エシA

542 :ME ◆KCYjPGrG56 :2011/04/08(金) 03:41:49.38 ID:XQ/W8jQK0
8
また、箱の中に呪具をおさめなければならない。
そのための土台や基礎になる生贄も別に必要。
昔(あるいは古代の人?)の骨を食べさせた女を酷いやり方で孕ませて、出来た胎児を無理やり取り出す。
落としたい地獄の刑罰と同じ刑罰にあわせて殺すこともあった。
箱に入れるために、どうにかして小さくした遺体を札で包むようにはりつけて、数珠や縄、紐、髪、縛れるものがあれば縛れるだけ縛る。

完成した箱に呪具をおさめて、借り子の年の数と同じ日数だけ神棚や祭壇に祭る。
借り子が死んだら、呪箱は特別な場所に安置するらしいので、誰にも解からない。
その話を聞いている途中から、もう吐き気が止まらなかった。
大人の話は難しかったが、私はもう呪われて死ぬんだと直感した。


543 :ME ◆KCYjPGrG56 :2011/04/08(金) 03:44:21.54 ID:XQ/W8jQK0
9
髪を切られた日の深夜から、それからはもう戦争のようだった。
本家筋やその息のかかった男衆が血眼になって(私が証言した)九人の家を含む地域一体を鬼の如く練り歩き。
また、本家と繋がりあるド偉い旧家からも助っ人が来て、I市に乗り込んで来た。
警察も夜間や昼間に職質や検問をして不審な車両の積荷をチェックした。

二日目。
吐き気以外は何も症状が無い中、地元の医師Wが訪問診療をしてくれた。
「ストレスかねー。熱もないし、お腹も痛くないかー」
ふと医師が帰り際布団の下に、何かを滑り込ませた。
「何かなー?」と思って、布団の下をめくると、真っ黒い札が出て来た。
「あの薮医者がー!!!」と聞きつけた男衆がWを車から引きずり出して来た。
「すみませんでしたー!許してくださいー!」医師Wが土下座している。
医者Wは昔、違法な手術(堕胎?解剖?何かは聞けなかった)をして、生贄になりそうなものを呪いを行う人へ提供していたらしい。
もうよぼよぼで手術はしていないと言って、Wは帰された。
手元には真っ黒い札が残った。
Wの話では、何やら墨で字が書かれていたらしいが真っ黒ではなかったそうだ。
あんなよぼよぼのおじいさんまで、共謀して子どもを殺そうとする。
そんなに、借り子が悪いのかなーと考えこんでしまった。


544 :ME ◆KCYjPGrG56 :2011/04/08(金) 03:48:25.31 ID:XQ/W8jQK0
>>540
おじいさんは本心では積極的反対。実際には、消極的反対だったと思います。
特に、我が家と親戚一同、本家に分家は絶対服従とまではいきませんが、「絶対追従」みたいなところがありましたので。

10
三日目。
私はかなり変な事をぶつぶつ言うようになっていたらしい。(全然、覚えていない)
また、亡くなった三人の借り子と違い寝たきりでもなく、何故かブラブラ徘徊する。
(今まで、「借り代」が呪われてもこんな事は無かった)
らんらん鼻歌を歌いながら寝間着を着て裸足でスキップ。
人に出くわすと、「うちんかみきったーあだーが(私の髪を切ったのは誰だ)」と必ずにやにやして聞くそうだ。
そして、九人の子の家の前にさしかかると「きったーがな、きったーがな、かーしや、かーしや(切ったな、切ったな。かえせ?かえせ?)」と喚いてケタケタ笑う。
これには、男衆も「触らぬ神に祟りに無し」状態で、一応ケガをしないように見張りはつけるが放置していた。
そして、最後に「まっとるやー、おあそび、まっとるやー(待ってる、遊ぶの、待ってる)」と言い放って、スキップしながら去って行く。
これは偉いもんに手を出した、と私の髪を切った九人中六人は四日目までに名乗り出て来て、本家に頭を下げに来た。

五日目まで「くーて、くーて、しまい。あー、まちおーし、まちおーし(食べて、食べて、終わり。あー、待ち遠しい?)」と
九人の家に何やら喚きにやって行った私が六日目の朝、突然寝たきりになった。
これには大人たちも首を傾げた。呪いを吹き飛ばしていた様子だったのに、いきなりまた苦しみだした。
「このまま死んでしまうのか?」と当主も焦りだした。
すると、本家のバア様(先代当主の奥さん)がふと、「よーやったわ。後悔するえ」とつぶやいた。
「一族の男、集められるだけ集めろ」とバア様は立ち上がった。
バア様が全てを陣頭指揮を執って、呪いに対抗すべくあらゆる事をした。


546 :ME ◆KCYjPGrG56 :2011/04/08(金) 04:06:55.34 ID:XQ/W8jQK0
すみません。連続規制で途中から遅れて投下になりました。
11
七日目の夜。
男衆が部屋の四隅、壁、障子を囲むように布団を敷いて寝る準備を始めた。
「お着替えしましょうね」
本家の女の人達に呼ばれた子達と一室に閉じ込められる。
私はもう意識はもうろうとしていたが、五人の男の子(10〜12才)と同じように目隠しをされた。
次に、女の子ものの浴衣を着せられた。
浴衣の右袖には水晶の欠片を忍ばせ、胸前に懐紙を挟んだ。
そして、口紅をぬってもらって、その懐紙でふき取り、汚れた懐紙を折って結んで、左袖に忍ばせた。
そうして、男衆の部屋の中心に敷かれた敷布団六枚の真ん中に運ばれた。
男衆が内側から札を張り、残った本家の人達が外側から札を張る。
作業が終わると、男衆はそのまま布団で寝て、本家の人達は隣りの仏間の部屋で寝た。

