因果

昔、久四郎、乙之助という兄弟がいた。久四郎は漁師で、美しい妻がいた
やがてこの久四郎には一人の娘が生まれたが、娘が小さいときに夫の久四郎がポックリ死んでしまった
親類たちは協議の結果、久四郎の弟の乙之助が残された妻と娘を引き取ることを決定した

やがてこの新夫婦に女の子が生まれたが、乙之助と妻はこの妹ばかりかわいがり、
久四郎の娘は虐待するようになった。村人は「同じ腹から生まれた娘になんとむごいことを」と噂し合った

しかし、そのうちこの妻は胸を患うようになった。医者や薬の甲斐もなく、ただただ
「絞められる、絞められる、苦しや苦しや」と七転八倒し、ついには死んでしまった

悲しみに呉れた乙之助は、近所の川から黒い石を持ってきて、妻の戒名を彫って寺に葬った


しかし、妻が死んで翌年の盆に墓参りに行って、乙之助は仰天した
兄の久四郎の墓から何本もの藤蔓が這い出し、妻の墓をギリギリと締め上げていたのである

乙之助は兄の怨念に恐れおののき、とにもかくにもこの藤蔓を切ろうと、歯でこの蔓を噛み切った

その瞬間、この蔓から鮮血が噴き出し、ビチャ、と乙之助の顔にかかったのである
乙之助は悲鳴を上げ、服の袖で顔の鮮血を拭うと、家に逃げ帰った

しかし、それでもまだ兄の怒りは治まらなかったらしく、その日から乙之助の顔の鮮血を浴びた部分が
真っ赤に腫れ上がり、ギリギリと締め付けるような激痛を発し始めた

この腫れはやがてカサとなって肉を腐らせ、ついには妻と同じように胸まで締め付けられるようになった

今までの行いを見ていた村人は誰も乙之助には同情してくれず、ついに乙之助は死んでしまった

今でもこの寺には久四郎とその妻の墓が残っているが、いまだに妻の墓は藤蔓でぐるぐる巻きにされており、
すっかりとくびれて今にも上が崩れ落ちそうになっている
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