お勝手さんA

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私「あのぉ…」
舞「?」
私「もしかして、雨月さんって、弟さんとか…」
舞「えぇ。光一とは、一度会っているそうね」

やっぱり。
ちょっと珍しい苗字だし、牧村さん繋がりだし。
あの人、こんな綺麗なお姉さんが居たんだなぁ…
羨ましいなぁ…
沙織さんと2人で並んだら、凄いだろうなぁ…
会わせてみたいなぁ…
そこに私も混ざって…

牧村「真奈美さんは、何か相談事だって?」

私「…あ、はい」
少し妄想の世界に入ってしまった私に、牧村さんが聞いてくる。
いけないいけない。相談に乗ってもらう側なのに。

牧村「舞も居るけど、構わないね?」
私「あ、それはもう、ぜーんぜん。舞さんもぜひぜひ」

どさくさに紛れて名前で呼びながら、お願いをする。
よく分からないけど、ここに居るってことは、きっと霊感を持っている人に違いない。
それなら、是非とも相談に乗って欲しいところだ。

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私「あのぉ、私の友達にですね――」

私は、ハナから聞いた話を2人にする。
親友の従姉妹さんのところに、お勝手さんが出たんです、と。
…もちろん、お勝手さんの説明も含めて。

すると――

牧村「まぁ、なんとも怖い話だねぇ…」

…と、普通の反応が返ってくる。

私「そうなんですぅ。で、だから除霊をしてほしい、なんて頼まれちゃって…」
ここで、すかさず困った顔。
助けて欲しいなー、なんて空気を出してみる。

牧村「除霊ねぇ…」
牧村さんが舞さんを見ながら、呟く。

私「玄関だけじゃなく、窓もしっかり閉まっていたそうなんです。…って、そもそも部屋はマンションの5階だそうですけど」
牧村「ふむ…」

私「あのぉ、何とかなりませんか?すっごく困っているみたいで…」
初対面で図々しいかもしれないけど、舞さんにもお願いしてみる。

すると舞さんは一言、こう言った。

舞「警察に任せるのが一番ね」

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私「警察ですかぁ…」

ガックリ。
なんとなくいけそうな気がしたんだけど、初対面でいきなりそんなお願いは聞いてくれないか。
んじゃあ仕方ないから、ここはひとつ沙織さんにお願いしようかなー、なんて思っていると…

舞「真奈美ちゃん、ピッキングって知っているかしら?」
私「…はい?」

ぴっきんぐ。ピッキング。
私「あの、針金とかでグイグイって鍵を開けちゃうやつですか?」
舞「そう。多分それだと思うの。お勝手さんの正体」
私「うーん…」

どうなんだろう。その辺は警察も調べていると思うけど…
私「でも、チェーンは無理じゃないですか?」
そう。鍵は開いても、チェーンがある。

舞「チェーンも開けられるのよ。タイプによるけど」
私「へぇー…」

初耳だ。そういうものなの?
…でも、何でそんなこと知っているのだろう、なんて思ってしまう。

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私「じゃあ、ピッキング強盗?でも、盗まれたものは無いって…」
舞「物を盗むことが目的とは、限らないわね」
私「え…」

物を盗む以外に、部屋に侵入する目的?

…うわわ。
何だか、変なこと考えちゃった。
従姉妹さんは若いOLさんって言ってたし…

舞「昔、そうやって女性の部屋に忍び込んで、捕まった男の人がいるわ」
私「…」
何だかイヤな事を想像してしまった私に、舞さんが言う。

舞「その男も、部屋に忍び込んでから鍵とチェーンを閉めて…でも何も盗らずに、寝ている女性に触れもせず、いつもそこでしばらく過ごしてから、帰っていくの」
私「うわ…」

気持ち悪い…

舞「一体何が目的だったのかは、その男が捕まってから分かったわ」
私「…何ですか?」

舞「その男の住んでいた部屋から、寝ている女性の写真が大量に見つかったの」

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私「…写真」
舞「そう。それが趣味だったみたいね」
私「趣味って…悪趣味ぃ…」

口が裂けたって、人に言えないような趣味だ。

舞「被写体に近付きたくて、より近くから写真を撮りたくて…ただそれだけの為に、部屋に侵入していたらしいわ」
私「…」

やって良い事と悪い事の区別がつかないの…?
それとも、それをやって良い事と思っていたとか、そういうことなのかなぁ…。
相手に何の危害も加えないから、とか考えて。
バレなければ良いって問題じゃないのに…

…と、そんな嘆かわしい気持ちになったとき、ちょっとした疑問が浮かぶ。

私「あのぉ…、じゃあ何で、中に入ってから鍵を?」

何か、こう…その…乱暴な事をするなら、その理由も分かる気がする。
すごくイヤで、考えたくもないけど、まだ分かる。
それは、相手を逃がさないために、だ。
あぁもう、最低…

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舞「鍵をかけていた理由は、単純なものよ」
私「単純?」

舞「部屋に入ったら、鍵をかけるのは当たり前。ましてや、若い女性が1人で暮らしている…しかも寝ているのに、鍵を開けたままにするなんて有り得ない――男はそう考えていたそうよ」
私「は…?」

ポカーンとしてしまう…と同時に理解する。
あぁ、オカシイ人なんだ。普通に考えちゃいけないんだ。

舞「真奈美ちゃんは…」
舞さんが続ける。
舞「深夜、部屋の中に幽霊が居るのと、そんな考えの人が居るのと、どちらが怖い?」
私「う…」

考えるまでもなく、後者。断然、後者。
やだやだ。そんなの気持ち悪いよぉ…

舞「その従姉妹さんの件では、警察もきっとその方向で調べていると思うから…すぐに解決すると思うわよ」
アワアワしてしまった私に、舞さんがそう言ってくれる。

これは、ハナにもしっかりと言っておかないとな。
幽霊じゃなくて、もっと怖いことかも知れないぞ、と。
ちょっと脅すように言ってやろうっと。

そうと決めた私は、早速ハナの元に向かうため、2人にお礼を言ってから牧村さん宅を後にした――。

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――
私「随分と脅かしたものだねぇ…」

汐崎真奈美が帰ってから、私は舞に言う。

舞「…そう考えて、防犯の意識を高めるのが普通だと思います」
私「んまぁ、そうだろうねぇ」
舞「幽霊の仕業だと言って、その辺を疎かにしては…」
私「あの子の体験したことを考えると、そういう方向に向かいそうかね」
舞「…はい。私が言うことではなかったかも知れませんが…」
少し申し訳なさそうにする舞。
そんなに気にするなら言わなければ良いのに、なんて思うけど…言わずにいられない性格なのだろう。

私「まぁ、良かったと思うよ。気にしなさんな」

最近、舞は変わってきた。
以前に比べて…とても"人間らしく"なってきたと思う。
それが強さになるか弱さになるか、それはきっと本人と…周りの人達次第だろう。

私「それじゃ、後はこっちでやっておくよ。ご苦労さん」
舞「…では、お願いします」
そう言って、舞も帰っていく。

1人残った私は、舞が持ってきたボロボロの靴の除霊を開始した。
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