夜明け前の一番空が真っ暗になる時間帯。
空気も冷え、雪は降ってないと思うが霜は下りてる寒さ。
いきなり、何かの気配に鳥肌が立った。


548 :ME ◆KCYjPGrG56 :2011/04/08(金) 04:09:36.17 ID:XQ/W8jQK0
12
女の人が泣く声と赤ん坊が喚く声が合わさったような「あ゛ー」「ぎゃー」「あ゛ぎゃー」という叫び声が部屋の周りでぐるぐる聞こえる。
バア様が言う「エシ(エズ?)」と呼ばれるものが来たのが皆解かった。
「借り代」は神様や精霊、仏の類と完璧な人間(=成人した大人?)の狭間にいるとされるらしい。
そのため、人間の力ではなく「エシ」に頼んで殺してもらうのだそうだ。
「エシ」に殺してもらうことは病死や事故、事件で死ぬよりも奇怪な死に方をするから、すぐに解かる。
(私が選ばれる前に、息子夫婦の借り子三人は怪死している)
べちゃ、ぺちゃ。
何か濡れ音がする中、血生臭いだけでない獣臭?腐臭以上の異臭が漂い始めた。
多分、人や人の子、獣、神様、悪霊が全部いっしょくたんになった巨大な化け物が這うように動いている。
男衆の中でも、うめき声を漏らす人がいた。
すると、「エシ」は動きを止めてケタケタ不気味に明るく笑い出す。
そんな時。
ブチ、ブチ、ブチと変な音がした。
「キャハハハハ」と小さな子どもの笑い声と共にパタパタ部屋の周りや天井の上、床下を走ったり飛んだりはねたりする音が聞こえる。
「エシ」は今まで殺して来た借り子を死んだ後も逃さず、己の糧にして使役する。
最初は三人。
ブチ、ブチ。その音が聞こえる度に、笑い声も足音もどんどん増えていく。元借り子がエシから分裂したようだ。
そして、元借り子がぺたりと私に触れる。
きっと、五人の男の子達も触れているだろう。
嗚咽を必死にこらえる声が隣りの男の子からも聞こえた。
探しているが、どうも私を見つけられないらしい。
しかし、男の子達はあまりの怖さに耐え切れず、男衆の方へ逃げてしまった。
残された私にどんどん元借り子達が集まってくる。


549 :ME ◆KCYjPGrG56 :2011/04/08(金) 04:12:27.08 ID:XQ/W8jQK0
13
ぺたり。ぺたり。元借り子の一人の手がと私の額に触れようとした。
その時、「パシン」と元借り子の手をはたくような音がした。
私はすーっと眠りについてしまった。


その瞬間、ざわーっと風が吹いたそうだ。
ざわーざわーざわー。
どこからか風が吹き込んでくる。
チリーン。チリーン。チリーン。
鈴の音が三度。
その直後、

ダン。・・・ダン。・・・ダン!ダンダンダンンダン!
歌舞伎の舞台で、足を「ダン」と床に打つようなラップ音が間隔をあけずに響き出した。

「あ゛%#%$ぎゃ&%&だ#!!!」と絶叫の後、異臭がしなくなったらしい。
皆、「エシ」が去ったと安堵したそうだ。

八日目の朝。
男衆が続々起き出し、自分達の布団に潜り込んで寝ている男の子達五人を起こした。
「あの子、どうした?」
しかし、男の子達は目隠しをやっと取ってもらえたばかり。
私は本家の結界で守られた部屋から消えていた。


550 :ME ◆KCYjPGrG56 :2011/04/08(金) 04:15:49.71 ID:XQ/W8jQK0
14
そこへ神社の社務所からM家(私がお世話になっていた本家)に電話が入った。
どうやら、神社でにたにた笑っていたらしい。
発見した神主はすぐさまM家に連絡、事情を説明した。
神主が発見した当初、私は手招きをしたそうだ。
「かーしや、かーしや(返せ、返せ)」と言って、神主を神社の裏手へ導いた。
すると、盛り土から異様な臭いがする。
掘り返してみると、真っ黒の箱が出てきて「エシ」を呼ぶための呪箱がいくつも発見された。
私は本家に戻され、二・三日ずっといびきをかいて眠り込んだ。
結界のために張っていた外側の札も内側の札も、私の布団の下に潜り込んでいた札同様、真っ黒になっていた。
結局。
九人中最後まで白を切りとおした三人の女の子は学校へ通えなくなってしまった。
一人は身体の一部の壊死がわかって、身体を部分的に切り落とさなければならない。
一人は肺がしぼみ、内臓がねじれるだけねじれて、おかしな事になった。
もう一人は奇病で、歯が全て抜け落ちて、ありとあらゆるヘルニア(横隔膜や腹膜?)や潰瘍が見つかった。
カイさんは小さい頃からこういうのを目にしていて、「あの三人、もう子ども産めない身体になったなー」と言っていた。
彼女達だけでは「エシ」を作れないから、子どもだけではなく大人にも何らかの被害は出ていたそうだなーと不安だった。
しかし、カイさんが完全否定した。
「多分、箱を作った奴等も切り札はあったと思う。だから、髪を切っただけの子どもが大人の代わりにああなった」
「それにしても、最後に出て来たのは御前を守っている神様や守護霊だったのかな」
「エシをえいえい踏み潰すようなラップ音、すごかったなー。エシもびっくりしただろう」
その後、跡取り息子の奥さんが無事懐妊。
私はその奥さんが無事安定期が過ぎるまでの五月上旬(ゴールデン・ウィーク)までI市に居た。
ゴールデン・ウィーク後、無事地元に帰り、元の小学校のケイコ先生クラスに戻った。

これで終わりです。
つまらない話をだらだら続けてすみませんでした。
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