな"モノ"が部屋の中に居るのに、これからベッドに戻って、再び眠ることなんて、どう考えても無理。
ならば、やるべきことは1つ――

彼女は電光石火の早業(きっと多少の誇張あり)で鍵とチェーンを開け、表に飛び出す。
そしてそのまま、交番まで猛ダッシュしたらしい。
若い女性が深夜、寝巻き姿で猛ダッシュしていたら…それはそれで、なんだか怖い気もするけど。

そして交番に着き、彼女は警官を連れて部屋に戻ってくる…と。
先ほどまで玄関にあったはずの靴は既に無く、ひょっとして強盗かと思って部屋の中を調べてみても、お財布やら金目のものは全て無事で、盗まれた物は何一つ無かったらしい。

そんなことから、従姉妹さんは…ハナも、これは霊の仕業だと結論付けた。

まぁ、それもそうかも知れない。
だって、鍵を開けずに部屋の中に入るなんて、普通の人間にできる芸当じゃないもの。
どこかのネコ型ロボットでも居ないと無理だ。

…でも、ハナは1つ大きな間違いをしている。

それは――私のお父さんに、除霊をお願いしてきたことだった。

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確かに往来会では、そういった除霊活動をしていた。
でも、既にあの会は解散しているし、そもそもお父さんには、そういった事は無理だろうと思う。
そして、何より重要な問題。
それは…今のお父さんの頭の中は、沙織さんの事で一杯だということだ。

往来会の件から約1ヶ月。
…つまり、お父さんと沙織さんがお付き合いを始めてから、約1ヶ月ということになる。

そんな2人は、新しい職場でも一緒――沙織さんが社長さんだから、当たり前だけど――なので、平日は毎日顔を合わせているだろうに、休みの日にもデートを重ねている。
まったく、普段もちゃんと仕事をしているのかと心配になる。
沙織さんもいつもはキビキビしているけど、2人きりになると何やら甘えているみたいだし…。

大人の事情はよく分からないけど、はやく結婚しちゃえば良いのに、なんて思う。
そうしたら、お父さんから沙織さんを奪い返さなきゃ。
私も、もっと沙織さんと遊びたいし…一緒にしたいことが、たくさんあるもの。

それとそれと、弟か妹も欲しいなぁ。
沙織さんの子供なら、それはそれは可愛らしいだろう。
そんな子を、私の忠実な僕として…ムフフ。

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なんてことを考えているうちに、牧村さんの家に着く。

私は、お父さんや沙織さんに相談するのは止めて、牧村のお婆ちゃんに相談することにしたのだ。
何しろ…今日は土曜日で、2人は目下デート中。
お父さんに気を使っている私。なんて良く出来た娘なのだろう。
後でよーく言い聞かせないと。

私「こんにちはー」
お店の引き戸をガラガラと開けて、私は中に入っていく。
店内には色々なものが置いてあるけど、見た感じ、お守りが多いようだ。
何か、素敵な異性との出会いが訪れます、みたいなのは…ないだろうなぁ。

牧村「あがっておいで」
と、奥から牧村さんの声が聞こえてくる。
相談したいことがある旨は、先に伝えておいた。

私「はーい」
返事をしながら、私は奥のお座敷へと行き…そこで、ハッとする。

異性ではないけれど、素敵な出会い。
そこには牧村さんの他に、もう一人、女の人が座っていた。

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初めて見る人だ。
何だか、静かな佇まいで…

牧村「ちょっと先客が居てね。初対面…だね?」
私「あ、はい」

私はお座敷にあがり、ちょこんと正座をして挨拶をする。
私「はじめまして、汐崎真奈美です」
そう言ってペコリと頭を下げると、女の人は、ニコリと笑って挨拶を返してくれる。
女の人「はじめまして、雨月舞です。よろしくね」

私「はい、こちらこそー」

うわぁ…。綺麗な人だよぉ。
沙織さんと"系統"は違うけど、負けず劣らずの美人さんで…笑顔を見ると、何だかドキっとしてしまう。

これは、ハナに自慢しちゃおう。
凄く綺麗な人と知り合いになった、って。
名前は、雨月――

…あれ?

お勝手さんAへ続く
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